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第3回スタァライト脚本樋口達人氏によるトークショーレポ(2023/01/27)@シネマシティ

この記事は、2023年1月27日(金)18:30よりシネマシティ立川aスタジオにて、『少女☆歌劇レヴュースタァライト』TV版9-12話の極音上映ののちに20:00頃から50分ほど行われた脚本家樋口達人氏によるトークショー(第3回)についてのレポ・感想になります。丸括弧内は注釈や自分の感想です。話を聞きながら殴り書きしたメモを後で復元しているため、一部不正確なところがあると思います。今回は監督もいらっしゃったため、お二方の掛け合いも覚えている範囲で再現したつもりですが、ちょっとニュアンスが違うところもあるかと思います。予めご了承ください。より詳細な内容についてはTwitterやブログで上げられている他の舞台創造科の方々のレポも併せてご覧ください。

このトークショーは1/13〜2/3の毎週金曜日、全4回構成となっており、今回はその第3回となります。
1/13(金):TV版1-4話「舞台少女、武器の名称はいかにして生まれたか」
1/20(金):TV版5-8話「3つの視線で変わるTV版シリーズ構成」
1/27(金):TV版9-12話「終わりの続き。劇場版への線路」
2/3(金):劇場版「『体感する映画』への脚本からのアプローチ」

まず初めに

もはや恒例となった注意事項から。

第3回テーマ:
「終わりの続き。劇場版への線路」

オープニングトーク

 最初にシネマシティ編成部折原さんが登場。初めの挨拶とともに「スタァライト概論」3限目が開講し、樋口達人教授が早速ご登壇した。今回も前回と同様にキリンがあしらわれたシャツをジャケットの下に纏っていらっしゃった。「スタァライトの雨男です。足元の悪い中お越しいただきありがとうございます!今日は受講生が一人来てくれています。古川監督どうぞ!」との挨拶ののち、古川知宏監督もご登壇。ピンクのパーカーに身を包んだ監督は、「彼はモグリの学生です、って紹介してくださいよ〜!打ち合わせしたじゃないですか!」と樋口さんと折原さんに突っ込み、持ち前のお茶目さで会場を沸かせた。折原さん曰く「チケットを見てお気づきの方もいらっしゃると思いますが、今日は前回よりさらに10分延長して50分取ってありますのでたくさんお話を聞けるかと思います」とのこと。(ありがたい……!)
 今回のテーマは「終わりの続き。劇場版への線路」と銘打ったが、メインは先週話したように「人間:クロディーヌ」について。9-12話は濃縮された話数になっていて、細かく話すと各論になってしまうのでそれはまた別の機会に。ということで講義パートがスタートした。

9-12話の概観

 まず、10話のサブタイトルが「されど舞台はつづく-Show Must Go On-」で結構とんがってる。これは舞台と繋がるように工夫した。また、11話で『舞台少女心得 幕間』を流すことは前回も話したように第1話制作の段階から監督と話していた。(ここで樋口さんがスクリーンの方をちょくちょく見ながら話している様子を見て、監督が「僕には見えてないだけでプロジェクターでなにかを映してるんだと思いました。感想終わり!どうぞ続けてください」と早速古川節を披露してくれて大変よかったです)
樋「11話で『戯曲の中に答えがある』というある種哲学的な脚本を監督に褒められたとき、やっと監督に認められたという気がしました」
古「なんかそれまで僕が褒めてなかったみたいじゃないですか〜!ずっと認めてましたよ」
樋「ありがと」
古「樋口さんが教授なら僕は准教授みたいなものですから」
樋「まあ立場的には准教授よりは学長ですけどね」

増えた文字情報

 9-12話では文字情報を多く画面の中に入れている。画面では描かれない外側にあるドラマをどうにか提示しようと頑張った。特に10話でのクロディーヌの部屋にあった賞状とか。アニメでは「天堂裕一郎」の「郎」の字がほとんど見えないけどよく見ると微かに書いてあるのが分かる。また、文字情報は戯曲『THE STARLIGHT GATHERER』の本や書き込まれた台本でも表現されている。ちなみに、皆さんは「結局、戯曲『スタァライト』ってなに?」と思っているかもしれない。これについては、語ってしまえばそこから風化が始まるものだから、現時点では皆さんの中にあるものが戯曲『スタァライト』だということにしてほしい。もちろん、中村彼方さんや僕や監督の中にはその断片があるわけだけど、それが外に出るまでは皆さんの解釈で自由に作ってもらえれば。関連して、TV版と劇場版での女神の名前の変化については劇場版のパンフレット読んでいただければ分かると思う。

天堂裕一郎は何者なのか

 ブシロの有薗さんに「天堂裕一郎は何者なのか」と問われて考えたことがある。これは公式設定ではなくあくまで樋口個人の妄想であることに注意してもらいたい。何となく、劇団を主宰していて、すごくモテて、歳を召してから何度目かの結婚のときに生まれた子供が真矢で、歳の離れたパパというイメージがある。
古「え〜初耳〜!おもしろ〜」
樋「母違いのきょうだいとかもいるかもしれない。誰か書いて(笑)」
古「(観客に手を広げて)次はあなた達の番です!」
樋「いいこと言うな〜」

西條クロディーヌ

 本来なら12話で掘り下げたかったクロディーヌ。でもクロディーヌに言われた。「私より他の子を書いて」って。こういうことあんまり言うとおかしくなったって言われちゃうけど(笑)。あの人はオールマイティーでお話の起点にもなるし解決役にもなれる。実際双葉筆頭にいろんな人に絡んでる。だからこそ自分の問題は自力で解決しちゃう。色々お持ちの方だなあと思っている。彼方さんが脚本を担当されたオーバーチュアを読んでもらえれば分かるが彼女はもともと天才子役で、そのまま女優として進むこともできたはずなのにどうして聖翔に入ったのかとかは気になる。「成長したらただの人、ってね」というセリフにも彼女らしさが現れている。先読みして解決するからみんなにも愛されている。とても感情豊かで、ある意味わかりやすい人。

九九組レーダーチャート

樋「五角形のレーダーチャートってあるじゃないですか。設定を考えるときにあれを九人についてもやりました」
古「ありましたね〜。脚本家の仕事ってこんなこともやるんだ、と思った」
樋「いつもやるわけではないですけど、今回は声優が舞台もやるということもあって、このキャラはどういう子なんだろうっていうのを可視化できるものが欲しかったんですよ」
古「項目ってどんな要素がありましたっけ?」
樋「演技力、歌唱力、表現力、あと学力と女子力なんていうのもありました」
古「あーそうだったそうだった!ブシロの会議でみんなでげらげら笑ってました」

 女子力ゼロなのはひかり。ひかりの部屋は散らかっているという監督の話を聞いて引っ張られた。全体的にバランスがいいのは純那とクロディーヌ。逆に真矢はトゲトゲ。
 面倒見のあるクロディーヌは、自分のそういうところに苛立ちを感じてたのではないか。勘が鋭いから相手が望む以上のことを提供できてしまう。この辺に葛藤があったのではないか。人に求められてこその自分であること、誰からも必要とされなくなることの恐怖を知っている子。必要とされなくなることは芸事の世界では致命的だから。
古「それでいて打算的じゃない人なんですよね」
樋「そうそう。だからみんなから愛される」

「人間:クロディーヌ」

 クロディーヌは舞台が大好きで、「舞台は人間が作るもの」だということを明確に知っている人。だから11話で華恋を送り出すところで「舞台は私たちの心臓」という言葉が出てくる。
 ここはひかりとの対比になっている。超常的な舞台の神のようなものである、運命の舞台に身を捧げて囚われた"神楽"ひかり。舞台は素晴らしいものだけど、結局は人が作るものでしかないと割り切っているクロディーヌ。そして劇場版ではもっと大きい神の否定をすることになった。
樋「これはちょっと劇場版のネタバレになるかもしれないですが」
古「実は明日から上映して頂けるんですよ、劇場版。みんな通わなきゃ!」
樋「良い受講生だなあ(笑)」
古「いやー、良い仕事した〜!もう居酒屋で一杯やってもいいでしょ?」

 クロディーヌについて参考にしたのは宇多田ヒカルが活動休止会見で言っていた「人間活動をする」という言葉。彼女は幼い頃からの歌手活動で年相応のことができなかった。これはクロディーヌも持っている葛藤で、そういう行動をするんじゃないかと。つまり、聖翔に入ってからは真矢を超えるという目標ができたり、真矢とレヴューしたけど、クロディーヌがなりたいものについては描けなかった。
 今日の質問で「子役のときにいくら稼いだのか」という質問もあったが、これまでゼロから稼いでとかバイトとかはしてない。これが劇場版のEDに繋がって、卒業後は色んなものにケリをつけて人間活動をするのではないかと思ったから、カフェでバイトをするクロディーヌを描いた。
 クロディーヌは本当に一番人間らしいキャラで、だからこそ本編で描くペースが落ちてしまった。九人の中で演じてるときと素のときのボーダーが一番ない。生粋の舞台少女。
樋「一応繰り返しておきますが、これはあくまで私の中のクロディーヌ像です」
古「樋口さんはクロちゃん好きなの?」
樋「好き。大好き」
古「僕も好き。もちろんみんな好きですけどね。いやーでもクロちゃんはまじで相羽さんの影響が大きいですよ。どうしてもコンテが相羽的になっちゃう」
樋「これは本当にそう!姉御気質なところとかは特に。ちょっと前までバンドのクールなリーダーだったのに、気付いたらフランクなお姉さんになってた」
 YouTubeでも話したが、最初はクロディーヌのかわりに「西園寺カノン」というロリっ子がいた。でもキャストが九人決まって、「どこにロリがいるんだよ!?」となって、相羽さんの影響を受けたクロディーヌになった。
古「一個付け足したいことがあるんですけどいいですか?カノンちゃんのことで」
樋「カノンちゃんのことで!?」
古「実はオーディションのとき既にキャラデザの齊田さんが描いたカノンちゃんの大ラフが出来上がってたんですよ。でも、オーディション終わってから『こいつ、いなくなります』って言われて」
樋「ありましたね〜」

 クロディーヌはスタリラ第2章の『削劇、天堂真矢』や『アルカナ・アルカディア』とかTV版のBlu-ray特典のOVAでも大活躍してるから是非。
(スタリラ第2章=メインストーリー#7~#11)
古「華恋がずっと素振りするっていう話を樋口さんが持ってきて、その場でOK出しましたよね」
樋「いや、華恋がひたすら素振りする案はこの人が言い始めました」
古「え、ほんと?この件に関しては本当に記憶がない……」
樋「当時は監督の仕事量がMAX状態でしたね」
古「どっちを信じるかはあなた次第!」
樋「今日はなにかと観客に委ねてばかりですね」
樋「そういえばスタリラ第2章のサブタイトルもほとんど監督がつけられましたよね」
古「え、それも樋口さんじゃなかったっけ……?」
樋「監督だったと思いますよ」
古「いやあ申し訳ないですけど全然記憶ないわ〜。ゆるして」
樋「スタリラ第2章はTV版が終わってから監督と一緒にスタァライトメソッドで作ったんです。アニメとは別の角度からみた聖翔、シークフェルト、凛命館、フロンティアのお話になっているので、スタリラの方もよろしくお願いします!」

スタリラとの関わり

 スタリラの部分をビルドアップして劇場版を作っていった。樋口さんはスタリラと同時並行で、監督は劇場版に軸足を移して。
 劇場版の制作ではこれまでもあったように「尺尺足らず問題」があって、本来はSF的な要素も盛り込みたかったが削ぎ落とされていった。
舞台少女の「キラめき」は、
・眩しい光を放つ熱源であり
・周りを巻き込む重力であり
・目線を惹きつける引力でもある
といった設定を素粒子論をベースにして考えたり、未来の彼女たちが放つキラめきが過去に届いて戯曲『スタァライト』が生まれるというループ構造なんかも考えたりした。この心残りに関してはスタリラ第3章『アルカナ・アルカディア』で監督の許可を得ずに全部入れ込んだ。そういう意味では『アルカナ・アルカディア』がもうひとつの樋口版「𝑤𝑖(𝑙)𝑑-𝑠𝑐𝑟𝑒𝑒𝑛 𝗯𝗮𝗿𝗼𝗾𝘂𝗲」ということになるかもしれない。こんな感じでスタッフの中でお互いのキラめきによって刺激し合いながら再生産をすることが多い現場だった。
 スタリラは曲も中村彼方さんに歌詞をつけてもらったりととても贅沢に作っている。劇場版を見てスタリラもやれば解像度が上がって二度美味しいのでスタリラも是非よろしくお願いします!

ということで講義パートが終了。
折「次回へ向けて何かここで言っておきたいことはありますか」
樋「細かいところは劇場版を観てもらってからということで。今回は受講生もいるから皆さんも色々聞きたいでしょ?」

質問タイム

Q. クロディーヌの子役時代の収入はいくら?個人的には1億円くらいだと思っている
A. 
古「いやでも実際子役の人ってどれくらいもらってるんですかね。ちょー気になる」
樋「事務所とか親が大半を持っていっているイメージ」
古「逆に何で1億円だと思ったのか純粋に気になりますね。サラリーマンの生涯年収とかかな。僕の子供の頃は大きいお金=100万円というイメージでした。それはさておき、クロちゃんは額面上は結構稼いでいるんじゃないかな」

Q. 劇スを観るとカルト映画を観た時のような気分になるが、お二人のおすすめのカルト映画は?
A. 
古「最近この話ばっかしてるんですけど、『フィールド・オブ・ドリームス』。これについての話聞きたい?でもしなーい。今日はスタァライトの日なので(笑)。まあ真面目に言うと、めちゃくちゃな脚本でよく映画にできたなという作品です。樋口さんはあります?」
樋「『ガンヘッド』」
古「あ〜分かる」
折「いつかシネマシティでもやりたいと思ってます」
樋「公開当時実物大のガンヘッドが東京で展示されてて。関西にいたから直接見には行けなかったけど歩くんじゃないかと思った」
古「それ師匠も同じこと言ってた。配給は東宝さんだったけど東映にもたくさんチケットが回ってきてた」
樋「あんなにでかくて無駄なものがドンパチしてるの最高じゃないですか!?当時はサンライズに入社するとは思ってなかった。入社後河森さん(メカニカルデザインの方)にお会いできたときに『ガンヘッド大好きです!』と熱意をぶつけてみたら、『そうですか……』という渋い反応をされてしまった」
古「両方ともおすすめです!」

Q. 各キャラについて誕生日占いを調べてみたら結構当たってるものが多かった。誕生日はどうやって決めた?
A. 
樋「まあ大人の事情もあります。まず、アニメの放送期間が3ヶ月だからそこに全員集めるのは無理。なので最低限、華恋とななは放送中にくるようにしました。それ以外は誕生日とかが好きな女性スタッフがいたので丸投げしました」
古「そういえばななと華恋の誕生日がアニメの第1話と最終回だったよね」
樋「そう!これは完全に偶然だったんですけど、第1話がななの誕生日で第12話が華恋の誕生日でした。運命的な巡り合わせとしか言えない」
(調べたところTBSでの放送が、第1話:2018/7/12 25:30-、第12話:2018/9/27 25:30-)
古「これも偶然ですけど、キネマの社長でスタァライトのアニメのプロデューサーの小笠原さんの誕生日がななと一緒なんですよ。ななの誕生日を見て『ぼくと一緒じゃん!』って言ってました」
樋「小笠原さんといえば、双葉のバイクの免許問題について気付いたのも小笠原さんだった。二ケツするのに免許取得から1年以上経過してないと捕まりますよ、って。双葉の誕生日が早いのは、一番小さいのに一番お姉さんというのが面白いというのもあるけど、これも理由の一つ」
古「双葉の単車をどうするかについてキネマの中で会議をやったんですけど、社内にいたバイク乗りのおじさんたちが喧嘩を始めてしまって(笑)。僕と小出くんで遠い目をしながら見てました」
樋「双葉の武器の名前がカワサキのバイクっぽいから、カワサキっぽいバイクになるかと思っていたらホンダっぽくなってましたよね」
古「『TONDA』ね」
樋「あれも有名だけどマニアックなバイクがモデルらしいです」
古「結局おじさんたちのプレゼンを聞いて、ぼくがこれ!と決めました。『めんどくさ……』って言っちゃった」

Q. 本日はお二人ともお越し頂きありがとうございます。8話の「減っていた130g」というひかりのセリフの後に続く130gの物の例はどうやって探して選んだ?
(「いつものハンドクリーム1瓶。クロスタウンのサーモンサンド。マクベスの文庫本。二ポンド硬貨11枚。腎臓1つ分の重さ。」)
A. 
樋古「「こっちがお越し頂きありがとうございますですよ!!」」
樋「最初に監督から『130g減るよ』と言われて、おおそうきたかーと。自分で買ったり計ったりして全部で20-30個くらいの候補を出した。その中から『普通の女の子が挙げそうで、普通の女の子が選ばなそうな』独特なものを使おうと思って。表現もロンドンの地名を入れてひかりらしさを入れてみたり、硬貨を1枚じゃなくて複数枚にすることでリアリティを持たせたり。マクベスの文庫本は実際に計りました」
古「感動。グッド。臓器については二人で話したよね。最後にゾクっとするものを入れたいよねって」
樋「当たり前だけど臓器って重さを計れないんですよ。……あ、もしかしたらお客さんにお医者さんいらっしゃるかもしれないけど。で、臓器で探したときに心臓はちょっと重いし、肝臓は重すぎるしで、腎臓ということになりました」

Q. 純那の弓はどうやって決めた?
A.
古「純那はレヴューシーンで接近されたらどうするのかというのを考えるのが大変でした……」
樋「1話からあるしね」
古「近接武器だけだったら絵が単調になってしまうというのがまず一つ。そして弓という武器は何かのスイッチになりやすいというのもある。照明やレーザーを使うことによる舞台映えも考えて、元々弓を持つキャラを1人は入れることが決まってたんですよ。武器とキャラの組み合わせ、相性を色々考えた結果、純那が弓になりました」

Q. 九九組の皆さんから「樋口さんは乙女心が分かってる!」と評判ですが、何か意識はしている?
A. 
樋「逆に乙女心を意識して書くおっさんは嫌じゃないですか(笑)」
古「これはね、乙女心じゃなくて、樋口さんがキャラと人に真摯だからだと思いますよ。キャラの裏をちゃんと考えているのが色々なところで滲み出てキャストの皆さんに伝わっているんだと思います。いやあいいこと言った(笑)。でもこれは本当にそうで、たまたまキャストの皆さんが女性だったから『乙女心』だと思われただけなんじゃないか。人とキャラクターを愛しているということですね!」
樋「カノンちゃん問題でもあったように、この作品ではリアルな人間がキャラクターを演じていることが大事なので、良くも悪くもアニメっぽいのが合わないんです。キャラと人に寄り添うのがこのアニメに一番合っているんじゃないかと思ってやってました。仕事した甲斐があったなあ」
樋「実はもっと前の別作品で、アフレコブース内で話している声優さんの『今どきの女子高生はこんなこと言わないよね』という声が聞こえてきて、そのときはかなりヘコみました。その日どうやって帰ったか覚えてないですもん」

Q. 現在27歳の公務員です。スタァライトされてアニメ業界への転身を決意し、その準備として美大への進学を考えています。何かアドバイスがあればお願いします。
A. 
古「公務員、いい仕事だと思いますけどね。公務員といえば、小出くんも元公務員なんですよ。僕も業界に入ったの遅くて25歳のとき。リアルな話をすると、美大に行く必要は必ずしもないんじゃないかなあと思います。今の世の中、ネットに情報はたくさんありますし、準備に時間をかけすぎなくてもいいのかなと。今すぐにアニメ会社に飛び込んでやっちゃうのも手です。もちろんご自身の作家像によって色々変わってくるところもあるし、それによっては美大に行ったほうがいいかもしれない。ひとつ言いたいのは、年齢は全く気にしないでいいです。僕だって25歳から業界に入ってTVシリーズ1本と映画1本の監督にはなれてますから。とはいえ40になって追い込まれてはいますけど(笑)」

ここで唐突に流れる『ki-ringtone』
(正直「ここから一体何が始まるんだ……!」と身構えてしまいました🦒)

折「この素晴らしい時間もあと5分となってしまいました」
古「このあと『キラーカブトガニ』ですからね。このままトークショーが伸びちゃうと記録的に観られた回になりますね(笑)」

ということで質問タイム再開

Q. お気に入りのシーンはありますか?
A. 
樋古「「ある!以上!次の質問!」」
(観客も爆笑)
折「このまま終わりでいいですか……?」
古「Tになるとこ。いや、全部好きですよ」

Q. アイデアが浮かばないときの打開策は?
A. 
古「樋口さんどうです?」
樋「考えて出てこないときは寝る。考え続けることをどこかで切らない
と燃料不足でどうしようもない」
古「へー!樋口さんそのタイプかー!」
樋「寝ないと始まらないんですよ」
古「寝ることに罪悪感あります?」
樋「あるある」
古「そうだよね〜良かった〜!僕はそれがすっごく怖くて、ずっとやり続ける派です」
樋「最近はご飯食べたらすぐ寝るようにしてる」
古「そうそう。寝るのが怖くて、TV版の最終回のときは米とか炭水化物を一切摂らずにコンテ描いてて、それを見た小出くんが『そういう技あるんすね』って言ってたけど本人は絶対やろうとしないの(笑)」
樋「アイデアが浮かばない時期っていうのはやっぱりあって、23時から5時まで延々と考えて、結局2行しか書いてないこととかあった」
古「僕も18時間でコンテ4マスしか描けないことがあった。もちろんその間色々考えて描いてはいるんですよ?でも納得いかなくて描いては捨てを繰り返して、100くらいは捨ててる。なのに周りからは『まだすか?』とか言われちゃうの。嫌になっちゃうでしょ?」
樋「折原さんはありますか?」
折「僕は寝るのもそうですけど、まだ行ったことのないところ、知らないところを歩くことですかね。家がシネマシティから近いので知らない路地をあるいてみたりします」
樋「外に出るのか。その発想はなかった」
古「そこは『映画観る』って言ってよ〜(笑)。こちとら演出家だぞ〜(笑)」
折「映画観ます!!」

恒例のフォトセッション

 今回は樋口さんが主役の舞台ということで監督は撮影NG。B-13の席から樋口さんを撮影する側に回った。
 監督は撮影中、樋口さんを照らすスポットライトに言及し、スポットライトの縁が青色になることについて、スタァライトの演出でも使ったことがあるというお話をしていた。
(ここは写真を撮ることに専念していてメモをとれませんでした……)

エンディングトーク

古「今回は茶々を入れてすいませんでした!しまったな、これは俺が来るとこじゃなかったと思いながら話してました」
樋「本日もお足元の悪い中お越しくださってありがとうございました。今回はモグリの受講生のおかげでスムーズでした(笑)。外に出て雪になってたらゴメンね」
折「ということで次回、劇場版についてです」
樋「メインテーマは書いてある通りですが、サブテーマとして口上の話をしようかなと思います。数えてみたらスタリラ含め60個くらい口上を作ってました。TV版と劇場版での口上の違いとか、3rdスタァライブの口上の話もできればなと思います」
樋「次回、また来週!」

あとがき

 樋口教授、今週も素晴らしいご講義ありがとうございました!そして色々深いことまで知っているモグリの受講生、もとい古川監督も貴重なお話をたくさんありがとうございました!

 今回はなんといってもお二人の掛け合いが大変面白く、強い絆で結ばれたタッグなのだなと感じる場面が多くありました。また、今回のお二人を見て劇場公開1周年記念生コメンタリー上映会のことを思い出しました。願わくば、小出さんも交えて3人でスタァライトについて語り合う素晴らしいイベントの再演を2周年記念でもやって頂きたいなと思ってしまいました。

 TV版9-12話、何度でも見返したいポイントが多すぎて語り尽くせません。そして極音はやはり最高……!全体的なことでひとつ言うとすれば、劇場版でも意識して制作されていた大音量から無音へ転じる場面が、9-12話でも効果的なタイミングでいくつかあったことです。元々TV版を映画館で観られることは想定されていなかったとは思いますが、音響が持つ力を最大限生かされていてとても感動しました。

 そして色々な場所に圧倒的なスピードでレポを上げてくださる舞台創造科の皆さんも本当にありがとうございます!自分の字が読めなくて復元が難しいところを解読するのにとても助けられました!
 次回がラストということで、これはもう行くしかない!
 樋口さん、古川監督、そしてシネマシティさん、今週もありがとうございました!

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