詩の"つくれぽ"?みんなで作ろう、「とるにたらないもの」!
あの、うれしいことがあったので。
先日詩のワークショップで「とるにたらないもの」をテーマに詩を合作したイベレポを書いたところ、「とるにたらないもの」の詩を書いてくださった方々が!うれしい、楽しい◎
詳しくは↑のイベレポにありますが、「とるにたらないもの」を列挙すると詩になっちゃう、という《詩のレシピ》です。
作り方はかんたん!(詳細やコツは後述)とるにたらないものを書き出し、最後にシメの言葉をいれるだけ。でも、「ふつう」がいきなり愛おしくなる詩がかけちゃうんです。みなさんが書いてくださった詩が素敵すぎたので紹介。
思い通りにいかなくても、愛おしい日々
最初に作ってくださった クニミユキ(@kuni_miyuki)さん。
とるにたらないもの
午前中にさしこむ光
扇風機、仕舞いわすれてる
踏んでしまったごはん粒
取れない靴下の汚れ
学校プリントのフォント
取れなかった電話
かめむしがいる
すきまから見えるリップスティックの列
五分すすんだ掛け時計
とるにたらないもの
それは愛しい家族のあしあと
うおおおお。やられたーーーーーー!!
なんかね、涙が出ました、最後の一文で。
しまい忘れた扇風機、ごはん粒、(家族の)汚れた靴下…。
これらは、感情をラベリングするとすれば「イラッ」とか「やれやれ」だとか、《思い通りにならなさ》だと思うのですが、それを「愛しい家族のあしあと」と包み込む愛。ミユキさんの目がとらえた部屋の「もの」から、今ここにいない家族の濃密な気配、心の動き、そして最後に大きな愛を感じられる詩です。
詩の良し悪しは何で決まるか?について、いろんな考え方があるかと思いますが、わたしは「最後の一文」だと思っています。
ふわりと詩想を広げてくれる一文、列挙したものを包み込む詩情。
ミユキさんの詩は、力を抜いて書いているようで、最後の一文でじわっと心に残る詩になっています(なんか上から目線ですみません)いやー、素敵👏
今日も生きてる!
そして、そんなミユキさんの詩をつくってくださったのがルミさん(@Rubby90330934)。
とるにたらないもの
脱ぎ散らかした靴下
娘の鼻歌
夫の話し声
息子の笑い声
読みかけの本
出しっぱなしのマニキュア
しまい忘れた夏服
書きかけのnote
犬の鳴き声
キンモクセイの香り
隣の晩御飯
細い三日月
こんがり焼けたトースト
黄色い目玉焼き
淹れたてのコーヒー
今日も生きてる私
じわー。これまた、最後の一文が効いてます。
家族の声がするリビングから、ルミさんの「読みかけ」や「書きかけ」のものたちの連へ。ものを描写しているのに、そこにルミさんの「〜しなきゃ」という想いも伝わってきます。ルミさんの視点はふっと家の外へ。犬の声や金木犀の香りに包まれた日常。そしてほっと一息、コーヒーや目玉焼きを味わうぜいたくな時間。今日も生きてる。
「生きてる」という感覚が「とるにたらないものたち」の列挙で手に取れる詩。中断されていることも、家のまわりのことも、現在進行系で生きている証。なんかうれしいし、素敵です。ルミさんが、今日も生きてて、よかった。
「作ってみたい」と思われたみなさま。
一応、「詩のレシピ」とコツはこちらです。
①とるにたらないものを書き出す。
とるにたらないもの…問題として取り上げる価値もない。ささいなことである。取るに足らない。思い浮かばなければ、【場面】や【時間】【場所】を設定してあげるとよいかも。
②並びや語感を整える
口に出したり眺めたりして、イメージと音を整える。
4行くらいでまとめるようにするとGOOD
③切れ目のいいところで「とるにたらないもの」とはさむ
歌うときに「一拍おく」ように、「とるにたらないもの」とはさむ。
場面や時間が切り替わるタイミングでいれるとよい。
※短ければなくてもOK
④さいごに、締めとして「それは○○ or ◯◯ということ」と入れる
列挙だけだと「詩」として成立させるのは高度なテクニック。自分がとりあげた「とるにたらないもの」が一体なんなのか…。ぴったり来る言葉をいれてみましょう。
詩情をとらえる瞳
そして、詩人であり安曇野でお菓子屋さんをされている河村邦和改め、妻咲邦香(小さな気持ち)さんも書いてくださいました!
蔓草で編んでた首飾り
最後の仕上げに切り捨てた端を
小鳥がくわえて飛んでいった
終わりの来ない連想ゲーム
その切れ端が心の声だったら
連れていってくれたでしょうか?
とるにたらないもの
それはついつい行方を追ってしまう
この眼かもしれない
詩情がたっぷりで、余韻にひたってしまいます。
小鳥がくわえていった草の首飾り、連想ゲームの切れ端・・・
空にすっと連れて行かれるものたち。
その行方を思わず追ってしまう「この眼」。詩情をとらえる眼。
なんとはなしに、秋の野原の空気を想起させます。
ええのんです、ええのんです。
一応つくりやすいルールとして「詩のレシピ」をつくったけど、いいんです、破りまくって。無季俳句とか自由律俳句とかありますしね。
Micaさんもコメントありがとうございます。ご家族やご友人とつくるのも楽しそうですね。
作ってくださったみなさま、ありがとうございます!
これを見て作りたくなったみなさま、ぜひ遊んでみてください。