REPORT|なんだか気になる言葉に出会う、”ことばさが詩”ワークショップ
こんにちは。詩のソムリエです。3月11日に、岡山の「アトリエぬかごっこ」で詩のワークショップを行いました。
民家を改装したアトリエでは、子どもたちがマイペースにお菓子を食べたり絵を描いたり。「ぬか」って、ぬか漬けの「ぬか」です。この言葉には、子どものもつ障害や特性、こだわりなどをうまみに発酵させるという想いがこめられています。アトリエに通う子どもやスタッフは「ぬかびと」。わたしはぬかをかきまぜる「まぜびと」として訪問し、自由な空気の流れるなか、ガチャガチャのカプセルを使ったワークショップ「ことばさが詩」を楽しみました。そんな様子をレポートします。
好きな言葉を隠して、見つけて
ワークショップの日まで、スタッフさんが「ポエムウィーーーーーク」と題し、アトリエを普段利用している人たちの「なんだか気になる言葉(響きや字面など)」を集めてくれました。ワークショップ当日、アトリエを訪れると、壁いっぱいに「おにぎりは∞(無限大)」「きなこ揚げパン」など、言葉がたくさん蠢いていました。新聞から切り抜いた言葉も。これを眺めているだけでおもしろい!
それらをスタッフさんが清書し、ガチャガチャのカプセルにイン。わたしが準備した、詩の一節は卵型のカプセルに。そして至るところにカプセルを隠しておきます。(わくわく…)
刺さる!沁みる!言葉との出会い
子どもたちが集まり、「言葉探し」がはじまりました。「開けていい〜?」
「いいよ〜」いざ開封タイム!目をまん丸くしたり、「なんこれー」と笑っちゃったりしながら、ワイワイ盛り上がります。寺山修司の詩の一節を引いた小学生は、「刺さるわー」としみじみ詩を見ていました。
大人の助けも借りながら、子どもたちはそれぞれに楽しんだり苦しんだりしながら詩をひねり出していきます。おもしろい詩が、もりもり出来上がります。スタッフさんたちもそれぞれ詩を作り、みんなで発表会。一人ひとりの詩に、「おお〜!」「渋いねぇ」など感想を交えながら、笑顔がたくさんあふれました。
もちろん、「詩を作らない!」という子もいたのですが…最後の最後に書いてくれた3行詩は、とてもその子らしくて印象的でした。
終わり際、「いい詩ができてよかった」と満足げな声をあげたのは、中学生Kくん。一から詩を書くよりむずかしくなかったとのこと。小学生Aくんは、ワークショップ後も「好きな言葉」を新しく書いて壁に貼り出してくれました。ことばにそれぞれ向き合った楽しいポエムの一日となりました。
ふりかえり:「発酵的な態度」をとること
ワークショップに参加してくれた子どもたちはみなすばらしい個性をもっていてイケていましたが、スタッフさんたちのあり方もまたすばらしくて。
印象的なシーンがありました。小学生の「好きな言葉」には、むべなるかな、下ネタというか…、いわゆる「汚い」言葉も含まれるわけです。笑 でも、「やだーすみません」と排除しないのが、特性をうまみにかえる「ぬか」らしいところ。しっかりスタッフさんに清書され、カプセルに入れられ、発見した子どもによって茨木のり子女史の「自分の感受性くらい自分で守れ ばかものよ」と組み合わせられていました。すてきだ〜。
その人から出てくるものを決してジャッジせず、ふわっと寄り添い、出てきたものを味わう姿は、「発酵的な態度」とでも呼ばせてもらおうか。ぬか床のような懐の広さに、わたしも抱かれたようで、ほこほことあったかい気持ちで帰路につきました。
今回、障害のある子とない子がまざりあってワークショップを行いました(ただ、どの子がどんな障害があるとかないとか気になりませんでした)。障害の有無や、おとなとか子どもとか関係なく、「社会に求められている正解」に近づけるために自分を削ぎ落とし、矯正して(されて)いく…という流れに身を置くのはしんどいことだなぁ、とつねづね思います。わたしたちの生きづらさというのは、そういうところにあるような気がします。
それよりも、今ここにあるもの、今ここで生きる自分から出てきたものが発酵され、そこから生まれ出てくるものを愛おしむということができたら。おとなたちが、発酵的な態度で生きられたら。社会の生きづらさは、変わっていくかもしれない。
常にそういう場として開かれている「アトリエぬかごっこ」にまざってみることで、今回のワークショップのような正解のない場を作ること、発酵的な態度の大事さを改めて感じました。
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みなさま、ありがとうございました。自由な風が吹き抜けていて心地の良いアトリエに、また「ぬか」をかきまぜにいきます。
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