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今週の詩(小暑)/「雨の来る前」
おはようございます。詩のソムリエです。
今の暦は「小暑(しょうしょ)」。梅雨明け、暑さがどんどん強くなっていくという意味。この日から暑中見舞いを出しはじめるそう。(「暑中」というのは、小暑と大暑のあいだだから「暑中」らしい👀)
そこで、詩のソムリエから暑中お見舞いをみなさんへ。伊藤整(いとう・せい)の「雨の来る前」です。
「雨の来る前」
ざあっとやって来いよ 夏の雨
地上のすべてのものは用意している
「山の麓から低くかぶさってしまった雲」や曇天の下を飛び交うツバメ、そして「人は重い頭をして室にいる」と、重ダルい描写が続きます。
降って来いよ 夏の夕立
その時 始めて人の目はほっと開かれ
草木も葉を そよがせるものだ
暑い夏にざあっと降る雨は、体も心もほっとするものがたしかにあります(豪雨はごめんですが)。「ざあっと」「ほっと」の対比がいい。
それ以上に、個人的に超グッとくるのが、「えっ伊藤整、こんな詩書くの!!」という、いわば「ギャップ萌え」。
伊藤整(1905−1969)は詩人から出発して小説、評論に移行した人で、わたしは彼の評論から入っているので、なんかこう、すごい理知的な人のイメージ。「伊藤整」という名前の整いっぷりもあるのかな?
近代文学や、「愛と性」について、非常に論理的な言葉で説く人です。
そして、伊藤整が翻訳したD・H・ローレンスの『チャタレイ夫人の恋人』がわいせつ文書に当るとして摘発を受けた「チャタレー事件」のインパクトが強くて、「戦う知識人」的な印象を持っていました。
ちなみに、大学1年生の頃「チャタレー事件」を知った上でドキドキして「チャタレイ夫人の恋人」読んだけど、とくにわいせつな感じには思わなかったですねぇ。むしろ抑制がきいていて、チャタレイ夫人に共感できるところもけっこうあって「チャタレー事件なぞだな」と思った記憶があります。
ちなみに伊藤整は有罪になりました。
そんなイメージだったので、伊藤整の詩の「ざあっとやって来いよ 夏の雨」では完全ノックアウト!
「男っぽいことばも書くのね!?(キュン…)」
これがギャップ萌えというのだなーと思った詩でもあります。
そんな伊藤整のピュアがつまった清新な詩集はこちら。雪のように、雨のように、心を洗い流してくれる詩集で、古いフォントにも味があります。
▼写真のクレジット
水田 © 菊池市 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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