【進撃の巨人という哲学書】32.損得勘定よりたいせつなのは物語 ~45話 46話~
アニメタイトル:第45話 オルブド区外壁
アニメタイトル:第46話 壁の王
あらすじ
ヒストリアは巨人となりエレンを捕食し、人類の記憶を操る能力を手に入れろ。という父ロッド・レイスの指示を完全拒否します。
父ロッド・レイスは失意の中、自らが巨人化の薬を口にし巨人となります。
礼拝堂の地下は崩れます。
エレンが巨人化し高質化する事で調査兵団の面々は崩落の下敷きにならず助かります。
ロッド・レイス巨人は奇行種となり超超超巨体で高熱の蒸気を上げながらウォールシーナのオルブド区へゆっくりと這って進みます。
住民に被害がでないように倒さなくてはなりません。
調査兵団はエレンが巨人化し、ロッド・レイス巨人の口の中に大量の爆弾を爆発させます。
ロッド・レイス巨人の身体は内部爆発によって飛び散ります。
ヒストリアがロッド・レイス巨人のうなじの肉片を切断してとどめを刺しました。
ヒストリアはクーデター前の偽物の王に変わり、今後、正式な女王となる事を義務付けられます。
そしてその運命にヒストリアも納得します。
だから、こんな危険な前線で戦ってもらっては困るのです。
ヒストリアは自らの手で父ロッド・レイスを倒すことで、自らの親子喧嘩を決着させます。
そして女王となるのです。
超超超大型巨人を倒した少女こそがこの国の女王である。
そんな物語を演出したのです。
「君があの巨人に留めを刺したのか」(民衆)
「私はヒストリアレイス。この壁の真の王です」
あれこれ考えてみよう。
再びヒストリアの心の中を考えてみましょう。
父ロッド・レイスの巨人になってエレンを捕食し、人類の記憶をコントロールできる能力を持てという要求。
始祖の巨人の能力を有していた姉フリーダの「柵の外に行ってはダメでしょ!」という記憶。
否、ユミルのいう「おまえ。胸を張って生きろよ。」という優しさ。
ヒストリアの頭の中ではユミルとフリーダそして父であるロッドレイスが戦っています。
ユミルの「自由」とフリーダの「束縛」
ユミルの「危険を承知の自由」とフリーダの「安全の為の束縛」
ユミルの「危険を承知の自由を求めての自立」とフリーダの「安全の為の束縛の従属」
ユミルの「おまえ。胸を張って生きろよ。」とフリーダの「柵の外に行ってはダメでしょ!」
ユミルの言うように「自分の意思で生きていきたい」ヒストリアと、フリーダの言うように「誰かに褒められるようなイイ子で生きていきたい」ヒストリア。
そしてヒストリアは。
自分の意思で生きる事を選んだのです。
自由と危険を承知で胸を張って生きる事を選んだのです。
ヒストリアは良い子ちゃんだった子供が反抗して自分の道を歩く。そんな典型的な成長型ヒロインですね。
成長型ヒロインは戦いの中で強くなり、強くなるから性格が変わるのでしょうか。性格を変えたから強くなたるのでしょうか。
そもそも性格とはなんなのでしょうか
性格って生れつきですか?変化するんですか?
その辺りも精神分析的にいろいろな議論があります。
私は「性格とは人の価値観の癖」みたいなものだと思っています。
ですから、「癖」であれば生まれつきのはずが無い。というのが私の答えです。
否、生まれつきはあるにしても、環境で性格は変わるし、自分でも変えられる。さらに言うならこの性格を自分が作ってきたのは自分自身。それ以上でもそれ以下でもないし、それだけの事だと思っています。
性格とは「価値観の癖」と位置づけるなら。
「自由」と「束縛」
「危険を承知の自由」と「安全の為の束縛」
そのバランスがその人の性格を司る大きな指標になる気がしています。
人の上に立つリーダーであれば、「危険を承知の自由」を重んじる人に魅力を感じます。
なぜなら、そこに行動が生まれ、物語が紡がれるからです。
応援してもらう人には損得勘定より必要なことは物語です。
クーデター前の人形の王の周りにいる人物は、損得勘定だけの集まりですから脆いものです。
その王に物語があれば、不利益でも応援します。
例えばどの国でも戦争も損得勘定だけならやらないが得である事は分かりますがなかなか終わりません。そこに物語があるからです。
例えば弱いチームでもその負け方に物語があれば人気チームでいられます。
例えば損得勘定だけであれば恋愛ほどリスキーなギャンブルはないのかもしれません。それでも恋愛に溺れるのはそこに物語があるからでしょう。
人は損得勘定より物語を求めているのです。
ヒストリアは「危険を承知の自由」の剣を振りかざして、自らの物語を紡ぎました。
ヒストリア女王誕生には物語が必要だったのです。
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