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心理学紹介-3
このnoteを書いたのは西田さん
心理学の「学問らしさ」――4つの研究方法
ここからは、心理学(特に、日本で学べる心理学)が依拠する代表的な研究方法を、2つの観点から大別してみます。ここでの区別の基準となる観点は、1つ目に研究者と研究対象者の関係において、相互作用があるかどうかということです。つまり、研究者と対象者のコミュニケーションのなかで対象者の「心」を探っていくのか、それとも研究者はできるだけ対象者に影響を与えないようにしながら「心」を探っていくのかという違いによる分類です。2つ目の基準は、研究のなかで「心」を数量化して測定しようとしているか、それとも「心」を人それぞれの主観を通して質的なものとして捉えられているかどうかということです。
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※「研究対象者との相互作用がある/ない」という基準は、あくまで原則としてのものです。実際の研究では、できるだけ研究者が対象者に影響を与えないようしながらも、完全にそれをなくすことは難しいこともあるでしょう。
この区別にしたがって、それぞれの研究方法を簡単に紹介します。
投映法
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投影法とは、心理学で人のパーソナリティ特性を明らかにしたいときに用いられる心理検査のうちの一つです。絵や文章などの素材を刺激として提示して、それに対する反応をデータとして収集します。心理検査には他に知能検査や発達検査などがあり、それらを合わせて検査法としてまとめることもできます。
前回記事の最初に出てきたロールシャッハ・テストは、代表的な投映法の一つです。ロールシャッハ・テストでは、研究者がインクの染みのカードという視覚的な検査セットを用いて、対象者の「インクの染みどう見えるかについての語り」をデータとします。ただし、ロールシャッハ・テストでは、単に対象者が「○○に見えますね」と言えば検査が終わるのではありません。豊富な語りを集めるために、研究者は必要に応じて「見えるものについてもっと教えてください」「他には何か見えますか?」などと、対象者とコミュニケーションをとります。そうして得られた語りのデータから、対象者の深層の心理状態を解釈します。したがって、対話のなかで対象者の質的な心を捉えようとしていると言えるでしょう。
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面接法
面接法は、研究者と対象者が直接相対し、対話のなかで対象者の「心」について明らかにしていく方法です。面接をするにあたって研究者が対象者から聞き取りたい内容を決めてその「台本」を用意する「構造化面接」もあれば、ざっくりとした内容は決めておくけれども対話の流れに応じて話題を柔軟に変えることもする「半構造化面接」、そして「台本」なしの自由な「非構造化面接」に分けることができます。一定の時間をとって丁寧に面接しますので、「心」について豊かな質のデータを得ることが期待できます。
投映法と面接法に言えることですが、研究者が自分の主張を裏付けるためのデータを得ようとして、対話を誘導するように「欲しい語り」を引き出すということは、してはいけません。また、恣意的なデータ解釈を防ぎ、科学として高い妥当性、信頼性を確保しなければなりません。
観察法
自然観察法は、調査対象者(複数人が対象になることもあります)をありのままに、第三者の視点から観察する方法です。たとえば保育園の子どもたちを対象として、園庭で遊ぶ様子からコミュニケーションのとり方を観察するといったものが考えられます。調査の場所や時間、対象者の行動を設定したり制限したりせずに、また観察者は対象者に積極的に関わることを避けながら、じっくり調査を行います。対象者にとって普段どおりの、自然のふるまいを外部から観察することで、言語化されていないルール、意識されていない行動や相互作用を見出すことが期待できます。
それに対して実験観察法は、調査者が調査場所や時間、状況についての条件を設定したうえで、観察を行う方法です。人工的に観察条件を整えることで、対象者の行動の要因などの特定がしやすいと考えられます。
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いずれにしても、どのような観察結果を得られればどのようなことが確証、反証できるのかということを明らかにしたうえで調査を行い、面接法と同じくデータを分析する際の恣意的な解釈を防ぐ必要があります。
次回は▼
心理学の「学問らしさ」――4つの研究方法 つづき