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『朝の音』

まだ世界が眠る頃
朝を最初に連れてくるのは
かわいらしい鳥の鳴き声ではない
数百万にも及ぶバイク集団だ

君の部屋の
カーテンの隙間から見える
昨日の夜空が
薄く青みがかってきた頃

どこかの
白線で停車していたバイク集団は
一斉に走り始める

ベッドの中で
耳を澄ませてみると
遠くに無数のエンジン音が
微かに聞こえる

毎朝 彼らは走っている
君や誰かに朝が来た事を知らせる為ではなく
世界に朝を連れてくる為に

毎朝 走っている
世界中の朝靄の中を

自由を求める事を放棄した
僕らは

彼らの事を
決して見る事はないだろう

▲▲▲あとがき▲▲▲

学生だった頃、東京に住んでいた頃、夜眠れない時がたまにありました。そんな時に決まって無数のバイクの音がどこか遠くで一斉に聞こえてきました。ああ、もう朝かと思ったものです。