星の王子さま
宇宙とか、星について想像するのがある時から好きだった。広い宇宙、遠くにある星。そういうものについて考えていると、「星の王子さま」のことを思い出す。
星の王子さま(サン=テグジュペリ作)を初めて読んだのは、高校3年生の最初の頃だったと思う。コロナ禍で、どこへも行けずに、家の中で過ごしていた頃。時が止まってしまったように思えたけど、大学受験は着々と近づいてくる。何のために、何をやっているんだろう、そんなことをいつも一人で考えていた。
私にとって、星の王子さまとの出会いは、とてもとても優しい夢の始まりだったような気もする。読もうと思ったきっかけはよく覚えていないけれど、多分、家に置いてあって、名作だって言うし一度読んでみようかな、といった感じだったと思う。
本を開き、ページをめくっていくと、そこには私が求めていた世界が広がっていた。ずっと、出会いたかった世界。私は、自分の部屋に籠りながら、遠い宇宙の旅をした。それは、決してひとときも醒めることはなかった。気づいたら、私の頬に涙が伝っていた。あまりにも、優しい物語に触れてしまったから。本を閉じると、目の前の景色が、もうそうれまでのようには見えなくなっていた。ふんわりと、何か温かいものに包まれているような心地になった。
それから今でも、その本は大切に持っている。あるときふと、本の中の言葉が語りかけてくるときがある。そういうとき、そうか、あの言葉はこういう意味だったのか、と自分の中に吸収されていく。その度に、私は「星の王子さま」をまた好きになるのだ。
夜、家のベランダから星空を眺めてみる。あの何百万もの星のどこかに、王子さまは住んでいる。そう思って見上げると、そのたくさんの星を見るだけで私は幸せになれる。今日も、あの中の一つの星で、王子さまが笑っているだろう。