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おじさんの再起に泣かされた【映画はじまりのうた感想】

アマゾンプライムで久しぶりに「はじまりのうた」を観ました。


私は音楽を題材にした映画が好きです。
煌びやかなミュージカル映画もいいけれど、ジョン・カーニー監督の作品は心の中の暗い空間を優しく照らしてくれるような音楽映画だと思っています。

まだ若かったあの頃は見えていなかった存在

「はじまりのうた」を観るのは今回で2回目。
公開当時、私は20代半ばで夫にも出会っていない頃でした。

元々はジョン監督の前作「Once ダブリンの街角で」がとても気に入っていて、ストリートからはじまるハンドメイドな音楽にワクワクさせられていました。


「はじまりのうた」はキーラ演じるグレタの明るく自然体な歌声が、ニューヨークのストリートによく似合っています。
ですが、この映画の当時の印象はマルーン5のアダム・レヴィーン演じる元彼デイヴに対して「このダメ男め!」という気持ちが大半を占めてしまい(笑)
当時の自分には勿体なかったなと思います。

私はまだ若くて、自分の失恋とグレタを重ねてみたり、ほぼグレタしか見えてなかったのかもしれません。
30歳を過ぎて再び鑑賞した今、マーク・ラファロ演じるダンに釘付けです。

冒頭の20分で泣いていた

マーク・ラファロといえば「アベンジャーズ」のハルク役で有名ですが、私には「いつもちょっと可哀想な人」という印象がありました。

「死ぬまでにしたい10のこと」でも…
「エターナルサンシャイン」でも…
「キッズ・オールライト」でも…

私の観る映画には何故かいつも「悪い人じゃないのに可哀想な扱いをされるラファロ」が映っていました。

今回のダンも最初は最悪な状況です。
仕事も家族も失い、絶望まっしぐら。
そんな彼がふらっと立ち寄ったバーで歌うグレタと出会います。

彼女の弾語りを聞いた時、周りの客はだらだらと話を始めたり、気にも止めていない様子ですがダンだけは違いました。
頭の中で、ドラムがリズムを刻み、ピアノが鍵盤を弾いてチェロがメロディー奏でる。

彼のプロデューサーとしての才能が生き返ったこのシーン。
私は「ラファロー!良かったラファロー!」と叫ばずにはいられませんでした。
あれ?私ってこんなにマーク・ラファロさんのこと好きだったかな?
ずんぐりした体型すら愛おしく見えてしまう。

一流プロデューサーだった頃から多くのものを失ったダン。
若い頃と違って、すぐに立ち上がれるエネルギーも、支えてくれる家族も明るい未来も見えない。
不思議なことに同じように絶望の中にいたグレタの歌が唯一の希望になったのです。

八方塞がりな2人が最悪な状況なりに、やってみようじゃ無いか!と楽しんでいる姿に共感する人も多いのかと思います。

ラブストーリーではない素敵な関係


「2人の男女がイヤフォンで、お互いのプレイリストを聴き夜の街を歩いたりクラブで踊ったりしている。」
これだけ聞いたら、ロマンチックなシーンを想像するのですがグレタとダンのそうならない所が好きです。
(もしかしたら、その感情も一瞬芽生えたのかもしれないけど)
音楽で結ばれた友情、愛情。
言葉で表現できない関係性がよりこの作品を面白くさせています。

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そしてもう1人の立役者。
グレタの友人で音楽仲間のスティーブ!
彼がグレタをバーに誘って歌わせなければ「はじまりのうた」は始まらなかった。

売れっ子になり変わってしまったデイヴに対して、グレタと一緒にさよならソングを作って送りつける。
ラブコメ映画に出てきそうな主人公の頼れる相棒役を演じたクマさんみたいなジェームス・コーデンは愛すべきキャラクターです。

他にもダンと離れて暮らす思春期の娘バイオレットとの関係も胸が熱くなります。

これは大人の青春だ

音楽を通して前進していく登場人物たち。
それぞれの人生を応援したくなります。

あの時「元彼め!」と思っていたデイヴに対しても「Lost Starsを歌ってくれてありがとう。貴方の歌声大好きよ!」と最後にはハグしたくなるし、グレタとダンには野望通り世界各国のストリートで音楽を奏で続けて欲しい。
もちろんスティーブも一緒に。

「大人って最高だ。
いつだってBegin Againできるんだから。」
と思える幸福な瞬間が、この映画にはたくさん詰まっています。

最後にアダム・レヴィーンの歌うLost Starsを是非聴いてほしいです。


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