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海のある毎日

なんでもない住宅街の細い路地を、きゅっと曲がる。

すると建物と建物のすき間に、いきなり「ばん!」と海の断片が見える。唐突感がすごい。

でもこの瞬間がたまらなく好きだ。

あ、すぐそこに海なんだ。あと数メートルほど行けば、向こうにはケタ違いのスケールを持った海が控えているんだ。予感で自然と胸が高鳴る。

どきどきを抱えたまま、その方向へ自転車をこぐ。

家々を抜けると、両端のフレームが「フッ」となくなった。

瞬間、わあっとひらける視界。

見渡すかぎり、一面の海。

端から端まで、ぜんぶ海。

ざざん、ざざん、と繰り返す波の音。

ざざん、ざざん。

それを横目に見ながら、わたしはぐい、ぐいと自転車をこぐ。

ざざん、ざざん。

ぐい、ぐい。

ざざん、ざざん。

ぐい、ぐい。

顔にはびゅうと吹き付ける海風。

心がざぶざぶと洗われてゆく。

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943字
どうでもいいことをすごくしんけんに書いています。

<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

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