海のある毎日
なんでもない住宅街の細い路地を、きゅっと曲がる。
すると建物と建物のすき間に、いきなり「ばん!」と海の断片が見える。唐突感がすごい。
でもこの瞬間がたまらなく好きだ。
あ、すぐそこに海なんだ。あと数メートルほど行けば、向こうにはケタ違いのスケールを持った海が控えているんだ。予感で自然と胸が高鳴る。
どきどきを抱えたまま、その方向へ自転車をこぐ。
家々を抜けると、両端のフレームが「フッ」となくなった。
瞬間、わあっとひらける視界。
見渡すかぎり、一面の海。
端から端まで、ぜんぶ海。
ざざん、ざざん、と繰り返す波の音。
ざざん、ざざん。
それを横目に見ながら、わたしはぐい、ぐいと自転車をこぐ。
ざざん、ざざん。
ぐい、ぐい。
ざざん、ざざん。
ぐい、ぐい。
顔にはびゅうと吹き付ける海風。
心がざぶざぶと洗われてゆく。
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943字
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