食べさせ、てっ!

真夜中にパチリと目が覚める。

しばらくゴロゴロと寝返りを打ちながらぼうとしていたら、となりで寝ていた2歳の娘が、暗闇に向かってはっきりと声をはなった。

「食べさせ、てっ!」

思わず闇の中で目をこらしてみたけれど、何のことはない。娘はなにごともなかったように、すうすうと眠りつづけている。

そう、先のひと声は寝言である。見事な寝言。

ああ、こういうときは無駄に韻を踏めるのに、韻を踏んだ文章を書けと言われると何もでてこないのだよなあ、わたしってやつは。

すらすらと文章でおしゃべりをする同世代の子とくらべると、娘のことばの世界はとてもマイペースで、まだはじまったばかりだ。

それでも最近は、少しずつ二語、三語と単語をつなげはじめ、自分の考えていることを相手に伝えられるようになってきた。

ほんの少し前までは「わんわん!」「もーもー!」などと、一語言えれば拍手喝采だったはず。それが最近では一人前に「まま、いっしょ、いこう!」とか、「ぱぱ、でんしゃ、すき?」とか言えるようになってきたのだから、人間というのはほんとうにすごいなあと思う。

単語をつなげることと並行して、最近すこしずつ変化を見てとれるようになったのは語尾の変化だ。

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<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

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