昧爽
指先はとっくにかじかんでいた。
季節は冬。
前夜のキャンプではテントもなく、大地の上に直接置く豪州式の寝袋で寝た。スワッグというらしい。
寝転がって上を見ればダイレクトに星空。外気、マイナス2度。
焚き火を囲むようにして仲間たちとなんとか眠る。
翌朝、まだ真っ暗な夜明け前に起き、その場所を目指す。
朝日を見るのに、有名なスポットがあるらしい。凍てつくような寒さのなか、早朝だというのにぞろぞろと人の群れがあった。
道すがら、朝日が顔を出す前のそのひとときに、刻々と空の色は変わっていく。そのグラデーションを背景に、なんてことのない道ばたの樹木のシルエットが幻想的に浮かび上がる。名もない景色の美しさにハッとする。
目的のスポットへつき、日が昇るそのときを待っていた。
空気が刺すように冷たい。カメラを構える手が痛い。
大地から光が放たれるその直前、地平線は燃えるようだった。
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