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【感想】ファイナルファンタジーⅩ-2 HDリマスター

『ファイナルファンタジーⅩ-2 HDリマスター』(2003、2004、2013 スクウェア・エニックス)の何が凄いのかと言えば、映画でよくある前作への批評性を含んだ「2」ではあるが、その見せ方がファンキーだったり、それを通り越してシュールですらある、その不快さが凄いのである。

『ファイナルファンタジーⅩ HDリマスター』(2001、2002、2013)のヒロイン、ユウナを主人公にして、おそらくはマックGの『チャーリーズ・エンジェル』(2000)風にリニューアルした続編という本作。シンを倒して世界を救ったが、前作主人公のティーダは消滅、その喪失感を抱きながらユウナ達の新しい冒険が始まる、その事に文句は無い。

だが、筆者が前作で違和感があった「シンを倒す強力なマシンがあれば自己犠牲など必要ないのでは?」という問題は、昔の人が作った強力なマシンはあるがコントロール出来ない失敗作という、そんな物を作る連中は滅んで当たり前な設定が追加されたり、根拠無き自己犠牲という『宇宙戦艦ヤマト』(1974)的な「泣ける」話ついては、ユウナが死にたがるキャラクターに対してラスボスの目の前で説教をするというズッコケ感で、前作への批評性の見せ方がシュールすぎるという不快さがある。

本作のシュールすぎるという問題はまだあって、観光客を追い払うためにサルを繁殖させるとか、サボテンがビームを撃つとか、他にも色々あるのだが、筆者が最も辛かったシュールなシーンが新キャラクター、シューインがユウナに言う「やっと会えたね」で、これは辻仁成が中山美穂を口説いた時に言ったといういわく付きのセリフで、これを聞いた時の脳へのダメージたるや筆舌に尽くしがたいものがあった。

ストーリー以外の問題と言えば、倖田來未あるいはエイベックスの音楽である。

筆者の偏見かもしれないが、エイベックスの音楽はテレビドラマの主題歌や港区あたりのクラブという、いわゆる「軽チャー」のアイコンであり、ミーハー色が強すぎて異世界の音楽としては飲み込みにくい。
それだけでは無く、スクウェアとソニーに何かあったのか?とよけいな心配をしてしまうのが本作への没入感を妨げるノイズになって、そこも不快に感じるところである。

バトル演出も無くなって演出面での盛り上げも欠くのも辛い部分ではあるが、前作から大きく改善した点はあり、それがこれ。

お色気の強化が本作最大の美点である。筆者のモチベーションとなった部分であり、これがあったからこそ本作の不快さをこらえ2周できた。

2周してエンディングを2パターン見た感想は、ティーダが生き返らない方がお話としてはまとまりがあるのではないか、というより、生き返りをアリにしてしまうと今後、何か別のイヤな出来事が起こるのでは、と考えてしまった。

あと、『ファイナルファンタジーⅦ』(1997)とのリンクは本当に蛇足だと思う。

感想をまとめると、キャラクター達のその後を描く事自体は否定しないが、もっと地に足をつけた見せ方をしてほしかった。それと、続編とするなら音楽や戦闘システムも前作と揃えたほうが連続性が高まったのではないかとも考えた。

とにかく、辻仁成オマージュには驚いた。