観てほしい『プリズン・サークル』
webで見かけた記事に、これは絶対見なくては!とチケットを買ったのは5月のこと。
ついに昨日、その映画の上映会に出かけた。
『プリズン・サークル』
日本で唯一、TC(セラピューティック・コミュニティ)を導入している刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」を撮ったドキュメンタリーだ。
アリゾナ州で創設されたAmityというTCが、受刑者の更生のために実践されている。
想像していたより真面目な印象を受ける受刑者の若者たち(男性のみ)。
本人の希望に加え、面接やアセスメントを経て選ばれているので、極悪人と言うより、犯罪を犯した普通の青年という印象だ。
顔にモザイクはかけているが、自分と変わらない人たちだと感じる。
一方で生い立ちや暴力など、私の経験のない過去を持っていることが、わかってくる。
話を聴いたりプログラムを進めるのは、「支援員」と呼ばれる民間の職員で、心理や福祉の資格を持つ人たちだ。
ある4人の受刑者を主に、撮影が進んでいく。
幼少期の記憶が薄い拓也。
盗むことに罪悪感のない真人。
傷害致死の罪で、今は教誨を受ける翔。
強盗傷人で全てを失った健太郎。
犯罪の裁判などの報道を見ていると、被害者への謝罪や思いが感じられないことに、苛立ちを覚えることがある。
映画の中で「あのころ(犯罪をした時)の自分に戻りたくない」と言っていた人がいた。
それは、反省しているからではなく、その時の自分と向き合えないからだ。
自分のことでいっぱいで、被害者を思いやる気持ちが出てこないんだとわかる。
被害者、その家族、加害者、それぞれの役割を演じるワークショップ。
被害者と対話するエンプティチェア。
そんな体験から、被害者の気持ちを理解できるようになり、受刑者が自分と向き合えるようになっていく姿があった。
上映後、この映画の監督坂上香さんと、俳優平田満さんの対談があった。
坂上監督は、犯罪者も過去に傷ついていることへのエンパシーを語っておられた。
犯罪者であっても、安心して本音を語れる場所、上からの「〜してやる」関係性ではない支援が必要なのだ。
映画に出てくる受刑者が、私なんかよりずっと話し方が上手く洗練されていると感じたが、実は相当練習もするし振り返りもする、先輩の話を聞いて学んでいるのだとわかった。
(勿論それは映画のためではなく、TCがあるから)
制約が多く、映画に取り上げられなかったという支援員の人たちの語ったことも、知りたいなと思った。
母の思い出はシャンプーの香りだけという男性が、「恥ずかしいことだけど、誰かにギュッと抱きしめてほしくなる」と語る様子は、胸に迫るものがあった。
撮影許可が下りるまで6年、撮影に2年。
公開までにおよそ10年もかかったというこの映画を、多くの人が見られたらいいなと思う。
言葉にできなかったことを言語化することで、自分が変わっていく。
「聴く」がベースにあることと、聴かれる経験をすることの大切さを改めて感じた。
#プリズン・サークル