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イヤイヤ期と傷つき

先日、1歳半になる孫のところへ行っていたときのこと。
散歩を兼ねて孫と娘と3人でお昼ご飯を買いに出かけた。
美味しいと評判のお好み焼き屋さんだが、店で食べるのは無理だと判断してテイクアウトを頼んだ。

待ち合いの椅子で、P君が飽きないよういろんなお話をした。

壁に貼られたメニューの写真を見ながら、
「モダン焼き食べちゃうぞ、むしゃむしゃむしゃ」
「アイスもあるよ。ペロリ」
そんなふうにあやしているうち、お好み焼きができあがった。

レジ袋に入ったお好み焼きを娘が受け取り、P君をベビーカーに座らせ店の外に出た。

すると、P君が突然泣き出してしまった。

ベビーカーの中で反り返って泣くので、娘が抱き上げて地面に立たせると、P君はお店の中へ戻ろうと早足に歩いていく。

歩くようになってまだひと月というのに、目的があると足取りは力強い。

しかし店の入り口からはスロープを使って出て来たため、小さなP君には入り口がどこだかわからなくなり、ワンワン泣きながら全く違う方へ行こうとする。
そこにあるのは美容院で、P君の行きたいお好み焼き屋さんではない。
泣きながらあっちへ行ったりこっちへ行ったり。

よく食べるP君は、これから何か食べられると楽しみにしていたのだろう。
それが突然、さぁ帰るよとなったから、ちがうちがうー!と思ったに違いない。

すっかり泣きじゃくって、娘の「電車見に行こうか」も聞かない。

泣き止まないP君を抱っこして、「子どもって大人の都合で決められちゃうんだよね…」と、娘と話しながら歩いた。

小さなP君のハートブレイクを思うと、切なくなった。

でも親は四六時中つきあうわけにもいかない。
今がそんな時だと気づいていたら、あとは試行錯誤やっていくしかない。

一方の子どもはといえば、大人に育ててもらわないと生きていけない。
小さなハートで、親に受け入れてもらおうとしてるのだろう。

そして今まで何でも聞いてくれたはずの親が、自分の思いを受け入れてくれなくなったら、そりゃあ嫌だーとなるに違いない。

(そんな時は、婆が何でも言うこと聞いてあげるよ〜と思うけど、そんなわけにもいかないし)

読書会で読んでいる本にあった「傷つき」。

癒されないまま生きていくとしたら、それは悲しいことだ。
大人になっても、癒されないままの傷つきを抱えている人もいる。

幼い子の自己主張は、まだ始まったばかりだ。

「P君、ほら電車来たよ」と娘と私が手を振った。

電車じゃないもん、お好み焼きなんだもんって、本当は言いたいの婆は知ってるよ。

促されて電車を見上げたP君の手が、2、3度、グーパーグーと小さく動いた。

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御手洗 育/暮らしのエッセイスト
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