名古屋人のソウルフードが冷たくなったこの夏(エッセイ)
こう暑いと、冷たいものが食べたくなります。
東京およびその近郊で暮らした学生時代7年間、私が時に無性に恋しくなる《味》が、
スガキヤ(寿がきや)ラーメン
でした。
ある時、船橋(だったと思う)に「寿がきや」が開店した!という噂を聞き、わざわざ食べに行ったほどです。
(現在は関東地区から引き揚げ、東は静岡県まで)
ですから、寿がきやラーメンから隔離されていた3年半の「再勉生活」中は、とても辛かった!
「和風とんこつ」味、というのがここのスープのうたい文句ですが、こってりしておらず、あっさり系で、いわゆるテーブル胡椒ともよく合います。
「寿がきや」は、名古屋を中心に東海地方では、地場系スーパーのほとんどにフードコートとして出店しており、とにかく安い!
ですから、この地の中高生はたいていお世話になっています。
私は中学3年の時、毎週学校の塀を乗り越えて校舎横のユニー(今はピアゴ)に出店していた寿がきやで昼ラーメンを食べていました。
それを学校に言いつけた裏切者がいて、職員室で正座させられた上、
「内申書に《素行不良》、と書くぞ!」
と教師に脅されました。
この程度で《素行不良》とは、ひどい話です。
もうひとつ、エピソードを。
「寿がきや」はもともと甘味屋から出発しており、
「異性の目を気にせず、女性客に甘いものをたくさん食べていただく」
という《謎?》理由により、市内中心部には、《女性専用=男子禁制》店がけっこうありました。
高校の1年か2年の時、姉とその友人(♀)の3人で栄町ビル地下にあった「寿がきや」に入り、ラーメンを注文したところ、どうも店の様子がおかしい。
女性店員が、柱の陰から交代でこちらを覗いてくるのです ── まるで映画スターでも来店したかのように。
「なんか、様子がおかしいね」
そう言いながら食事を終え、店を出る時にようやく気付きました。
その店は、《女性専用》だったのです。
私(♂)はその頃、髪を肩まで伸ばしていたので、店の人たちは、
「ひょっとしたら……男なんじゃない?」
と思いながらも確信が持てないため、お咎めもままならず、「遠巻きに」観察していたのでした。
(今なら、ジェンダー問題云々でもめそうですが、もう存在しない店舗形態のようです)
《名古屋人のソウルフード》
もちろん、人によって異なるでしょう。
でも、高価な「ひつまぶし」などは枠外ですね。
「きしめん」は論外です。
「矢場とん」「味噌煮込みうどん」を押す人もいるかもしれません。しかし、やはり、
➀ 値段が安い。
➁ 市内どこでも食べられる。
というのが重要な評価ポイントではないでしょうか。
さて、本題です。
この夏、「寿がきや」に新メニュー
《冷たいスガキヤラーメン》
が加わりました。
混乱を避けるために説明すると、以前から、
《冷やしラーメン》
というメニューはありました。
これ(↓)は見てのとおり、いわゆる「冷やし中華」です。
《冷たいスガキヤラーメン》は違います。
「玉子入りラーメン」と比べてください。
チャーシューがハムに代わっている以外はほとんど同じに見えますよね。
実際、ほとんど同じ!なんです ── 温度以外は。
冷たいんですよ、とっても。
「スープ」も「麺」も、そのままの味で、
「メンマ」も「きざみネギ」も「温玉」もそのままで、
ただ、
冷たいんです、とっても。
斬新ではありませんか!
ハムに代わったのは、冷たいチャーシューでは油身が白くなり、見た目も食感も悪くなるからなんでしょうね。
「寿がきや」ラーメンには必ずついてくる、
《ラーメンフォーク》
も同じです。
これは、その昔給食についてきた、評判の悪い「先割れスプーン」とは異なり、
スプーンとフォークの役目をしっかり(?)兼ねる優れモノです。
あ、(?)は気にしないでくださいね。
《ラーメンフォーク》は、創業者が環境保護の視点から、
箸よさらば
の視点で考案したそうです。
うーむ。ご立派!
……でもやっぱり、麺はお箸が食べやすいかな。
とにかく、炎天下を歩いて来た後、この、
《冷たいスガキヤラーメン》
は絶品です!
冷え冷えのスープも全部飲んじゃいます ── 血圧にはよくなさそうだけど。
最後に、お店に貼ってあった、名古屋弁全開の「求人ポスター」も紹介しておきます。