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女子高生の「あったらいいな」は20年後に大学の先生が「叶えてくれた」(エッセイ)

一昨日の日経電子版に、次のような次世代技術が紹介されていました。
《テレビの前で試食も 明大、味がわかるディスプレー開発》

明治大学の宮下芳明教授は画面に映る料理の味まで分かるディスプレーを開発した。食品を味覚センサーで分析し、塩味や甘味など基本となる5味の溶液やアルコールなどを配合し、任意の味を再現する。今後、香りや食感などの再現まで可能になれば、離れた場所で有名店の料理の味を楽しむなど新しい食体験が実現できるかもしれない。2050年には、テレビなどを通じた味の共有が普及している可能性がある。
21年10月に発表した「テイスト・ザ・テレビ(TTTV)」は、料理などの写真を表示するディスプレーと約10本のカートリッジからなる装置だ。カートリッジには基本の味を再現する塩化ナトリウム(塩味)、スクロース(甘味)、クエン酸(酸味)、塩酸キニーネ(苦味)、グルタミン酸ナトリウム(うま味)に加え、辛味や渋味を再現する溶液、アルコールなどを充塡した。
……

日経産業新聞、2022年4月4日

要は、テレビで見ている食品の味を、基本とする10種類の味を組み合わせて再現する装置を開発した、というニュースです。
この記事を読んで、ちょうど20年前、2002年の7月に提出された、ある高校生の提出レポートを想い出しました。
このレポートは発想がユニークなだけでなく、その《発明》を描いたイラストも《簡明ながら秀逸》であったので、コピーに残しておいたのです。

20年前、大学講義に飛び入りした女子高生が提出したレポート

以前の記事(↓)に、工専で特別講義を頼まれた時、こんな宿題を出したことを書きました。

(1)あなたが「こんなモノがあったらいいな」という製品を書いてください。できれば、イラストを使って表現してください。

(2)その製品は、どんな《技術上のブレイクスルー》があれば実現するでしょうか?

また、その後、大学で短期留学生を対象にした、英語で行う化学の講義でも、同様の宿題を出しました。

そこで提案された《「あったらいいな」アイディア》の中には、その後の技術開発によって実現したものがいくつかあります。
残念ながら、学生さんたちの「あったらいいな」が直接結びついた技術開発では(おそらく)ありませんが、時間の前後こそあれ、《人が「欲しい!」と想うモノ》は似たようなものなのでしょう。

さて、2002年は工学部の短期留学生数が少なかったので、その大学の付属高校の生徒を《聴講》に誘ってみました。
そして、
「もし、よければ」
と宿題への参加も呼びかけたところ、上記の発明《Remote Taster》を提出してくれたのです。
(掲載したのは、彼女が提出したレポートの(問1)に対する部分です)

提出レポートの問1解答イラスト部分

レポートに書かれた説明書き(和訳)はこんな感じです。

Remote Taster(遠隔味見機)
機械的に味見をする装置でいろいろな使い方ができる。
例えば、TVを付けて食レポ番組を見た時、今ならただ見てレポーターが「うん、美味しい!」とか言うのを聞いているだけ。
でも、この装置を使えば、実際に味もわかるスグレもの。
他には、TVを通じて味見してもらった食品が気に入れば、そのまま購入してもらう販売促進に使うこともできる。

レポートの問1のイラスト説明書(Pochipico和訳)

彼女の《発明》は、舌にかぶせたさやの内側が味蕾みらい細胞を「機械的に」刺激することにより《味を再現する》仕組みのようです。
ある意味、《10本の化学カートリッジ》が必要な明治大学・宮下教授の開発装置の、ひょっとしたら(実現可能ならば、ですが)さらに先を行っているのかもしれません。

ただし、実際の人間は料理の《味》を《味覚》だけでなく、《嗅覚》との複合で感じるようなので、どちらのシステムもまだ、課題が残っています。

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