屋久島の旅 [5/5] (山で★深読み)
屋久島2日目はメインの縄文杉までの山中行、3日目はグループを離れて一転海岸をドライブ、そして最終日になりました。
最後の日は、島の西端にある海岸沿いの世界遺産地域、そして南側の勇壮な滝ふたつ、そして屋久島料理を昼食に取った後、空港へと戻ります。
《今さら》感はありますが、「まつばんだ交通」さまから屋久島の地図をお借りしました。ホテルは➁空港に近く、ここから反時計回りに海岸を1周します。
昨日個人ドライブででかけたのが➀近くのガジュマル園と⑧の永田いなか浜ですね。
今日のメインは世界遺産地域にあたる⑦の《西部林道》散策です。色も大きさも桜に似たツツジ、サクラツツジが満開でした。
この辺りに来ると、ヤクザルやヤクシカがフツーに道路脇にいてこちらを観察していますね。
岩に《着生》した屋久島らしい木々も至るところに。
岩も抱きつかれて迷惑なことでしょう。
「君をこわれるほど抱きしめたい~」なんて歌詞がよくありますが、ホントにこわれちゃってる。
バスから降りて、世界遺産地域を30分ほど散策しました。
そもそも世界自然遺産に登録される条件は、
(1) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
(2) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。
(3) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
(4) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。
例えば、白神山地は条件(3)のみで認定されました。
では屋久島は、といえば、(1)と(3)の条件を満たしました。
特に要件(3)の目玉は、西部林道のすぐ脇に聳える|国割岳《くにわりだけ》に代表される、海から山頂までの間に非常に多くの植物相が垂直分布しているユニークさです。
ちょっと意外ですが、九州の最高峰は、屋久島の宮之浦岳(標高:1,936 m)です。それどころか、続く永田岳、栗生岳(宮之浦岳と合わせて屋久島三岳)など九州の標高8位までがこの小さな島にあるのです。
Google Mapで見てみましょう。
国割岳は海岸から切り立った崖が続き、わずか2 kmあまりのところに標高1323 mの山頂があります。
この急な斜面に、海岸の亜熱帯から山頂の亜高山帯へと連続的に変わる、非常に幅広い植物相が分布しており、このユニークさが、自然遺産の該当要件(3)を満たしたわけです。
ほとんど手つかずの自然が残る《西部林道》の散策を終えた後は、バスで島の南半分を周り、⑥の《大川の滝》と➃の《千尋の滝》を見学しました。
いずれも、巨大な岩から成り、山からの傾斜が急で、かつ水量が豊かである、という屋久島の3つの特徴がよくわかる滝です。
なお、「川」を「こ」と読むのは古い読み方「ごう」が訛ったものだそうです。そういえば、「十河」という苗字がありますね。
ところで、豊富な水量、急な傾斜、といえば想像がつくと思いますが、屋久島は水力発電事業の宝の山です。けれど、電力は豊富に得られても、それを使う人口は海岸沿いに1300人余り。産業も焼酎製造ぐらい。
しかし、私自身も長年関わって来たセラミック産業では、屋久島はある製造業で知られています。炭化ケイ素(SiC)の生産です。
炭化ケイ素は、古くは(&今でも)研磨剤(いわゆる研磨紙についているのがこれ)、一時期はセラミック・エンジンの材料やボールベアリングの玉材として注目され、今また、HVやEVに必須のパワー半導体(直流⇔交流の変換を行う)でシリコンを凌駕する性能を発揮する、と脚光を浴びています。
炭化ケイ素(SiC)は、珪砂(SiO2)と炭(C)という安い材料を混ぜて電気を流すと、
SiO2 + 3C → SiC + 2CO↑
の反応(COは燃焼し、無害なCO2に)で合成されます。
ところが、このプロセスでは大量の電力を消費するため、もっぱらカナダなど、やはり水資源が豊富で電力の安い地域で製造されています。
屋久島は《電力が安い》という点で、国内ではとってもニッチなスポットであり、炭化ケイ素の製造場所として最適なのです(平地が少ないのがツライですが)。
ここでは、《屋久島電工》という企業が、水力発電と炭化ケイ素関連事業の両方を、半世紀以上に渡り担っています。
さて、ぐるっと回って地図で➂の安房と➃の千尋の滝の中間、三岳酒造の前にある「屋久然料理・茶屋ひらの」で、ほぼ屋久島で獲れた魚と野菜山菜から成る昼食をとります。
山で獲れたわらびのおひたし、菜の花の白和え、豆腐の燻製、海で獲れた飛魚の酢じめ、鯖味噌などなど。
途中で名物(といっても昔からあるわけではないようですが)の「飛魚の姿揚げ」が出ました。やはり跳ぶのにエネルギーを使うためか、イワシやアジに比べると脂が少なめですね。
最後に、珍味「亀の手」。小さな甲殻類で、ほとんど食べるところ、ないんだけどね。
食後は空港まで直行して宿からの荷物を受け取り、やはり小さなプロペラ機で、今度は大阪の伊丹空港に飛びました(名古屋までは新幹線)。
自宅に帰る頃は「足ガクガク」はほとんど消えていました。
でも、風呂場で「蹲踞」の姿勢をとると、ふくらはぎと太腿内側の接触部分が明らかに《窮屈!》なのです。
「たった1日22 km歩いただけで、筋肉って太くなるんだ!」
これは、ジジイの大発見!でしたね。
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