チャナッカレ近郊の村に到着、ダーダネルス海峡とエーゲ海を望む家 マルマラ海沿い街道の旅★2019(8)
マルマラ海の南岸に沿って西に走ると、急に湾が狭くなり、ダーダネルス海峡が始まる。ここラープセキ(Lapseki)の街で小さなレストランに入り、昼食をとることにした。
この店は、肉屋のように大きなショーケースがあり、いろいろな種類の生肉の切り身や生ハンバーグ、ソーセージの類が並べてある。
それを見ながら、これとこれ、という感じで注文する。
やがてサラダ、ピクルス、青唐辛子などと共に、木の輪切りがそのまま皿になった丸い板に、ラムチョップや牛ロース、ソーセージ、ハンバーグなど焼いた肉類が盛られてサーブされる。
肉の下にはやはりピタが何層かあり、これに巻いて食べる。
ワイルド感あり、かつウマい!
特に、個人的大好物のラムチョップを本場で食べて幸せ!
イスタンブールのレストランで働いているのは男ばかりで、ウェイトレスはいない、と第3回で書いた(↓)。
ここまで田舎町に来ると、かつ、こうした個人経営のレストランでは、家族の女性も店に立つ。
これで2人前全部で127 TL(約2500円)で、チップを20 TL出していた。
ごちそうさま、で店を出るとき、おばちゃんが手にレモン水をかけてくれる。これがなかなかさわやかで、いい感じ。
ラープセキの近くでダーダネルス海峡が一番狭いところに、今、ダーダネルスでは最初の橋建設が進められている。完成すれば、明石大橋を抜いて、世界で最も長い吊り橋になるそうだ。
「中国資本が建設することになって、中国人が大挙して来ている」
と言うので、ネットで調べたら、韓国の企業連合が日本チームに競り勝って受注した、ということだった。
そのあたり、キミ、あまり区別ついてないのね。
チャナッカレの町を過ぎ、田舎になったところで右折し、道路と海の間の林の中に入っていくとまもなく彼の家に達した。かなりエーゲ海に近く、トロイの遺跡にも近い。
1階には海に面したベランダ、キッチン、リビングと寝室ひとつ。2階には、ベッドルーム3つとシャワー+トイレ+洗濯機の部屋、さらにその上に屋上があり、エーゲ海とダーダネルス海峡が眼下に見渡せる。
この家は、友人が数年前に購入した。
彼はこの近くにブドウ畑も持っており、収穫したブドウの一部は実験室で学部学生と共にワインを醸造する実習(!)も行うらしい。
今は彼も彼の奥さんもイスタンブール市内の大学で職があり、主にキャンパスの職員住宅に住んでいる。
「だから、お前がここに住んで小説を書けばいい」
何度もそう言ってくれるので、今回は教え子の結婚式出席を口実に、《お試し》でショートステイすることにしたわけです。
この村は、北東にチャナッカレの街、南西にトロイの遺跡があり、その中間に位置している。
隣家には、リタイヤした夫婦がすんでいるという。
この人は鶏を飼って毎朝卵を採り、畑を耕し、オリーブやオレンジを収穫する、という、自給自足に近い暮らしをしているらしい。
「そのうち、引き合わせるよ」
時おり、隣から、犬の吠え声が聞こえる。
「あれは、どちらかと言えば、Watch dog(番犬)だ。Fox(狐)が鶏を狙いにくるので見張らせているんだ」
狐? ──キタキツネのような可愛らしい姿を想像したが、これがとんでもないことが後でわかる。
チャイ(紅茶)を飲んで一服した後、我々はチャナッカレの街に出かけた。
チャナッカレ──それは──評判通り、美しい港町だった。