なりたかった職業ランキング《第1位:小説家》
さて1位です。
第1位 小説家
これは、記憶にある限り、自分史上最も古い「なりたい職業」でしょうか。
《少年少女世界推理文学全集》に刺激を受けたと書きましたが、おそらくはさらにさかのぼります。
最も古い創作は、小学校2年「ボールの冒険」と題する絵本でした。草野球で強打者が打ったボールがそのまま空を飛び続け、カラスを初めいろいろな出会いを通して学んでいく話です。
国語教師の免許を持ち投稿魔だった母、客の来ない貸本屋を営み投書魔だった母方の祖父から、《業》のようなものを受け継いだのかもしれません。
本を「読む」のは好きでしたが、《書く》ことに大きな喜びを覚えたのは、中学1年の時でした。
自分の創作が初めて《活字》になったことに、やはり「特別の感慨」があり、《小説家》が、かなり具体的に、
《なりたい職業》
の最前列に躍り出て来た瞬間でした。
この後、中学高校と小説本を(通学バスの中でも休み時間も旅の途中も)片っ端から読み、たまにSF小説を書いていました。
家を出てひとり暮らしを始めてからも、読書と旅の生活でしたが、トリガーがあれば短い小説を書いていました。
トリガーとは、例えば:
➀ まったく出席していない教養ゼミ「機械工学と人間」でレポートを課され、苦し紛れの時代小説「鬼瓦妖之介土俵入り」を書いて提出。
➁ 「月刊PLAYBOY日本版」創刊に伴うショートショート募集に応じて掲載&原稿料1万円ゲット。思えばこの投稿が、《自分で自分に「やってみなはれ」》の最初でした。
そのうちに、いくつか書きためた原稿を世に出したくなり、「花婆」と題する小説集を自費出版し、学園祭で販売しました。
学内の印刷会社に依頼し、200部刷りました。本人以外はとうに廃棄していることでしょう。
「サンデー毎日」の記者が買ってくれたので期待しましたが、特にレスポンスはなく、文芸好きの女子中学生と仲良くなったこと、北大恵迪寮に泊めてもらったこと、それに、なんとか投資を回収して欧州ひとり旅に出たことぐらいでしょうか、収穫は。
その翌年、青焼きコピーで小冊子を出したのを最後に、《小説家志望人生》とは決別しました。
この《決別》は、23歳での院進学と結婚、25歳での就職が、やはり大きかったと思います。
「ヤクザな生活」から足を洗い、「堅気の技術者」として生きていくことを決意したわけです。
その予定に変化が訪れたのは、数年後、懸賞論文に「科学データをもとにした未来予測で人びとを導く宗教」のエッセイを書き、賞をいただいたことが契機でした。
つまり「なりたかった第4位」とのコラボです。
この小さな成功体験を得て、今度は「第1位」で《自分で自分に「やってみなはれ」》したくなったのです。
《今年は而立》と自覚した年、いくつかの雑誌に目を通し、それなりに作戦を立て、
A. 普通の小説を某「純文学系新人賞」に、
B. コメディ小説を某「エンタメ系新人賞」に、
C. 創作童話(サンタクロースの話)を某「童話賞」に、
それぞれ応募しました。
ちょうどロッテ落合選手が2年連続三冠王を取る頃で、
「よし、俺も三冠王!」
と調子に乗り、「捕らぬ狸の」受賞スピーチなど考えていたのですが……。
AとCは空しく散り、Bのみが1次審査⇒2次審査⇒……と生き残り、最終選考で賞をいただくことができました。
受賞を機に、私が退職するのでは、という噂も社内で広がりました。
けれど、ふたり目の子供が生まれたばかりでもあり、また本業の《研究開発》は、まさに「なりたかった職業第2位《発明家》」への道でもあり、さらには「受賞第1作」が雑誌掲載水準に達するまでに1年以上かかったこともあり、
「小説は当面《趣味》」
とすることにしました。
しかし、そうこうするうちに会社の仕事が忙しくなり、単行本出版までにさらに時間がかかります。
さらに、この本の販売も冴えませんでしたね。
ただ、私の小説は映像化向きのようで、原作として映画やTVドラマが制作されました。
また、技術雑誌の編集をしている業界関係者や大学教授から声がかかり、米国生活に関するエッセイや、SFショートショートの雑誌連載を持つことになりました。
この頃の連載を多少アレンジした上で、このnoteでは以下のようにマガジン化しています。
「なりたかった職業ランキング2位《発明家》」で書いたように、リアル世界での《大発明》は少なかったのですが、《小説世界》では世の中にインパクトをもたらす《珍発明》を量産しています。
それが、20年前に連載した「エレクトロニック・ショート・ショート・カタログ」シリーズ(⇑)であり、その後の新作シリーズ「バイオテック・ショート・ショート・カタログ」(⇓)です。
言わば、「なりたかった職業」の1位と2位が融合したような作品群!と言えましょう。
現役サラリーマン時代は難しかった「《なり職1位》実現に向けての活動」は、リタイヤ後も頼まれ仕事に押されてなかなか手につかず、ようやく1年半前に長女にnoteを薦められ、リハビリを開始しました。
noteで始めた新作ショートショートシリーズ、
・《怪社の人びと》
・歩美ちゃんの《スーパー・やおいの困ったお客》
・ユウタくんの《すぐそこにある……》
は、みなさまからの暖かいスキとコメントをいただき、楽しく書かせていただいています。
「危険人物だから、炎上可能性のある媒体は止めとき!」
長女の警告により、twitterなど他のSNSには手を出していませんが、noteにはけっこうハマってしまい、構想中の長い本格小説がなかなか進まない状態が続いています。
けれど、この「なりたかった」シリーズで《1位》と公言した以上、少し落ち着いて書くべきものを書いていこうか、と改めて思いました。
6回に渡るこのシリーズは、
「職業ランキング書いてみませんか?」
とジジイの尻を叩いていただいた凛さんのおかげです。
この《お題》をいただいたおかげで、自分の人生を原点から総合的に振り返ることができたように思います。
── 感謝します。
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