来賓スピーチを頼まれた結婚披露宴前夜に新郎から《釘刺し》電話「明日はくれぐれも《常識》をわきまえてくださいね」 (エッセイ・披露宴スピーチ前編)
娘から、彼女の結婚披露宴で私が問題発言(問題行動?)をやらかすのではないかと警戒されていたことを記事(↓)の末尾に書きました。
彼女はかねてから父親のことを《危険人物》視しており、中学・高校の頃から、
「将来、結婚したい相手ができても、お父さんには会わせない」
「お父さんは結婚式には呼ばない」
と断言していました ── しくしく。
一応、式には呼んでもらえたので、当時と比べて、
➀ 彼女が《寛容》になった。
➁ 私の《社会性が向上》した。
のいずれかでしょう。
私を《危険人物》扱いするのは18年間生活を共にした娘たちだけではありません。
私に来賓スピーチを頼んでおきながら、披露宴前夜になって心配で堪らなくなった男がいました。
彼は大学研究室の後輩でした。
実験自体もあまり真面目に取り組んでいませんでしたが、私生活上も、いろいろ問題のある人物でした。
例えば、パブで他人がキープしたウイスキーボトルをトイレ帰りに勝手に持ってきて自分のボトルに移し、中身の減った瓶を何食わぬ顔で元に戻しておくようなことを行ったりする、とんでもないヤツでした。
女性関係も、多くのドラマ(とあえて表現しましょう)をかかえていました。
彼は修士課程修了後に就職し、1年余りで結婚することになります。披露宴の招待が来たのでこれを受けると、折り返しに来賓スピーチの依頼状を送ってきました。
そして、披露宴を翌日に控えた夜11時過ぎ、自宅の電話が鳴りました。
「もしもし、Pochiさんですか」
「おお、びっくりした! どうしたの?」
── この男なら、土壇場での結婚取りやめもありうる、と不吉な予感すら頭をよぎりました。
「いや、明日は結婚披露宴なので」
「わかってるよ ── で?」
「スピーチをお願いしたことで、……心配していまして」
「は? 心配って?」
「……」
「一体、何? ……こんな夜遅くに」
「Pochiさん、明日のスピーチでは、くれぐれも《常識》をわきまえてくださいね」
「……はあ?」
「A先生も、Y先生も来られます。会社の上司も来ます」
彼の就職先は、日本を代表する大企業でした。
「……あのねえ」私は言いました。
「俺にスピーチを頼んだ時点で、全てを覚悟していたんじゃないかい!」
「……それは、そうです。でも、やはり、《常識》の範囲、というものがありますよね。それをわきまえていただかないと……」
「── 甘いわ。……覚悟が足りねえな。じゃ、明日ね!」
そこで電話を切りました。
以下、後編!
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