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【地獄で仏に会う】ではなく【天国の門前で鬼に会う】(新釈ことわざ辞典)記事版

地獄で仏に会ったことはありません。
でも、

《天国の門前で鬼に会った》

ことはあります。

高校1年の時でした。
クラスは、♂35人、♀10人と、夢に満ちあふれた学校生活を送るには、ややバランスを欠いた環境でした。

「おい、知ってるか? 今日からK女学園、学園祭なんだぜ」
「お! ……行くか?」
「招待状とか持ってなくても入れるの?」
「……わからん。なんとかなるだろ」

私たちの高校からバス停で5区間離れている女子高です。学園祭の「祭」の名前には清楚な花の名がついていました。
近隣に生息する男子高校生に、

『……ここに花園があるわよ……』

と思わせる意図で名付けたとしか思えません。

井上ひさし氏の自伝的小説「青葉繁れる」にもそんな情景があったような気がします。
noteでは、ぺれぴちさんの青春エピソード(↓)に、大いに感銘を受けたシーンがありました。

マンガ化もされています(↓ by アリエルさん)。

残念ながら、この話はそんな美しいものではありません。

私たち(当然♂ばかり)4人は作戦会議を終え、授業をサボって女子高の文化祭に潜入することを決めました。

しかし、情けないことに、女子高前でバスを降りたものの、校門を遠目に怖気おじけづき、
「もう一度作戦会議だ!」
バス停前の喫茶店に入り、小半時ほどすごしてテンションが上がるのを待ちました。

そして、再び、美しく飾り付けされた校門に向かったのです。
── その時でした。

「おい、お前ら! ウチの1年だな!」
校門まであと数歩ほどのところで呼び止められたのです。

見ると、「花園」の門前で、《鬼》が腕組みしていました。
── わが校の体育教師です。一番凶暴なヤツでした。
我々4人は花園にまったく足を踏み入れることなく、《鬼》に生徒手帳を取り上げられ、その場から返されました。

そして翌日、グラウンド横にある体育教師専用の職員室に呼び出され、こっぴどく絞られました。
── 花園には一歩も入れなかったのに。

「……2回目の作戦会議が失敗だったな。すぐに突入すりゃあ、まだヤツも来ていなかったかもしれんな」
「……それにしても、なんだあいつ、勤務時間中に何やってるんだ? 刑事の張り込みかよ! 他の学校まで来て何やってんだ!」
「……あそこで見張るのが勤務なんだろうな。── まったく、馬鹿げた連中だ」
「……よっぽど暇なんだろうな」

授業時間中に《花園》に行こうとしていた自分たちの所業はさておき、門の前で仁王立ちだった《鬼》の非道を深く恨む、私たちでした。

この《鬼》は、「少子化」にあらがうチャンスの芽も摘んだかもしれません。


ちなみに、今回の【地獄で仏に会う】辞典説明文は、noterさまからの有り難いご指摘をいただき、2回の改訂を経て、上記バージョンで確定しました。
ご意見をいただいた、かんやん様、アリエル様、および同居人に感謝申し上げます。

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