メモ。赤いモレスキンの女。
久々に一気読み。『赤いモレスキンの女』アントワーヌ・ローラン著。
偶然は世界を救う。SNSやアプリ、そんな時代にこんな出会い。簡単に言ってしまえば、フランスのエスプリ的洒脱な大人の恋愛小説(これでいいよね?)。
手書きのメモ。紙の本。アナログな物ってやっぱりいいな、と思っておいて、電子書籍で読んだ僕はなんなのか。
可能性のノスタルジー。
後悔が導く感情。もし、そうしていなかったら。大事な何かを通り過ぎてしまっている僕ら。
もう少し注意深く優しく生きていきたい。
『つまり、人は大事な何かの側を通り過ぎてしまう。その何かは愛かもしれないし、仕事かもしれないし、よその町、よその国への移動かもしれない。つまり、もう一つの違う人生。その側を通り過ぎる、同時にそれはあまりにも近くにあるので、人はときどき催眠に似たようなメランコリー状態に置かれる時、そうでありえたかもしれない世界の断片をつかむことができるのだ。遥か彼方から発信されるラジオの周波数をつかむ時のように。メッセージは確かにぼやけているが、耳をじっと傾けていると、現実には起こらなかった人生のサウンドトラックの断片を聞きとることができるのだ。現実には決して口にしたことのないフレーズが言葉になって聞こえ、決して行ったことのない場所で自分の足音が鳴り響く。決して歩いたことのない砂浜にくだける波音をはっきり区別し、決して関係を持ったことのない女性の弾ける笑い声、彼女がささやく愛の言葉が聞こえる。』
—『赤いモレスキンの女 (新潮クレスト・ブックス)』アントワーヌ・ローラン著より引用。