Karinちゃん著:「実録! バーチャルAV女優」の感想文
「実録! バーチャルAV女優」の内容は、「Karinちゃんという女優の魂・経験・思想」に集約されます。どれも貴重な内容ですね。本の醍醐味は、その人自身の歩んできた人生や経験、頭の中の思考回路などにかなり接近できるところにあると私は考えているので、本書のようにKarinちゃん自身のことが赤裸々に書かれた内容のものは、とても嬉しい気持ちになります。
読み進めると、Karinちゃんの場合は特に「人が演じている」という情報量にこだわっているため、能や女形にも通じる求道者のようなストイックさを感じる部分も多くあります。そこがまた味わい深いですね。
【1. 2021年3月1日・引退~KarinTTL~】
私の大好きな作品に、serial experiments lainがあります。
現在、lainTTLという期間で、そのTime To Live(残り生存期間)という考え方に私は深く共鳴しています。Karinちゃんの右側のリボンがlainをモチーフにしていると知ったときは、「えええ!!そうなの!!」と驚き、喜び、大声で叫んだものでした。
Karinちゃんが2021年3月1日に引退すると宣言して日々生きていたことを、私は本書を読むまで知りませんでした。
三年間という活動期間に込められた覚悟がとてもよく伝わってきました。
まさに、KarinTTL。
そもそも、私たちの命やリソースには限りがあって。残りの時間や命が無限にあるとどこかで勘違いし、明日も明後日も生きていられると思い込んで日々を重ねている現状があるのは、私自身否定できません。
X-OasisやバーチャルAV女優という配役に関しても、おそらくKarinちゃんは自分が第一線で体を張り続けなくても大丈夫な仕組みづくりをしているのだろうと思います。
virtual sex workが文化として定着したとしても、networkの記憶の海の中にあらゆるものは流れていってしまう。だからこそ、Karinちゃんの思考の一部を私たちの中に今植え付けておくことは意味があるのです。flow型の情報に流されるだけではなく、stockする時間だって必要ですよね。私がこうして感想文を書いているのだって、同じ理由です。私がKarinちゃんの本を読んだということは、単に私一人の内なる体験で終わらせられるような、軽い出来事ではなかったのですから。
このような形で、少しでもKarinちゃんの魂が生き続ける素地をつくることも、私にできる、世界への小さな投石なのかもしれません。
【2. 性癖の行きつく先は、誰も傷つかない世界?】
私は、ぽっちゃりした体型の女性が大好きです。
自分がぽっちゃりL女(えるじょ)としてvirtualに生をうけたのもその影響です。とある方からは、「見た目や外見を好きにできるvirtualな世界にぽっちゃりを持ち込んでそれをウリにするって、すごく良いと思うし、大好きだし、面白い」と言われたこともありました。ちなみに、ウリにするというのは、ぽっちゃりアイドルユニット「える&パンダー」としても活動しているためです。
ぽっちゃりをウリにすると言っても、表現内容は「体型云々やコンプレックスが~」とか、「ダイエットを始めなきゃ~」ではなく、純粋に私たちがエモ可愛いとか素敵だと思ったことをカタチにしているのですけどね。
そんな私は、自分の姿にうっとりするくらい恋をしてしまいました。
家族に「ずいぶんでぶだね!virtualは痩せてるほうが可愛いでしょ!」と言われながらも、「いやいや、この姿はぽっちゃりで最高に可愛いんだよ」と静かに言い諭しながら。
この恋心が育ってくると、不思議と色んな表現の可能性を考え始めます。
アバターにパンチラをさせて一通り喜ぶと、今度は「水着を着せてみよう」とか。
挙句に、「下着姿だけっていうのもいいよね」
とか言ってニヤニヤしながらアバターをあれこれ操作するわけです。
・・え?気持ち悪い?何を言っているのですか。きっと誰だってやってるはず。それに、このアバターは私自身。私自身をあまたのアングルで堪能したいと思うのは当然でしょう。
そうしてスクリーンショットを撮ったり動画を撮っていると、ふと
「これで写真集作ったらかなり良いんじゃない?」
と思いいたるのです。
需要があるのは私一人かもしれないけど、それでもいいじゃん!
もし同じように需要を感じる人がいれば、それってすごいことだなって思う。まだ作ってはいないけど、いずれ時間をつくってカタチにするつもりです。
Karinちゃんも、「バ美肉おじさんが自分自身で作るポルノ」について言及していました。つまりは、「自分自身の性欲に基づいて自分自身にシチュエーションを課し、その性癖や姿に共感してくれる人に性的価値を提供するポルノ作品」のこと。製作者本人が、性的に見られることの被害よりも自分の利益が大きいと思って制作したポルノ。ここには、「“倫理的には”誰もが納得できるただしいポルノ」の可能性があるとKarinちゃんは言います。
少し頭がこんがらがってしまう部分もあるし、突っ込もうと思えば突っ込める要素はあるのだろうけれど、今までになかった別の軸を提供することで、新しい視点は生まれますよね。
個人的な性癖の行きつく先は、危険な犯罪にあふれた世界ではなく、誰も傷つかない甘く優しい世界なのかもしれません。もちろん、誰も傷つけないという信念が何よりの前提になりますが。
【3. 催眠とVR感覚】
私自身、VR感覚に興味を持っています。クロスモーダルは引き算の要素も強いのだろうなぁと漠然と考えてはいました。が、催眠と関係があるというのは、VRでの「視覚以外」でのアプローチが必要で、そのために効果的な言葉を使うことも多いとのこと。うんうん。言葉とか音大事だよね。ASMRで人は恍惚とできるわけだし。
催眠状態で大切なのは、「外部からの刺激にちょっとだけ素直になる」ことなのだそう。「素直に」・・簡単なようで難しいけど、これができれば色んな場面で求められる感覚が研ぎ澄まされそう。“VR 感覚”が弱い人だったとしても、「アバター同士でも肌感覚を感じられる」という言葉にちょっとだけ素直になっていれば、感じることができるはずなのだそうです。
virtualでの感覚というと、physicalな世界での感覚の再現に重きを置きがちですが、Karinちゃんは「3D の肉体で感じられない感覚を、様々な合わせ技で感じてもらう」ことが、ちょっとした野望とのこと。ただの感覚再現だけではない、豊饒な世界が広がっているのは間違いなさそうです。
ほんと、楽しみですね。・・私ももっと、色んなことに素直でありたい!
【4. 未来のsexual communication】
何事もそうですが、VR風俗においても「相手は生きた人である」という感覚は忘れてはならない部分です。生きた人が相手だからこそ、その尊さや嬉しさや喜びが生まれるわけで。セックス=コミュニケーションであるということを考えれば、当たり前のことではあるのですが。人によっては相手をリスペクトする気持ちが希薄だったりぞんざいだったりすると、とても悲しい気持ちになります。
covid-19の影響で人と人とが物理的距離を取ることがスタンダードとなっている現在。仕切りや飛沫防止シート、マスクで覆われた世界で、顔の表情すら見えにくくなっています。それでも、人は誰かとつながりたいし、誰かと癒し合ったりしたいと願うもの。それはvirtualであっても、physicalであっても同じこと。
未来のsexual communicationにおいて、物理的な距離や制約を飛び越えた形での交流ができるとして。愛する相手の人数や性別、属性といった既成概念もなくなり、「不倫」という概念や「どこからどこまでが浮気?」といった線引きも、極めて曖昧になってくるのは間違いないと私は考えています。
それが幸せなことなのか、本来私たちが求めていた自由恋愛のあるべき姿なのか、それは今の時点ではわかりません。私たち自身がアップデートされ切っていないですし、今の時点で考えていることはあくまで現時点でのスタンスでしかないので。
いずれにせよ、Karinちゃんの実体験による数々の試みは、これからの未来のsexual communicationを形作る上での基礎になることは間違いないと私は確信しています。
だって、他にやってる人がいないんだもん。
「誰もやらないのだったら、私たちがやろう!」
このKarinちゃんの言葉はまさにその通りで。私自身、virtual卒業式 や virtual入学式 を開催することを決めた時も、同じ気持ちでした。今までにないもの、誰もやっていないものこそ、一歩踏み出してカタチにしていくことに意味があります。頭の中で思いついたり、「あったらいいな」で終わらせてしまうことは山のようにあるけれど、それを具現化するために実際に身体を張って行動するところまで踏み込める人はなかなかいません。
リスクを考えてしまうからです。
失敗したらどうしよう
実現しなかったらどうしよう
こんなこと考えてるなんて、周りが知ったらどう思うだろう
それまでかけた労力や費用、時間はどうなる?
その分のお金は?
どうやってそれを収益化していく?
その先に一体何がある?
などなど。
virtual風俗だけでなく、何事もそのように理性で打算的に損得勘定を働かせて天秤にかけるのは誰しも自然なこと。
できない理由を探すのは簡単で。でも、答えや結果が保障されていないからといって、何もしなければ、後にはどんな後悔が残るのだろう?
何もしないで後悔するなら、まずは一歩踏み出してみよう。情熱や魂の赴くままに、かつ冷静に未来を見据えて前進していく方が、色々と健康的ですよね。遠くの安全な場所から指くわえて眺めてるだけの人生なんて、もうやめにしよう。
「なぜ今までなかったのかわからない」もの=「未来を作れる何か」。
皆さんも、未来をつくるために一歩を踏み出しましょう。
Karinちゃんのこの一冊から、とても勇気をもらえますよ。
↓↓Boothにて↓↓