【連載小説】もし、未来が変えられるなら『5話』
渚と付き合うようになって、LINEを頻繁にやりとりするようになった。渚の文章は短文だし、そっけない。でもデイケア以外でも、こうやってやりとりできるのが嬉しかった。そして渚は、頻繁に情緒不安定になって僕に電話をかけてきた。出ると渚は決まって泣いていた。
「ぐすん……ぐすん……」
「どうしたの?」
(ずっと泣いているだけ)
「いいよ。このまま繋いでるから……」
(まだひたすら泣いてる)
「僕は渚の味方だから」
そのまま渚は徐々に泣き止んで、僕はひたすら渚の味方であることを伝えて、やがて渚が電話を切った。
渚は落ち着いている時は元気だ。無邪気によく笑う。笑い声だけ聞くと、すごくちっちゃい子が笑うような笑い方をする。僕はそんな渚が好きだった。渚は僕のことを蘭さんと呼んだ。僕は渚をなぎと呼んだ。だからこれから先は渚のことをなぎって書く。なぎは聞くと高校生だった。僕はびっくりした。でもそう言われると確かに見た目も若い。でも二十歳は越えていると勝手に思っていた。高校生と知っていたら好きにならなかったかもしれない。僕は少し罪悪感を覚えたが、もう好きになってしまっていたから引くに引けなかった。なぎが高校生だって聞くと、どうりで言動が若かったはずだと、ひとり納得した。なぎは僕の年齢を知っていたはずだ。十歳以上離れている僕をなぜ受け入れてくれたのだろう? 考えてもわからなかった。そのままベッドの上で枕を抱えて、なぎのことを考えていた。天井が知らない天井のように感じる。枕の柔らかさだけが僕を安心させる。僕も泣きたい時だってある。なぎがいるから泣かないように頑張ってきた。でも今日は泣こう。
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