2020
あけましておめでとうございます。
年が明けたということで、昨年の振り返りをしたいと思います。
昨年は、世間的には新型コロナウイルスの影響で、例年と比べると、閉塞感のある1年間だったのかなと思います。
ただ、個人的にはそれがある意味ちょうど良かったという側面もありまして、そもそもこれまでは、人との密な関わりが社会的に重視されすぎていたのではないかと思っています。「なるべく少人数で、なるべく対面を避けて」という社会常識は、社交不安傾向のある自分にとってはかなり救いとなっていました。職場などで半分強要されるような付き合いを避けることができたので、比較的楽な気持ちで1年を過ごせたなと思います笑
ただ、制限がある中でも、やりたいことはいろいろとありました。当然、感染拡大防止も気にしつつではありますが、2020年は、そのやりたいことをいろいろと実現できたので、自分の中では凄く良い年でした。
名前のないつどい
なんといっても、2020年の自分はちょっとハイになってたんじゃないかと思うくらい、活動的になっていました。
2020年に新しく始めた活動として、「名前のないつどい」があります。「名前のないつどい」は、生きづらさの名前の有無にとらわれず、語り合ったり交流し合ったりする場を作りたいという思いで、漫画『人と食事するのが怖い!会食恐怖症ってなに??』の著者である朝来おかゆさんと共同で開催しました。昨年は4回開催し、番外編としてオンライン会等も行ってますので、回数にすると8回くらいはやったと思います。ボードゲームや花火大会等の遊びを入れて、できる限り、ゆるさと柔らかさを大事にしていました。
共同主催とはいえ、会の立ち上げ、計画、ファシリテーター、振り返りの記事作成等に一通りしっかり関わってやったのは初めてだったので、自分にとっては凄く勉強になったし、良い経験になりました。(ユニバーサル哲学カフェの方は相方の八木くんに任せっきりだったので…笑)
ユニ哲はとにかく自分が楽しめるような会にするということを最優先にしているところがありますが、名前のないつどいは参加者が安心して語りやすいような雰囲気を作ることに特に重点を置いていたかなと思います。例えば、他の参加者の知識量に圧倒されて何も言えなくなったり、共感を得られないことを恐れて深い話ができなくなったりしないように配慮をしてきたつもりではありました。(その意味で、あえて当事者研究会とは紹介しないようにしてきたところはあります。研究って言うとどうも高尚なイメージが付き纏ってくるかなと思いましたので…まあ本来高尚であるべきではない活動ではあるんですけどね)
ただ、僕もはっきり言ってそんなに「しっかりした人」ではないので、実際にそれがちゃんとできていたかどうかは疑わしいところです。「ファシリテーターってめちゃくちゃ難しいんだな…」ということを嫌というほど実感した1年でした。とはいえ、正当化するわけではないですが、自分みたいにそんなに「しっかりしてない人」が仕切る会の方が、もしかしたら参加しやすいと思う人もいるかもしれないので、変にしっかりしようとは思っていません(というよりできません笑)。ただ、最低限、参加者間でトラブルがあったときに、その対応を誠実に行えるようにはした方がいいと思うので、そこは努力が必要だなと痛感しております。
いろいろあってこの会は一旦活動停止としていますが、この会のコンセプトは今後も大事にしていきたいし、気が向いたらまたやるかもしれません。その時はよろしくお願いします。
吃音を深める会
夏頃から始めた会です。前々から吃音関係の会はやりたいと思っていたのですが、ようやく実現しました。コンセプトとしては、吃音の周辺にあるいろんなテーマ(家族、学校、障害など)について考え、経験を語り合って、結果として吃音に対する考え方を深めていくという会です。なるべく少人数で、閉じた感じの会にしたいと思っています。(ただ、得られた知見についてはなるべく外に出していきたい…)
こっちの方はまだ2回しか開催しておらず、方向性もまだちょっとブレているような感じもあるのですが、これからやっていく中で感覚を掴みたいなと思っています。今開催した2回の感じだと、「自分の過去の経験と向き合う」ということがポイントになっているのかなと思います。いずれにしても、「自分が理想とする吃音の自助会」みたいなのを形にしていきたい、という考えのもとで進めていくつもりです。
ちなみに、自分が吃音の自助会に対して求めていること、というのは、吃音の悩みそのものについて共感し合うだけじゃなくて、その根本にある育ってきた環境や社会的な常識・価値観等のことも含めて知見を深め合うということです。吃音って、見かけ以上に根深い障害で、自分自身もまだまだ掴めていないことも多いので、他の人の経験や意見を聞きながら吃音のことを知っていきたいと思っています。なかなかそこまで突っ込んだ話ができる自助会はないので、自分で作りたいなと思いました。(その分、個人情報の保護や語ることによる加害・被害には敏感になる必要があるかと思います。)
なお、別に参加者を吃音者に絞っているわけではないので、「吃音の自覚はないけど、吃音に興味はある」という人にも是非来てもらいたいなと思っています。というか、自分の中でこの会は必ずしも吃音を語る会でなくても良いと思っているので、マイノリティ問題に関心がある人なら誰でも来てもらって構いません。
また、何気にこの会は完全に単独で開催した初めての会です。当たり前のことですが、1人でやると、どうしても自分が動かないと何も始まらないということを知り、今までどれだけ共同主催の相方に頼ってきたか、ということを実感しました…笑 まあペースは遅いとは思いますが、少しずつでもやっていきたいと思います。
ユニバーサル哲学カフェ
第1回をやってからついに3年目に突入したユニ哲。2020年は計3回開催しました。内1回は、朝来おかゆさんの『人と食事するのが怖い!会食恐怖症ってなに??』と入江紗代さんの『かんもくの声』の2冊を取り扱った「社交について考える」、2回はぼくらの非モテ研究会編著の『モテないけど生きてます』を取り扱った「マイノリティであることと非モテ」というテーマでやりました。
3冊とも、人との関わり方をテーマに書かれていて、いずれも自分の過去を想起させられるような読後感があったなと思います。人と関わっていく中で生じる不安や、距離感を詰めようとしてついやってしまった加害行為に対する罪の意識というのは、下手をすると一生付き纏ってくるものです。人と関わる中で、傷ついたり、傷つけられたりしながら、人間というものは作られていくのだと思いますが、時にそれが根深いものとなってしまい、人と関われなくなってしまうこともあるのではないかと思います。そんな中で、温かく受け入れてくれる人や場所の存在が大事になってくるのかな、とこの3冊を読んで思いました。自分にとって身近な人たちが書いているということもあり、より自分ごととして読めたように思います。
ユニ哲は自分の中では、「その場限りの楽しさ」みたいなのがいつもありますね。そういう楽しさを大事にしつつ、これからも継続してやっていきたいです。
以下、各書の出版社ページのリンクを貼っておきます。
朝来おかゆ『人と食事するのが怖い!会食恐怖症ってなに??』(合同出版、2020年)
https://www.godo-shuppan.co.jp/smp/book/b507048.html
入江紗代『かんもくの声』(学苑社、2020年)
https://www.gakuensha.co.jp/40813.html
ぼくらの非モテ研究会『モテないけど生きてます』(青弓社、2020年)
https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787234766/
吃音の啓発活動(体験談執筆、動画撮影)
2020年は、吃音自助団体の例会にはほとんど参加できませんでしたが、啓発に関わる活動には参加いたしました。
まずは、きつねっとファクトリー企画のもと出版された著書『きつねびより』に、僕も投稿させていただきました。これまで、自分の吃音に関わる体験と言えば、修士論文くらいでしかしっかり書いたことがなかったため、久しぶりだなという感覚でした。
なかなか2ページでまとめるのは難しかったですが、今の自分の吃音に対する素直な思いを書いたつもりです。驚くほど淡々と書けたので、もう自分の中ではある程度整理されているのかなと思います。悩みが消えた、というわけでは全然ないのですが、悩んでいいんだ、と素直に思えるようになった、という感覚なんですかね… 吃音であることは孤独感の種ではあるのですが、逆にその孤独に守られてる部分もあるし、それが心地良く思うこともあるのかな、というのが今の素直な気持ちです。
読みたい人は是非、本を買ってください笑 ちなみに身近な話ですが、職場の先輩が読んでくださって、時々この本が話題に出ることがあります。こうやって話題に出ること自体が良いな、と個人的には思います。
購入はこちら
https://kitsunetto.shop-pro.jp/?pid=152783912
また、友人のミノリハさんが企画された「スタッター」という動画による啓発活動にも参加させていただきました。10月22日の国際吃音啓発の日に合わせて、吃音の啓発動画を作成するという企画だったのですが、動画で伝えるという活動自体初めてだったので、自分の中ではかなり印象深い経験となっています。(話したいことがまとまらなくて、何度も取り直した記憶があります…笑)
動画はこちら https://youtu.be/UiTOyLstGU8
執筆にしても動画にしても、共通して自分が心がけていたことがありまして、それは吃音であることのポジティブな部分とネガティブな部分の両方を伝えていきたい、ということです。前向き一辺倒なストーリーは消費されやすいので個人的にあんまり好きではないのですが、確かに自分の中に前向きに働いた側面もあるのでそれは伝えたかったなと思います。その一方で、実際に困ったことをネガティブに表現することで、その辛さを知ってもらいたいという思いも当然ありますので、その辺が良いバランスで伝わって欲しいなと思いました。(実際上手くできたかは分かりませんが…笑)
その他
上記以外にも、読書会に参加したり、オンライン自助会に参加したりと、かなりいろんな人と交流した1年だったなと思います。正直、コロナ禍が続く中で、必要以上に人との関わりを持つこと自体あまり良くないのかもしれませんが、自分にとっては必要なことだと思ってやっていました。自分が会をやるときも、なるべく少人数で開いてきたし、逆に自分が参加した会も、それぞれ感染防止の対策はしっかりとなされていました。こういう時代だからこそ、「可能な範囲で」人との交流は大事にしたいと思っています。
2021年
あんまり普段目標を立てたりしないのですが、今後はもうちょっと個人的に話せる友人を増やしたいと思っています。知り合いは確実に増えているのですが、一人ひとりと心の距離を近づけていきたいという感じです。
長くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。