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『フィスト・オブ・ザ・ノーススター~北斗の拳~』が素晴らしいという話②~ケンシロウ編~

こんにちは、織葉です。
今回は、『フィスト・オブ・ザ・ノーススター~北斗の拳~』の感想を、ケンシロウへの感想を軸にお届けします。

【ケンシロウ(大貫勇輔)】

主人公であるケンシロウを演じるのは、初演に引き続き、世界的に活躍されているダンサーでもある大貫勇輔さん。

みてください。この筋肉と身体能力。今思い出してもかっこいい…

「ケンシロウは大貫さんにしかできない」そう思ってしまうほど、大貫さんの演じるケンシロウというキャラクターの作りこみが素晴らしいのです。

3時間を超えるこの作品には、ミュージカルとして歌とダンスがあるのはもちろんですが、北斗の拳には欠かせないバトルシーンがたくさんあるため、殺陣が多く、ものすごい体力が必要だと思います。

お稽古の時には大貫さんを含めたくさんのキャストさんが、プロテイン片手に筋トレをしているのが日常の光景だったそうです。
この演目を大貫さんはマチネソワレと、1日に最大2公演行う日もあります…。わかっていても信じがたい体力…。アフタートークや、カーテンコールなどで、キャストの方々の裏話を聞く機会があったのですが、共演者の方が、「ケンシロウという役をwキャストではなく1人でやるのはすごすぎる」と仰っていたくらいでした。

そしてそんな鍛え上げられた肉体をもつ大貫勇輔さんが演じるケンシロウには、肉体面以外でも「ケンシロウが歌い、踊っていてもおかしくないと思える説得力」があるのです。…これは文字でお伝えするのが本当に難しい。
鍛え上げられた肉体。圧倒的な身体能力。それに加え、大貫さんの人柄だからこそ生み出されるケンシロウの目の輝き…愛…優しさ…
それが歌として、ダンスとして、お芝居として、「ケンシロウは大貫さんにしかできない」と思ってしまうほどの説得力を生み出しているのです。

ちなみに今回の再演でまず驚いたのは、大貫さんがワイヤーアクションをやめたことです。1幕序盤、シンがユリアを奪いにくるシーン。ケンシロウとシンが上空でお互いに蹴りを入れながらすれ違うシーンがあります。
初演では二人ともワイヤーアクションでしたが、再演ではなんとシンのみワイヤーアクションに!!!大貫ケンシロウは、自力で飛んでいるのです!!!ワイヤーアクションと同じ高さまでですよ!?しかもめちゃくちゃ滞空時間長いんですけど!?!?大貫さんの身体能力と跳躍力…おかしい…(褒めてる)


守り育て 羽ばたかせるためだ

わたしは、『北斗の拳』という作品には、「次に繋ぐ」というテーマがあると思っています。
1幕M5『心の叫び』では、今ある食料はいつか消えてしまう。だけど、この種もみがあれば弱い人も子供も、分け合って生きていける。「今日より、明日なんだ」と、種もみを「明日への希望」と称したミスミ爺の言葉を聞いたケンシロウが、暴力に溢れた世界で「久しぶりに人間に会った気がする」と心を震わせ、
「俺が闘うのは その命を守り育て 羽ばたかせるためだ」
と歌います。
「希望を絶やすな。自分を信じて青空を目指せ」
と。それを聴いたバットとリン。
「大切なものをこの手で守るため、悪魔たち(この世界にはびこる暴力)に決して従わない」
と決意します。

ケンシロウは強いだけではなく、ともに生きる人々や、次世代を生き抜く子供たちのことまで考えているんですよね。そしてそんなケンシロウだからこそみんなから愛され、みんなもケンシロウから強さやあたたかさを学ぶ…。子供たちに接するときの大貫ケンシロウの目、本当に優しいんです。

このシーンを通して、ケンシロウという役は、ただ筋肉があって、歌がうまくて、ダンスが踊れたらできるのではない。大貫さんという人間だからこそ、ケンシロウが演じられるのだと強く感じます。
その他にも、セリフはないシーンや、他のキャラクターの見せ場のシーンでも、常にケンシロウは子供たちや人々を気遣い心配し、声をかけたり寄り添ったりと、大貫さんという人間力を通したケンシロウの優しさが垣間見えるのも見どころでした。


覚醒

1幕の最後、多くの仲間を失ったケンシロウ。また南斗水鳥拳のレイの死の間際、「俺と出会わなければ…」と自分を責めます。
レイは、最後の力を振り絞り、全力でケンシロウに伝えます。
「これだけは胸に叩き込んどけ。お前はこの時代に必要な男だ。リンやバットやみんなの為に生きねばならん。生きて、見つけろ。拳王(ラオウ)に勝つ道を。あいつにはないものを。そして、必ず倒せ。それがお前の宿命だ。」と。

仲間の死。レイの言葉をきっかけに、始まるM13『決意』。己の無力さを恨み、苦しむケンシロウ。そして、レイとの約束。ラオウにはないものを探す中で、自身の心に宿る仲間への愛、その愛を失ってしまったことへの哀しみに気づき、それを力に変え覚醒するシーン。覚醒までの心の動きを、殺陣を交えたダンスパフォーマンスで表現する姿は本当に圧巻で、息をするのも忘れてしまうほどでした。

ちなみにこのケンシロウ覚醒のダンスシーン、初演も素晴らしかったですが、再演ではなんと倍以上長尺になっていました!!大貫さんの身体能力、すごすぎる!!! 


かけがえのない光

2幕終盤、ユリアを愛するシンは、自身の愛を競う相手にふさわしいのはケンシロウだと確信し、ラオウに闘いを挑みます。全く歯が立たず、ボロボロになるシン。ケンシロウはその闘いに割って入り、シンを助けます。ラオウに「死んだも同然の男を守ってなんになる!」と問われたケンシロウ、こう答えます。
「同じ女を愛した男が、俺と闘いたいと言ってるんだ。他に守る理由があるか」と…。
そして「さぁ、来い」とシンの闘いを受けるケンシロウ。「(ユリアが俺を選ぶまで)あの世でもお前と闘う」と言い残し、ケンシロウを一発も殴れることなく息絶えたシン。死を見届けたケンシロウはシンの拳を自分の頬へ…

かっこよすぎるうううううう!!え!?こんなかっこいいことある!?敵でも?!7つの傷を付けてユリアをさらっていった男でも?!同じ女を愛してたら!?!?懐が広すぎる!!!あああああああかっこいいいいいいいいい。
と、私の心の中では大貫ケンシロウへのときめきが踊りまくっていましたああああ
(すみません、だいぶ心が乱れました)

シンが死に、ラオウがその死を「犬死に」と言ったことで、ケンシロウの目に怒りの炎が灯ります。
「この世にそんなものはない。お前が踏みつけてきたどの命にも、かけがえのない光はあったんだ」
ここからさらにケンシロウが覚醒し、倒れていった仲間、失ったかけがえのない命を心に宿し、最終奥義『無想転生』を習得・発動。ラオウを圧倒します。このシーンは、本当に圧巻。ケンシロウの後ろで、仲間たちの魂がケンシロウに力を授けているんです。アンサンブルの皆さんの力強い動きと表情、歌声が、ケンシロウに力を与え、それを受け取ったケンシロウが、ラオウを圧倒…
このシーンほんとやっばいんですよ。何回観ても鳥肌…力を受け取り、ラオウに挑む大貫ケンシロウの力強い眼差しも本当にかっこいい…!

2幕ラスト、ラオウとの最終決戦。死んでいった仲間たちの心を胸に抱き、その愛と哀しみをまとったケンシロウ。激しく拳を交える闘いの最中、ケンシロウは、かつて憧れた北斗の長兄ラオウを想い、涙します。今がどうであれ、かつて愛した瞬間を忘れないケンシロウ…深すぎる愛がつらい…。

ラオウに追いつめられても、バットとリンの声に力を取り戻しラオウに立ち向かうケンシロウ。最終局面でも、ケンシロウに力をくれるのは自分以外の誰かなんですよね…一人孤独に闘うラオウとの対比が胸にグッときます。
そして激闘の末に、ケンシロウはラオウに打ち勝ちます。 
「お前の心は一人だが、俺の中には多くの仲間への想いが生きている…!天地を砕く豪拳も、この一握りの心を、砕くことはできぬ!!」
と、ラオウに向けて言い放つその姿は、今思い出しても鳥肌がたつほどかっこいい…


生きるということ

ラオウとの闘いを終え、北斗神拳伝承者として生きることを決めたケンシロウ。再会したユリアと共に、生き残ったバット・リン・民衆の元から立ち去ります。バット、リン、そしてその時代を生き抜くすべての人たちに、明日を生き抜く「希望」を残して。

以上、ミュージカル『フィスト・オブ・ザ・ノーススター~北斗の拳~』をケンシロウへの感想を軸にお届けしました。
ケンシロウを演じる大貫勇輔さんのSNSにこのような言葉がありました。
「人は何かしらの伝承者」だと。
出会ったひとたちによって今の大貫さんが形成されている。と。
素敵な言葉だと思いました。人と関わり、何かを与えてもらいながら、私たちは日々を生きています。人から与えてもらっているということは、自分自身も、誰かに与えているということ。『無想転生』は、北斗神拳の最終奥義ですが、人を思う心で会得した力。そう思うと、少しだけ、日々を強く、そしてあたたかい心で生きていけそうな気がしています。

ケンシロウ、そして大貫勇輔さん、本当にありがとうございました!

読んでいただいて嬉しいです。
次回はバットの感想を。
ありがとうございました。

©武論尊・原哲夫/コアミックス 1983 版権許諾証GS-111

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