木と革を組み合わせた、結構高い「しおり」
こんにちは。
PLYLISTという屋号で家具、革小物、金継ぎなど
ものづくり作家をしています。
小尾口達貴(@plylist.koguchi)といいます。
今回の記事では、
私が作っている木と革を組み合わせた「しおり」を紹介したいと思います。
私がやりがちな「しおり」の問題
みなさんはどのようなしおりを使っていますか?
そもそも、「本はkindleでしか読まん!」という人もいると思います。
それでも、一定数の活字が好きな人もまだ多いのではないでしょうか?
そんな活字好きな人は、
どんなしおりを使っているでしょうか?
紙のしおり
薄い金属のしおり
そのへんのレシート
などなど
しおりにはいろんなものがあると思います。
私はいろんなタイプのものを使いましたが、
結局いつもどこかに無くしてしまいがちです。
そう。
しおり、なくしがち問題です。
私はこのしおりなくしがち問題を解決すべく、
いろいろ考えました。
そこで、気づきました。
贈り物
本当に気に入った高い値段のもの
愛着をもてるもの
この3つは、かなり「なくしにくい」ということに。
ということで、
市場にあまり見かけない独特なデザインで
かつ、
愛着がわくような
そして、
しおりにしては高いけど、
買えないわけではない値段のもの
大切な人にプレゼントできるくらいの値段のもの
この辺を意識した商品開発をしました。
あともうひとつ、紙媒体の本を愛する人が、
さらに良い読書体験をできるように
五感を刺激するようなしおりというのを意識しました。
これについては記事の後半で話そうと思います。
デザイン
まず、愛着がわくという点に関しては、
簡単にクリアできると思いました。
僕が得意としている木と革の素材。
なんといっても育てがいがある
本当に素晴らしい素材です。
使い込むほどに馴染んでいき、
色や艶が変化していいます。
使い込むほどに、
本を読めば読むほど、
しおりはその姿を少しずつ変えていきます。
読んだ本の数だけ、色艶は深まっていきます。
そして、市場にはあまり見かけないデザイン
これは結構悩みました。
僕は家具も作るので、シェーカー家具からヒントを得てデザインしました。
シェーカー家具とはアメリカのシェーカー教徒が作った家具のことです。
家具や生活道具などは自分たちでつくり、
自給自足のような簡素な生活をしていたそうです。
「美は有用性にやどる」
「規則正しいことは美しい」
といった言葉があり、
シェーカー家具はシンプルで美しく、
名作家具としても有名です。
シェーカー家具の中でも、特に有名なのは
シェーカーボックスやオーバルボックスと呼ばれる
裁縫道具などを入れる楕円形の箱です。
ちなみに私もオーバルボックスは自分で作って、
縫い糸や縫針を入れて使っています。
私がつくるしおりは、このシェーカーボックスの
スワローテイルと呼ばれる燕尾型の形状をモチーフにしました。
シェーカーボックス
ということで、
できあがったデザインはこんな感じです。
丸くて手に取りやすく、馴染みやすい形です。
機能性
このしおりの機能性は、なんといっても、
先端が読んだ行を指し示すことです。
どこまで読んだのか、一瞬で把握できます。
そして、読んだページを挟むことができます。
本を立てた状態で開くと、しおりを落としてしまうことがありますが、
それを防げます。
本を閉じると、
しおりの頭がちょこっと顔を出すので、
指をかければすぐにページを開くことができます。
なぜこんなに値段が高いのか
制作はすべての工程を私が手掛けています。
まず、木の板を薄く割くところから始まります。
厚みをそろえて、鉋をかけてきれいにします。
仕上げに全体を研磨して、蜜蝋で塗装します。
革のパーツはすべて手作業で切り出しています。
断面はぴかぴかになるまで磨いています。
そして、革の外周に線を入れます(ネンといいます)。
装飾的な意味と断面を焼き締めて強度を高めるためです。
縫い穴を開けて、革と木を縫い合わせて完成です。
ちなみに私の作品はすべて手縫いでやっています。
たかが「しおり」ですが、
その制作工程はなかなか多いです。
ここには書ききれない細かい工程がまだいくつもあります。
制作時間も結構かかってしまいます。
そして、使っている素材も私がこだわって選んでいます。
いい素材を使うと、どうしても値段は高くなってしまいます。
木材は、材木屋さんまで足を運んで選んでいます。
革については、
上質なベジタブルタンニンなめしのイタリアンレザーを使用しています。
触ったときの感触が少しザラッとしている
マットなテクスチャーの革を使用しています。
わざと革の表面を擦って
丸いスクラッチ模様の表情を出している革です。
触り心地がなんとも言えず、素晴らしいです。
そして、とても育てがいのある革です。
私がつくるしおりは
(しおりに限らずですが、)値段は高い方だと思います。
ですが、値段は無意味に高く設定しているわけではなく、
単純に、材料費と制作費と経費とかから計算しています。
僕は適正な価格だと思っています。
今回のしおりに関しては、
下手に安いよりも、ある程度、値がはるほうが紛失を防げるのでは?
という勝手な想像ではありますが、そんな作用を期待してはいますが、
不当に値段をあげているわけではないということは強く申し上げておきます。
はっきり言って、「コスパのいい商品」ではないです。
でも、値段は高いけど手仕事で作られた上質なものを1つ手元に置いておくだけでも、
地味にQOLは上がると僕は信じています。
電子書籍が普及してきているのに、
あえて「しおり」を作ろうと思った理由
電子書籍は、
重要な箇所をハイライトしてくれたり、
検索機能が読み返すときにとても便利です。
そして、何冊買ってもかさばらないという。
いいことずくめです。
僕自身、電子書籍を読む機会も増えてきました。
それに対して、
活字はかさばるし、
検索機能もないです。
でも
あくまで、僕個人の勝手な感想ですが、
なんとなく、
文章の内容は紙媒体の活字で読んだほうが記憶に留まっているような気がします。
本当に、なんとなくなんですが。
多分、小さい頃から紙媒体を読む習慣のほうが、
ディスプレイの文字を読む習慣よりも長いだけかもしれませんが。
そのせいかわかりませんが、
繰り返し何回か開く本というのは、
電子書籍よりも紙媒体の本のほうが多いかなーという気もしています。
そして、
もう一度見返したい文章というのは、
本のどの辺に位置していて、
左右どちらのページにあるかとか、
物理的なイメージも一緒にあるような気もなんとなくですがあります。
ということで、
僕自身は、電子書籍も読むけど、
何回も読みそうだという本は、
紙媒体で持っていることが多いです。
電子書籍の検索機能は便利なんですが、
紙媒体のほうが文章に紐づけされた本の物理的なイメージも一緒に記憶されて、
記憶を定着させている気がするからです。
繰り返しますが、
あくまで「僕個人のなんとなくの感想」ですが。
まあ、僕個人のことはさておき、
紙媒体の本を読むのが好きだという人は、
ぜひこの「ちょっと高い」
いや、『結構高い』しおりがおすすめです。
読めば読むほど、
本と一緒に「しおり」も育っていくからです。
木の質感と、
少しマットで、ザラッとした質感のイタリアンレザー。
読書しながら、五感を刺激してくれます。
本を読みながら
紙の質感や重さ、ページをめくる感覚だけでなく、
このしおりを握った木の感触や
革の少しザラッとした質感を確かめながら
革の香りの時々かいでみたり
コーヒーを飲んだりしながら
雨の日の読書
なんて
いかがでしょうか?
育てたしおりの姿が、
それだけ本と向き合った証。
気になる方は、是非
PLYLISTのwebsiteをご覧になってください。
しおりをはじめ、商品の数は少ないですが購入することが可能です。
今後、樹種や革の種類も増やしていければいいなと思っています。
また、note内のストアからもご覧いただけます。
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