うつ病のサインを見逃さないためのポイントを解説
新しい生活を始めた頃や、毎日のストレスが溜まっている時に体がだるくなることはありませんか?
または、やる気が起きず不安や悲しみを感じていませんか?
もしかしたら自分の体が、うつ病のサインを出している可能性があります。
うつ病は近年、患者数が増加している身近な病気です。
悪化を防ぐためにも症状を感じたら早めの対処が大切。
心や体からのSOSを見逃さないようにしましょう。
この記事では、心療内科門前の薬局に勤務経験のある薬剤師が以下のことについて解説します。
うつ病と抑うつ状態の違い
早めに気付きたいうつ病のサイン
症状が現れた時の対処法
うつ病は「心の風邪」とも呼ばれます。
風邪のように誰でもかかる可能性があり、こじらせると大変なことに。
体の異変に気づいたら、すみやかに適切な対応をしましょう。
体からのサインに注意!うつ病の初期症状の可能性も
厚生労働省の調査によると、精神疾患の患者数は年々増える傾向に。
躁うつ病を含む気分障害の患者数も著しい増加がみられ、平成29年の受診者数は127万人にのぼります。[1][2]
症状を感じていても病院を受診していない方もいるため、実際のうつ病患者数はさらに多いと考えられます。
うつ病が起こりやすい時期
うつ病は、新しい環境になった時や、季節の移り変わりで発症することがあります。
次のようなタイミングは症状が出やすいため、体調の変化に気をつけましょう。
新しい環境
生活や人間関係が変わって大きなストレスがかかり、うつ病を発症するケースです。
栄転や志望校への入学などの喜ばしい状況であっても症状が現れることが。
また、女性は男性の約2倍、うつ病にかかりやすいことが分かっています。
女性ホルモンや、社会的格差が罹患率の差に影響を及ぼしていると考えられています。
特に妊娠中や出産後では女性ホルモンのバランスが大きく乱れるため、この時期に発症する人も多いです。
日本産婦人科医会によると、産後女性の5~10%が産後うつ病にかかるとされています。[3]
生活環境が大きく変わる場合は、本人だけでなく周りの人たちも体調の変化に注意することが重要です。
季節性うつ病
主に冬の間、うつ病の症状が出現または悪化するケースです。
人間は日光を浴びると、やる気を出させる物質・セロトニンを体内で合成します。
秋から冬にかけて日照時間が少なくなるとセロトニンの合成量が減少。
秋頃からうつ病の症状が現れ、春になると徐々に回復する傾向があります。
日照不足によって発症するため、春先までの高照度光療法や薬による治療が有効です。
また、夏にうつ症状が現れる夏季うつ病の患者さんも。
冬季うつ病とは違い、夏の高温多湿な環境が影響していると考えられています。
冬季うつ病も夏季うつ病も、症状の出現は周期的です。
自分の体調サイクルを把握すると、症状悪化の予防につながります。
生活に支障がでるとうつ病と診断される
健康な人でも悲しいことやつらいことがあると、気持ちが落ち込んでしまいます。
一時的なものは「抑うつ状態」と呼びますが、症状が継続して生活に支障が現れ始めると「うつ病」と診断され治療対象に。
心や体に現れるうつ病の症状が、
ほぼ1日中出ている
2週間以上続いている
などの傾向があれば、早めの受診がおすすめです。
ぜひチェックしてみましょう。
心や体に現れるうつ病のサインをチェック
うつ病では、心だけではなく体にもさまざまな症状が現れます。
本人が感じる症状だけではなく、周りの人が見て気づく体調変化も。
いつもと比べて様子が違う時は、うつ病の可能性も考えて対処しましょう。
この章では、うつ病の心と体に現れる症状を紹介します。
心に現れる症状
憂うつ感
何をしても楽しくない
悲しい
いらいらする
集中できない
自分を責める
眠れない
死にたくなる
涙もろい
表情が暗い など
うつ病は心の病気と思われがちですが、実際は脳内における神経伝達物質の分泌や働きの低下で起こります。
セロトニンやノルアドレナリンの働きが悪くなると、食欲、睡眠欲そして性欲などのあらゆる意欲が低下します。
うつ病の症状は人によってさまざまです。
例えば睡眠については、眠れない症状だけではなく、反対に眠りすぎてしまう人もいます。
特に希死念慮(きしねんりょ)と呼ばれる「死にたい」「消えてしまいたい」という症状がある場合は、早急に専門機関へ相談しましょう。
自力での相談が難しいことも多いので、周囲の人間が受診を促すことも大切です。
体に現れる症状
食欲がない
体がだるい
性欲がない
頭痛
動悸
胃の不快感
便秘
めまい
口の渇き など
心の症状が現れる前に、体の症状が現れる人もいます。
内科などを受診しても症状が落ち着かず、原因に心あたりがある場合はうつ病の可能性も考えてみてください。
ひょっとして?うつ病のサインかもと思ったら
うつ病の治療には三本の柱があります。
休養
薬物治療
カウンセリング
うつ病のサインを感じた時は、無理せず早めに専門医を受診することが大切です。
1.まずは心と体を休めましょう
うつ病とは脳内のエネルギーが不足している状態です。
脳を休めるためには、ストレスの原因から距離を置き、しっかりと休養しましょう。
仕事がストレスになっているのならば、勤務時間を短くしたり、しばらく休職したりすることも検討してください。
ベッドで横になるだけではなく、散歩などの軽い運動が良い気分転換になることもあります。
ストレスを感じない環境で、本人にとって穏やかに過ごすことが大切です。
2.症状に合わせて薬で治療
適切な薬物治療のためには、専門医の受診が不可欠。
うつ病の薬物治療には、以下のようなものがあります。[4][5]
抗うつ薬はセロトニンやノルアドレナリンが、脳内で効率よく働くサポートをしてくれます。
症状によっては、睡眠薬や気持ちを落ち着けてくれる抗不安薬の服用も有効です。
また、加味逍遙散(かみしょうようさん)などの漢方薬の併用は抗うつ剤だけの治療よりも、治療の効果が高かったと報告されています。[4]
薬は効き始めるまでに2週間ほどかかります。
効果が現れるまで、医師の指示通りに服用を続けましょう。
3.専門家とのカウンセリングで再発を予防する
カウンセリングは、かたよった思考パターンを見直し、再発の予防につながります。
うつ病は再発しやすい病気です。
一旦は「寛解」という症状が落ち着いた状態になっても、およそ60%の人が再発しています。[6]
うつ病を再発させずに上手く付き合っていくことが重要。
カウンセリングの中でも認知行動療法は、うつ病の再発予防に特に優れていると立証されています。
認知行動療法は、認知=「ものごとのとらえ方」の歪みやクセを修正して、より現実的で幅広いとらえ方ができるようにする手法です。[7]
認知行動療法によって、困ったことが起きてもストレスを受けにくくなり、冷静に行動できるようになります。
うつ病の再発を防ぐためにも、信頼できる専門家とのカウンセリングは重要です。
うつ病は誰にでも起こりうる。サインに気づいたら無理をしないで
今回の記事では以下について解説しました。
うつ病は生活環境が変わった時や、日照時間の少ない冬に起こりやすい
心だけではなく体にも症状が現れる
うつ病かもというサインを感じたら早めに対応を
休養、薬の服用、カウンセリングがうつ病の治療に重要
人生において、暮らし方が大きく変わるタイミングはいくつも存在します。
もし心や体に不調を感じた時は、ひとりで悩まずに周りの人や専門家を頼りましょう。
体と心の過労を普段から予防することは、健康を維持するために重要です。
【参照】
[1]厚生労働省 患者調査 平成29年 患者調査の概況
[2]厚生労働省 みんなのメンタルヘルス こころの健康対策~うつ病~
[3]公益財団法人日本産婦人科医会 産後うつ病について教えてください
[4]日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅱ.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016
[5]京都府精神福祉総合センター 心の健康のためのサービスガイド
[6]厚生労働省 こころの耳 職場復帰のガイダンス
[7]厚生労働省 うつ病の認知療法・認知行動療法
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