回想・・・風呂場の扉の前で
うちの猫も他の家の猫同様、風呂に入っている飼い主を扉の前で待つのが日課だった。
私が風呂場に行くと、彼女は鳴いて私を捜し始める。
風呂場の扉を開けて彼女の名前を呼んでおくと、風呂から上がる頃にはいつも彼女がマットの上にシャンと座っている。寒いのにそこでシャワー音を聞きながら私のあがるのを待っている。
細い前足をぴったりと揃え、長い尾の先を自分の尻から前足に這わせて座る。まるでどこかの和服のご婦人が膝頭から足先までぴったりと揃えて座っているかのような姿で。
飼い主自身は雑な性格でそんな清楚な部分は微塵もないのに、いや、ないからこそなのか、彼女の座り姿は美しくて好きだった。
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