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7. 動物病院とのつながり:猫が幸せに暮らすためのライフライン
私は比較的に健康な方だが、加齢と共に高血圧や高脂血症の症状対策としての服薬はおおよそ10年は続けており、それには「かかりつけ医」という存在がある。そして、会社員として仕えた34年間欠かさず健康診断を受診し自分の健康状況をチェックしている。同じように、猫が生涯健やかに暮らしていくには、定期健診や予防接種などを受けさせる必要がある。したがって、動物病院とのつながりが猫と飼い主にとって必要不可欠なものとなる。
さっすー、3つの動物病院でお世話になる
最初の動物病院
最初にお世話になった動物病院は、さっすーを我が家に迎えて2ヶ月目、彼が生後4ヶ月の頃に、去勢手術を受けるために診てもらった城西地区の動物病院である。その病院は、当時住んでいた家から歩いて行ける距離にあり、クリニックは清潔、動物病院の獣医師さんやスタッフの方が見るからに動物好きであり、非常に親切にして頂いた記憶がある。去勢手術後は、年一回の予防接種、フロントライン(今薬名が異なるが、ノミ予防のお薬)の処方、そして不在時のペットホテルとしての利用など、約3年間お世話になった。
2番目の動物病院
次の病院は、私が引っ越した関係で新たに診てもらった城東地区の動物病院である。こちらの病院は家の近所にあり、さっすーを歩いて連れて行ける条件でネットを検索し見つけた病院である。こちらの病院も、最初の病院と同様に、清潔で親切、動物大好きの先生とスタッフの方という三拍子が揃っていた。この病院は2012年頃から診てもらっていたが、2017年にさっすーの血液検査で、腎臓に関連する数値が悪くなってきていることを指摘されている。
動物保険に加入するか否か
私は動物保険(ペット保険)には入っていなかった。このことに関しては、飼い主の考え方次第だと思う。なぜならば、動物が将来重篤な病気にかかる可能性がないわけではないからである。実際に、さっすーは副鼻腔腫瘍(癌)の可能性があった。主要かどうかは、CTを撮って診てみないとわからないと獣医師からは言われていたが、その検査と治療を行なってはいない。しかし、CT撮影やその後の腫瘍の摘出手術を行う場合には、30万円以上の費用がかかると言われていた。そして、その可能性を先生から示されたのは2024年9月であった。当時、さっすーは16歳と高齢、かつ腎臓病を患って体重が3キロ以下であり、麻酔をしても体力的には持たないという判断があって、その選択はしなかったのである。もし、さっすーが10歳程度で、腎臓病の症状もさほど出ていなかったら、私は検査と手術を選択したかもしれない。ちなみに、2番目の動物病院で実施したさっすーの血液検査を見て、私が動物病院で保険加入の相談をしたところ、先生には「腎臓病の可能性がすでに示されているので保険加入はできないでしょう」と言われている。
動物病院の突然の閉院
2番目の病院と獣医師さんにもようやく慣れてきた2019年頃、突然病院から先生が引退するので病院の運営が変わり、担当する獣医師さんも変わると連絡があった。どうやら、先生がご両親への介護が必要になり、これ以上動物病院の仕事と介護の両立が難しくなったとのことだった。猫は、特にさっすーは神経質な性格で、新しい人に対して非常に臆病だった。それは動物病院だけではなく、我が家の来訪者へも同様であったが、特に動物病院では、注射をされたり、見知らぬ猫や犬に遭遇することで興奮したりと彼にとって良い思い出はない。私は、さっすがー早く新しい先生に慣れてくれればいいなと思っていた。そして、動物病院の名前は変わり、新しい先生が着任したが、スタッフの方たちは引き続き以前の先生と一緒に働いていた方たちと同じで一安心していた。
2020年年始に、長期不在のため、さっすーをペットホテルに預けるために初めて動物病院の新しい先生にお会いしたところ、若手でとても印象の良い方だった。そして、さっすーを迎えにいった際に、預かって頂いた時の様子を聞いたところ、随分とリラックスして過ごしていたようで私もすっかり安心していた。
ところが、同年4月に毎年さっすーの血液検査をしていたので、診察の予約をするために動物病院に電話をしたところ、何度電話しても繋がらない。「おかしいな」と思い、1週間ほど経って再度電話したところ今度は「この電話は現在使われておりません」と言われてしまう。私は急ぎ、動物病院に向かったところ、なんと、動物病院があった場所がさら地化しており、病院の建物が消えてしまっているのである。
どうして、新しい先生に変わったばかりの新しい動物病院が、消えてしまったのか、私には全くわからなかった。その後、近所の保護猫のお世話をしている方から教えて頂いた話によると、どなたかが地域猫をその病院に持ち込んだことによって、何かしらの病気が動物病院に預けられていた動物にも感染してしまい、結果的に閉院を余儀なくされた、とのことだった。そんなことがあるものなのか、と驚いたとともに、定期的に通院していた顧客には一言連絡が欲しかったと同時に思ったものである。しかし、このアクシデントにより、さっすーはまた動物病院を変わらなければいけなくなってしまった。
最後の動物病院
またしても、歩いて行ける近所の動物病院をネットで探すことになった私は、3番目の病院、さっすーにとっては最後の病院となる動物病院にたどり着いた。今度の病院は、以前の2つの病院とは異なり、お世辞にもクリニックが綺麗とは、、言えなかったのだが、獣医さんは女医さんで説明が明朗でテキパキとしていたことが好印象であった。そして、クリニック内には預かっているワンちゃんが受付のカウンター裏でいつもウロウロしているという、何とも微笑ましい環境であった。
何よりも、ひっきりなしに訪れる犬猫の患者さんの様子を見るにつれて、この先生は信頼されているのだなということが、何回か受診する際に垣間見ることができたため、私のクリニックの清潔感の懸念は払拭されてしまった(実際にはモノが乱雑に置かれているだけで、医療行為が行われる場所が不衛生というわけではない)。動物病院への信頼については、飼い主が納得するためにも何度か、動物病院側とコミュニュケーションを取り、実際に確認することが重要だと考える。この病院について、Googleマップ上の口コミを見ると、決して良いことだけが記載されているわけではないのだが、ただ、デジタル上のコメントを鵜呑みにするよりは、目で見て実際に猫を預けてみて、先生と会話して判断することが大事だと思う。
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現実的な処方
前述のように、この動物病院の獣医師さんはとにかくテキパキとした先生であり、想定以上にコストがかかるような診察や処方をすることはなく、あくまでも現実的な治療や予防接種などの提案を行なってくれた。副鼻腔腫瘍の可能性の件については、既に述べているが、この時もテキパキ先生は必要なことを端的に説明してくれた。その他にも、さっすーは予防接種(ピュアバックスRCP)を毎年接種していたのだが、家猫であるさっすーが感染するリスクは比較的に少ないため、接種することは必須ではないということで2022年に接種はやめている。テキパキ先生によると、予防接種よりも、むしろ血液検査を行なって、さっすーの腎臓病の進行度合いを確認することを優先する方が良い、ということであった。
また、2024年9月からさっすーの自宅点滴を開始する際には、最初私は自宅で点滴をうまくできなかった。おひとり様がワンオペで猫に点滴することはとても大変なことなのだが、テキパキ先生は動物病院で私に何回もレクチャーしてくれている。最初、私はさっすーへの皮下点滴がうまくできずに、一度諦めて点滴セットを動物病院に返したのだが、さっすーの具合が悪くなってくるのを見兼ねて、点滴をした方が良いと、テキパキ先生が再度手取り足取り教えてくれて、何とか自宅でできるようになったのである。このことは下記の記事でも言及している。
ほぼ年中無休の対応
私は、長期の旅行や出張でさっすーをペットホテルに預けなければいけないことが何度もあった。その時もこの病院では快く対応してくれた。それには、予定が分かった時点で動物病院にコンタクトし、対応可否を確認するという前提条件がある。しかし、不在が年末年始にかかったとしても、迎えに行く日が動物病院の休院日であったとしても、事前に迎えに行く時間を調整しておくことで、動物病院には柔軟に処して頂いたことを非常に感謝している。
テキパキ先生:冷静な態度
このマガジンの記事ではさっすーの最期について、折に触れて話しているが、2025年1月にさっすーが亡くなった後、その報告と5年近く診ていた頂いたお礼に動物病院に伺った。実は、さっすーが亡くなる当日の午前中に、今になっては最後となった診察として、痛み留めにステロイド剤を注射してもらっている。
結果的に、さっすーはその12時間後の同日内に亡くなってしまうのだが、テキパキ先生はそのことにびっくりしていた。涙ながらに、私がさっすーの亡くなるまでの経緯を説明したところ、先生は一言「それは、手の施しようがなかったと思います。腎臓病で亡くなったわけではないでしょう。」と。
飼い主は、どうしても自分で何かできなかったのか、たとえば、皮下点滴も早く始められなかったのか、最後の日にもう一度受診していれば助かったのでは、とあれこれ考えてしまうものである。しかし、テキパキ先生によると、さっすーが亡くなった際の症状は、ゆっくりと症状が進む腎臓病の影響というよりは、副鼻腔腫瘍が脳内で破裂したか何かの可能性が高いということであった。よって、私には何もできなかった、と諭してくれたのである。テキパキ先生は、いい意味でビジネスライクでいてくれて、冷静に対応してくれた。逆にそのことで、少しだけ私は救われた気持ちになったのである。先生がそのようにする背景には、5年近くずっとさっすーを診てくれていて、私を含めてさっすーの病気の経緯を良くご存じだったということもあると私は想像している。
猫の生きている間は動物病院との関係を大切に
今回は、猫と動物病院との関わりについてお話しした。さっすーの存命中は3つの動物病院にお世話になったのだが、どの動物病院でも先生やスタッフの方にとても親切に対応頂いたと思っている。途中、動物病院の閉院などのアクシデントはあったが、さっすーにとってもできるだけストレスがかからないような動物病院と獣医師さんたちにに診てもらえて、私も安心することができたと考えている。
私とさっすーの経験を踏まえて言えることは、動物病院とは長期的な関係構築が必要だということである。そのことにより、猫にとっても飼い主にとっても健康面で安心できる環境を保つことができ、また、猫の急病や出張時などの不在に関して、動物病院に相談できるチャネルを作っておくこともできる。そのためには、定期的に猫に対する予防接種や、血液検査などの健康診断を実施しておくことが飼い主には求められる。
動物病院の立場を考えてみた場合、今まで診察したことのない猫を急に診察して欲しい、1週間預かって欲しいなどと言われても対応できないことも多いと思われる。また、ペットホテルを利用するには、動物病院によっては予防接種をしていないと預かってもらえないところもある。したがって、猫が快適に暮らしていけるように、飼い主が動物病院と定期的にコミュニュケーションを持っておくことで、飼い主自身の精神上の安定も保てると私は考える。このことは、猫だけではなく、そのほかの動物も同じであり、人間がかかりつけ医を持っておくこととなんら変わりがないであろう。
次の記事は、猫といたずらコミュニュケーションについて話す予定である。