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写真家 Saul Leiter 雨なのでソール・ライターのお話
ソール・ライター (Saul Leiter) は、1923年にアメリカのペンシルベニア州ピッツバーグで生まれ、2013年にニューヨークで亡くなっています。
【アンチセレブリティ・フォトグラファー】【地位も名誉も捨てた伝説の写真家】なんて触れ込みで紹介される事が多いですが、とにもかくにも写真が素敵です。
ハッとして、じいっと見入ってしまう。
(※トップ画像は私のしょうもない上野桜テラスの写真です。)
彼は画家志望でもあったようですが、25歳前後でファッション誌のフォトグラファーとなり、20年程ファッション業界で活躍したものの、突然表舞台から姿を消します。
商業主義に嫌気がさして、引き込もり発表もせずに自分の好きな写真だけを撮り続けていましたが、ドイツの出版社からの依頼を受け2006年に作品集が出版されると、大絶賛と共にまた表舞台へと引っ張られることになります。
確かにWikipediaを見ても経歴はかなり曖昧で短いものとなっていますが、
ありがたい事にトマス・リーチというadidasやBMW等のCMディレクターを務めているイギリス人の男性が、晩年のソール・ライターのドキュメンタリーを撮っております。
若干タイトルがズッコケてるような気もしますが、とても良いドキュメンタリーです。現在もAmazon Primeでレンタル視聴できます。
1時間18分と短いながらもソール・ライターに密着し、ご自宅のアトリエや散歩しながら写真を撮るシーン等々、お好きな方にはたまらない映像となっております。お家に可愛い猫もいます。
このドキュメンタリーで、ソール・ライターが13個のテーマについて自身の考えを話してくれているのですが、どれもかなり興味深い内容でした。
例えば幼少期の家庭環境において、自身の信念とは真逆の価値観を強いられ、知的能力や業績が全てで幸福や優しさなんてものには意味が無いと父や兄に言われ続けたことは、晩年になっても彼の中に大きなクエスチョンマークとして残っていたようでした。
この映像の中で彼は何回か、「それは許されているのか?」「これは許されてはいない」と、自分自身について常に誰かに許可を得る必要があるかのような言い回しをしています。彼が語る事の多くは自罰的な形で語られ、どこかから湧き出てくる罪悪感のために、自らを誰かに縛ってもらいたがっているようにも見えます。
見ていて、つらくなるような独白もあります。
監督へ辛辣な言葉を投げつけたり、いやいやをする子供のような姿も。
だけど、観ている方がリアクションに困るような話でも、喋りながらずーっと笑ってたりするんですよね。で、ちょっと監督も「あ、ここ笑った方がいいのかな?」って感じで一緒に笑ってみたりして。
助手のマーギットさんという女性はその辺しっかり心得ているようで、二人で話している時は阿吽の呼吸?で笑ってて、なんだかとっても仲が良さそうで素敵でした。
「忘れられたいと願っていた」「重要でなくありたいと願ったんだ」と言いながらも、精一杯サービスしてたくさん話してくれているようで、大変贅沢な映像となっております。
ラスト13番目での言葉。
「私は美の追求を信じている」
「美しいものを追い求める そういう人生観を、良いことだと信じている」
素敵なドキュメンタリーを撮ってくれた監督に感謝。
いい感じの字幕訳は、柴田元幸さん。柴田さんはソール・ライターの大ファンらしいです。
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現在、2021年3月28日(日)まで、京都美術館「えき」KYOTOにてソールライター展をやっております。お近くの方、うらやましい。
■助手のマーギットさんが監督している財団のHPです。
うう。カッコイイぜ。
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