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57. 原点回帰にして本領発揮!基礎としてのビッグバンドジャズを押さえているからなんでも歌える。JUJUによるビッグバンドジャズライブアルバム『So Delicious So Good』

以前、ちあきなおみ氏の隠れた名盤を是非、今の歌手にコピーしてほしいが、その誰かが思い浮かばない、という趣旨のことを記事に書いたが、遅ればせながらその「誰か」が思い浮かんだ。最近は「スナックJUJU」としてジャンルを問わずその歌声を披露しているJUJUである。

このJUJU、その名をウェイン・ショーターのアルバムタイトルからとったことからも明らかなように、そもそも本人がやりたいのはジャズであるし、事実NYでその修行をしてきた。しかし、残念ながら、今の日本、というか今の日本の芸能界で生きていくにはその実力だけでは生き残れないというか売れない。本人も葛藤したようだが、そこで見つけたのが、いわゆる「歌謡曲」というジャンルであった。しかし、これも以前のこのマガジンで書いたことだが、日本の歌謡曲はビッグバンド時代のジャズをその基礎にしているのである。なのでその意味でJUJUが「歌謡曲」を選んだのは正しい。やや複雑ではあるが、原点を回避してたどり着いたのが結局はその原点だったのである。そしてさらに複雑であるが、原点を回避してたどり着いた原点を経て、原点に戻ってきたのが、このライブアルバムなのである。

このアルバムというかこのライブにおいて、JUJUは紛れもないジャズシンガーである。しかし、それを聴いている我々には、決してジャズに思い入れののある人でなくても、ある種の懐かしさも感じさせるものとなっている。それはここで歌われている歌がいわゆるオールデイズだからではない。何度も言うように、そのスタイルが、ビッグバンドとメインボーカルというスタイルこそが、日本の歌謡曲の原点だからである。もちろんジャズシンガーとしてのJUJUはその持てる技術をすべて駆使している。しかし、JUJUがジャズシンガーであろうとすればするほど、それは「歌謡曲」に接近するのである。これも何度も繰り返すようだが、ビッグバンドによるジャズこそが日本の歌謡曲の原点なのだから。


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