アマゾンプライムお薦めビデオ③ 139:ある意味日本映画史に残る(というか残すべき)最高傑作なのでは!クラシックにしてモダンにしてポストモダン!『銀座カンカン娘』
個人的には『ちゅらさん』『カーネーション』『あまちゃん』に並ぶNHK朝ドラの傑作であった『ブギウギ』であるが(しかし、全話しっかりと見ていたわけではないので、このドラマについては改めて見直してから書くこととしたい)、その影響もあってのことだろう、笠置シズ子氏が出演している映画『銀座カンカン娘』もアマゾンプライムビデオで公開されている。
映画に音が付いたとき、即ち「トーキー」となったとき、誰もが思い浮かべるのは、音楽、歌との組み合わせだろう。その意味で天才歌手笠置シズ子氏は映画界でもスターとなるのだが、この映画については笠置シズ子氏のことは一旦置いておいても見る価値はあるであろう。映画として完璧な完成度の作品が、既にこの時点で成立していたことが分かる。笠置氏はじめ俳優陣はもちろんだが、絵(画)がいい、撮影がいい、カット割りがいい、演出がいい、セットがいい、テンポがいい、音楽がいい、ライティングがいい、脚本がいい、そしてともかく面白い。映画の魅力がすべて詰まっている。今の時点で観ても新鮮でポップでおしゃれで、その意味で、クラシックにしてモダンである。しかし/しかも、決してベタではない。恐らくこの映画独特のテンポの良さもそこからきているのであろうが、普通だったらもっと長く見せるだろうところ、いわゆる「見せ場」を敢えて、ちょい見せで終わらせるのである。笠置氏の歌唱シーンしかり、名人志ん朝師匠の一席しかり、である。しかし、それでいて物足りなさを感じることはない。それだけで、十分満足できるのは、彼らが「名人」であるが故かもしれないが、この映画の何とも言えない「ポップ」な軽さ故であろう。いわゆる「重いもの」「重厚なもの」が名作、傑作と言われがちなところにこの軽妙さを持ってきたという意味で、「モダン」を超えた「ポストモダン」であるとも言える。
そしてその「ポップさ」に見事にマッチしているのが若き日の高峰秀子氏である。まあ、この人の美しさというか可愛らしさはまさに輝いている。「なんて可愛いカンカン娘、ちょいと斜めにカンカン被り、ペイブメントでタップを踊って、ブギを唄ってヒャラヒャラヒャラヒャラ、これが銀座のカンカン娘」とは劇中で歌われる「銀座カンカン娘」の歌詞だが(ちなみに劇中では笠置氏も歌っており、事実やっぱり歌としては笠置氏のもののほうが魅力的だが、レコードは高峰秀子氏のみが出している)カンカン娘=高峰秀子なのだから、この映画はある意味アイドル映画の原点とも言っていいだろう。大阪の元気娘(このころはもう「娘」といえる年齢ではなかったかもしれないが、それでも「娘」の雰囲気を持ち続けているところが笠置氏の凄さでもある)との息の合ったコンビとも相まって、その魅力が最大限に発揮されている映画である。