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16. これが1969年の作品とは!ハンス・レデリウスとディーター・メビウスによるユニット「Cluster」のセカンドアルバム『クラスターⅡ(幻星)』

前回紹介したザッパの『Hot Rats』も1969年の作品ですが、1969年の音楽やアルバムを語るだけでも1冊以上の本ができる(というかおそらくすでに出ている)でしょう。それほど1969年というのはいわゆるターニングポイントの年なのですが、現在のテクノやミニマル、そしてアンビエントに至る流れもこの時にできています。今回紹介するのはその中の一つにして隠れた名盤、ハンス・レデリウスとディーター・メビウスによるユニット「Cluster」のセカンドアルバム『クラスターⅡ(幻星)』です。

メビウスについてはいずれまた紹介する機会があるでしょうが、とにかくこのアルバム、今聞いても全く新しいです。電子音を使っているとどうしても時代が経つと古く聞こえてしまうのですが、そんなことは全くありません。というかこの時点で、誕生の時点でこのスタイルはもう確立、完成していたとも言えます。生まれた瞬間に(もちろんこれに先立つ実験や実践はあったと思いますし、そのあたりは勉強不足ですが)それが確立するということは、このアルバムはアルバム、音楽というよりもジャンル自体を作ったと言えます。音楽には流行があってもジャンルには流行はないからです(強いて言えば、人によって好き嫌いはあるでしょうが)。

これが当時どのように捉えられ、どのように評価されたのかは定かではありませんが、日本でも発売されたこと、そしてそこに『幻星』という日本語タイトルがつけられたのは事実のようです。あの冨田勲氏の『惑星』が1976年ですから、本国ドイツでの発売と日本での発売に時差があったとしても冨田氏より6年は前です。しかも冨田氏の『惑星』はまだメロディが中心です。それに比べてこの『幻星』はメロディと言えそうなものはあるものの、あまりにもミニマルでアンビエントです。こんな作品を作ってしまう人たちもすごいし、それを売り出してしまう人たちもすごいし、それを分かって聞いている人たちもすごい。とにかく1969年というのがとんでもない時代だったことは間違いありません。

しかも場所はドイツです。後にあのクラフトワークを生むドイツです。ザッパが持っていた雑把性といい、ドイツにはなにか異質の磁場があると言っても過言ではないでしょう。当然ドイツにはドイツなりのナチスドイツを踏まえた上での「戦後」があったでしょうし、そのドイツ(当時は西ドイツ)の戦後世代がこのような音楽を作り出した、生み出して行ったのには「磁場」という言葉でまとめるのは乱暴なそれなりの背景、必然性があるのでしょうが、それにしてもその先進性と斬新さにはあらためて感激させられます。

ということでテクノ、ミニマル、アンビエントファンの方はその歴史を知る上でも必聴のアルバムです。是非お聴きください!


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