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26. ビートルズの名盤『Rubber Soul』と『Revolver』を聞き直す

さて、前回「次回はこの時期の前後のビートルズについて、あらためて曲を聴きながら考えていきたい」と書いたが、今回はまずその「前」の次期、ビートルズのサイケ時代である『サージェントペパーズ』(1967)と『マジカルミステリーツアー』(1967)の前の次期のアルバムである『ラバーソウル』(1965)と『リボルバー』(1966)を聞き直してみたい。

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まずは『ラバーソウル』であるが、全体を通してまだいわゆる初期ビートルズの代名詞である「リバプール・サウンド」「マージ―・ビート」は維持されてはいるものの、しかし、音の幅と音楽の世界観が圧倒的に広がっていることが確認できる。いわゆるマイナーコードの曲も多いし、「ノルウェーの森」ではシタールが、「イン・マイ・ライフ」ではハープシコードを意識したと思われるピアノ音が取り入れられている。また、これは機材の進歩、技術の進歩とも関係してくるが、ギターやベースに様々なエフェクトがかけられるようになったのもこのアルバムからであろう。ビートルズ自身が一歩前に進んだアルバムであるし、時代や技術も同時に進んでいたのであろう。時代のトップに躍り出たビートルズが今度は時代の方を引っ張るようになったとも言える。

なお、タイトルである『ラバーソウル』とは「ゴム製のソウルミュージック」の意味で、当時、本場アメリカのソウルからはストーンズに代表されるイギリスのソウルが「プラスティックソウル」と揶揄的に言われていたところから取ったらしい。「プラスティックで何が悪い、ゴム製で何が悪い」というメッセージがそこには込められているのだろう。

そして続く『リボルバー』であるが、これこそまさに傑作である。すべてが名曲であり、『ラバーソウル』で実験的に取り入れられていた要素がここではアクセル全開で使われている。エフェクトはガンガンにかけられ、さまざまな録音技術も駆使されている。「「ラバーソウルですが何か?」という前作での挑発に対し、今度は「これがあなたたちが「ラバーソウル」と呼ぶところの実力ですが、何か?」とその力を強烈に見せつけたと言えよう(そしてそれが僅か1年の間に達成されたことが凄い!)。そしてその実験的、先進的な音楽は当然当時の先進的なムーブメントであったサイケデリックとも結びつく。ある意味『サージェントペパーズ』よりもこの『リボルバー』のほうがサイケである。特に隠れた名曲とも言えるジョージ・ハリスン作の「Love You To」は必聴である。

なお、当時は技術的にこの音をライブで再現することは不可能だったため、このアルバムに含まれている一連の曲はアルバム内のみの存在となったが、後10年も経っていればライブでも再現が可能であっただろう。おそらく本人たちもそれにこだわってはいなかったのだろうが、ビートルズは4人組バンドという形にこだわる必要はなかった。この4人がいさえすれば、それはどんな形態をとっていてもビートルズなのだから。我々が見たかったライブは決してルーフトップコンサートではなく、むしろビートルズ版の「ロックンロール・サーカス」のほうである(もしかしたら映画『マジカル・ミステリー・ツアー』『イエロー・サブマリン』でそれを目指したのかもしれないが、残念ながら結果としては決して成功とはいえない)。その意味でもジョンがストーンズの「ロックンロール・サーカス」に出ていたことの意味と意義について改めて考えさせられる。

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