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4.マイルスによるボクシングチャンプに捧げたロックアルバム『A Tribute To Jack Johnson』

マイルスのアルバムを上げていけばきりがないので、とりあえず今回はもう一つだけ。ボクシング好きで実際にジムにも通っていたマイルスが、伝説の黒人最初の世界ヘビー級チャンピョンJack Johnson氏のドキュメンタリーフィルム用として録音した傑作『A Tribute To Jack Johnson』です。

既にエレクトリック期に入っていたマイルスですが、ここでは敢えてエフェクトはかけず、「マイルスは泣いている」と言われたあのトランペットの生音を聞かせてくれます。黒人チャンプとしての先輩であるJack Johnson氏への敬意の表れとして敢えて体一つで勝負した、というところでしょうか。

しかし、ギターとしてジョン・マクラフリンも参加し、ハービー・ハンコック、チック・コリア、がエレクトリックピアノを担当するなど、やはりここにはこの時代のマイルスならではのエレキ感がでてきます。そしてそのエレキ感は、「ファンク」というよりも、マイルスとしては珍しい「ロック感」として出てきます。ジャズとファンクが相性がいいのは、ファンクの帝王、JBことジェームス・ブラウンのいないバンド(つまりボーカルがいないバンド)としてのJBsがもはやジャズファンク以外の何物でもないことからも明らかですが、ファンクからいわゆるくどさを抜くとロックになるということでしょうか。いや、もしかしたらブルース感というものが肝なのかもしれません。先に「マイルスは泣いている」といいましたが、まさに「泣き感」こそがブルースであります。ブルース×エレクトリック=ロック、ジャズ×エレクトリック=ファンクという図式も成り立ちそうですが、とにかくそのようなジャンルを超えた、かっこいい音、がここにはあります。というかこの時代のマイルスがジャンルというものをそもそも気にしていなかったことが分かります。

ここから先は一切資料にあたっていないので私の憶測ですが、このアルバム曲数的には2曲だけです。もちろんレコード時代の作品なのでA面とB面でそれぞれ1曲なのでしょうが、曲調を見るとここで区切れるというところがいくつかあります。ドキュメンタリーフィルム用なので、いくつかテーマを決めて、それをセッション的にどんどんつないだのでしょう。しかし、だからこそ全体を通してのすごさが伝わってきます。このアルバムは決して曲をまとめたものしてのアルバムではありません。スタジオ録音ですが、セッションの記録としてみてもいいでしょう。この時代のマイルスはジャンルというものを気にしていなかっただけではなく、「曲」という概念も気にしていなかったのでしょう。当初はドキュメンタリーフィルム用のいわゆるサントラ番的な扱いだったのだったのでしょうが、このアルバムだけで独立した作品となっています。事実、マイルス側の判断なのかレコード会社側の判断なのか、初版はJack Johnson氏のジャケットなのですが、再販から上の写真のようなマイルスの演奏姿に表紙が変わっていたりもします。

とくかくかっこいい!クールジャズ期のクールさと、エレクトロファンク期の熱さが融合している傑作です!


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