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これぞ隠れた名盤!今こそ聞き直してほしい傑作!Nicolas Paytonの『BITCHES』

恥ずかしながらジャズファンを名乗りながらNicolas Payton(ニコラス・ペイトン)は聴いていなかった。試しに聞いてみようと思ったのはこのnoteで見つけた佐々木氏の次の記事がきっかけである。

ニコラスのディスコグラフィについてはいずれ改めて振り返りたいが(私自身まだ4枚しか聴いていないので)、特筆すべきと言うか「やられた!」と思ったのが(繰り返すがまだ4枚しか聴いていないが)今回紹介するアルバム『BITCHES』(2011)である。

ジャズファンなら、と言うかジャズファンでなくても明らかに分かるであろうかのマイルス・ディビスの『Bitches Brew』(1970)を意識したネーミングであるしアルバムジャケットである。そしてそのコンセプトも明らかに、「今、マイルスが生きていたら」「しかも歌モノも手掛けたら」というものであろう。ビバップからはじまり、クールジャズ(=モードジャズ)へと移り、モード&コードの時代を経てエレクトロニック、そしてファンクへと移り、最後はヒップホップにも手を染めたマイルスであるが、どんなにそのスタイルを変えてもその底にあるのは「クール」の精神である。そしてこのアルバム、ニコラス・ペイトンの『BITCHES』(2011)も、確かに曲によっては音こそはうるさいかもしれないが(マイルスの時代にはまだ確立していなかったサンプリングや電子音や打ち込みの技術が敢えて意識的に取り上げられている)、そこに基調としてあるのは「クール」(=かっこいい)の精神である。

このアルバムの発売が2011年であり、かの現代ジャズの旗手とされるロバート・グラスパーのデビューが2010年であったことを考えると、ロバートより一世代上であるニコラスのこのアルバムはその陰に隠れてしまったのかもしれないが、このアルバムも間違いなく今に続く、現代ジャズのムーブメントのきっかけの一つであったと言えよう(というか、このアルバム自体が果たしていわゆる「ジャズ」の枠で扱われたのかも疑問であるが)。参考までに言えば早熟の天才である(ロバート・グラスパーよりも若くロバート・グラスパーよりもデビューが早い!)エスペランサ・スポルディングもこのアルバムにゲスト参加している。既にいわゆる現代ジャズの旗手となっていたのだから、ある意味彼女を取り入れたのはビジネス目的もあったのかもしれないが、しかし、それでも声をかけたニコラスも凄ければ、それを受けたエスペランサも凄い!。これぞWin-Winの関係である。さらに言えばこの人(ニコラス)の凄いところは、そういった「現代」をやりながらも同時に「古典」というかいわゆる正統派ジャズもできるというところなのだが、その「古典」の方はまた日を改めて紹介することにしたい。

ということで、このアルバム、今回はジャズ目線から紹介したが、もはやジャズという概念を超えたロックであると同時にテクノでもあるといっていいような名作であり、傑作、つまりはまさに私の大好物のアルバムである。その方面、特に、故高橋幸宏氏の最後のバンドとなった「META FIVE」が好きな人には超お薦めである。微妙にボコーダーエフェクトをかけたニコラスの歌声はなんとなくではあるが高橋氏の歌声を彷彿させるものがある。



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