見出し画像

29. 「集大成」とはまさにこれ!ビートルズの傑作アルバム『ホワイト・アルバム』を聞き直す!

さて、このマガジンの第26回では『サージェントペパーズ』(1967)と『マジカルミステリーツアー』(1967)の「前」の次期のアルバムである『ラバーソウル』(1965)と『リボルバー』(1966)を聞き直してみたが、こんどはその「後」の時代である通称「ホワイト・アルバム」(1968)、正式名称は『ザ・ビートルズ 』を聞き直してみたい。

https://amzn.to/4aFs9Vv

とにかく、今( )に入れる形で発表年を書いたが、1年間隔でこの進化と原点回帰を遂げていることにまずは恐れ入るというか、もはや脅威を感じる。もちろん機材的、技術的な進歩もこの時期一気に進んだのだろうが(というか逆に言えばビートルズの快進撃が機材や技術の進歩を一気に進めたのだろうが)、とにかく、このアルバムには「音楽」のすべてがある。今に通じるというか今現在でも十分以上に通用する音楽のすべてがここにある。「集大成」という言葉をやすやすとは使いたくはないがとにかくこの2枚組のアルバムがバンド(というか音楽集団)としての「ザ・ビートルズ」の集大成であることは間違いないであろう。ビートルズは一般的にはロックバンド、ポップバンドに分類されるが、そのようなジャンル分けというか分類には意味がないことがこのアルバムを聞けば分かる。ジャンルなどどうでもいいというかジャンルを超えた「音楽」こそがこの伝説的なバンドの創造物なのである。

先に「進化と原点回帰」と書いたが、確かにこのアルバムにはこれが今の(そしてこれからの)ビートルズというものと、これこそが(今までの)ビートルズという二つの方向性が同時に記録されている。バンドサウンドに回帰しながら、しかし一方ではスタジオでだからこそできる音作りに取り組んでいる。それ故にアルバムとしてはまとまりがないというか『サージェントペパーズ』(1967)で提示した「コンセプトアルバム」とはある意味逆を行っているのだが、それも十分承知の上で、だからこそアルバム名も『ザ・ビートルズ』であり、アルバムジャケットも真っ白なシンプルなものなのだろう。一曲一曲紹介しているときりがないが、ノリノリの 「バック・イン・ザ・U.S.S.R.」からはじまり、ギターの響きとハーモニーで聞かせる「Dear Prudence 」へと続き、ドラムビートが響く「Glass Onion 」(ちなみに「ストロベリーフィールド」」という言葉が歌詞がここでは出てくる)へと展開した後、ある種「音頭」的な「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」がこのアルバムの曲だったことを知った時には衝撃を覚えた。ビートルズをリアルタイムでは知らない私の世代では、「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」は、「ヘルプ」の頃の時代の曲だったと思い込んでいたからである。そして、その後ジョージ・ハリソンによる名曲「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」などが続き、1枚目でちょっと落ち着いたと思いきや2枚目に入ると 「バースデイ」でまたノリノリで始まり、ビートルズらしからぬというかむしろストーンズ的な「Yer Blues」に行ったかと思えば今度はフォークロック的な「マザー・ネイチャーズ・サン」かと思えば、次は「Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey」と思えば今度は「セクシー・セディー」からの感情むき出しのある意味ヘビーロックと言ってもいい「ヘルター・スケルター」、というようにまさにジェットコースターのようにこのアルバムを聴いているものは心と体を激しく揺り動かせられる。この幅の広さはまさにビートルズ=音楽だからであろう。そして、2枚目B面にようやく到達すると、待ってましたこれぞビートルズ(この時代の=1周回った後の)という「レボリューション1」や「Savoy Truffle」があったかと思うと、実質的にはレノン&ヨーコの手によるミュージック・コンクリートと言っていい「レボリューション9」がその数曲後には出てくる。当時のビートルズファンはこれをどう受け取ったのであろうか。おそらく「、、、」であったろうが、しかしこれこそが音楽の未来だと感じた人も少なくないであろう。

と、とにかくすごい、音楽としてすべてをカバーしていると言っても過言ではないのがこのアルバムである。結果としては残念ながらこのアルバム制作中の頃からビートルズは解散への道を辿ることになるのだが、しかし、「バンド」ではなく「ユニット」という今の時代では当たり前の捉え方ができれば、そうはならなかったであろう。それぞれがソロで活動しながら、気が向けば集まって作品を発表する。そういうスタイルができたはずである(というかこのアルバムがその意思表示であったとも捉えられる)。その意味でもとにかく、ビートルズは時代の先を行き過ぎていたというしかない。そしてそれ(ビートルズは時代の先を行き過ぎていたという事実)を確認できるのがこのアルバムである。

賛否両論あることは理解できるが、今の時代の人には今の時代の「音」として再現されているリミックス版をお勧めしたい。ビートルズがやりたかったのはまさにこの音で、単に当時はそこまで録音」技術が至っていなかったからである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?