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アマゾンプライムお薦めビデオ② 79  男の墓場プロダクション2本立て『任侠秘録人間狩り』『怪奇!! 幽霊スナック殴り込み!』

まさか、この作品をアマゾンプライムビデオで見られる日が来るとは思ってもいなかった。杉作J太郎氏率いる「男の墓場プロダクション」の傑作2作品、『任侠秘録人間狩り』『怪奇!! 幽霊スナック殴り込み!』である。

そしてこれは2本立てとして一気に見るしかない。というのもそれが古き良き日の映画の見方であり、実際、エンドロールがないことも含め、それ(2本立て公開)を意識して作られている映画だからである。

悪く言えば、いわゆるサブカルの人たちが仲間内でお遊びで作った映画、と言う人たちもいるだろう。しかし、これこそが、このような形の映画こそが日本映画の一つの形だったのである。「芸能界」ではなく「映画界」という名の狭い世界で映画好きの連中が集まって作っていたのが、東映や東宝や日活や大映の映画であった。そしてそれらは決して「芸術」ではなかった(もちろん一部には「芸術」を志向している人たちもいたが)。それらはあくまで「娯楽」であった。その古き良き日の映画を再現しようとして作られたのが「男の墓場プロダクション」であり、実際それに成功している(商業的にというよりは作品的に、という意味で)。

この映画、確かに俳優の演技は下手であろう。今や名優と言われるリリー・フランキー氏もこの当時はいわばアマチュア枠である。しかし皆「顔がいい」。ここでいう「顔がいい」とは「美しい」ではなく「印象的」という意味である。元来、映画、あるいは演劇における「顔」とはそういうものであった。よく言われることかもしれないが、今、『七人の侍』をリメイクしようとすれば、そこには10代から70代までの各世代の色男が集められるであろう。しかし黒澤の『7人の侍』はそうではない。あの三船敏郎でさえ、そこではサル顔で描かれている。しかし、それだからこそ映画としての強さがそこにはあるのである。
もちろん、黒澤は顔にではなく、映像美には気を配ったし金も使った。しかし、男の墓場映画はそこにかけるお金はない。しかし、フィルムを使った撮り方にはこだわっている。何気ないところだが、緑や赤と言った印象的なフィルムの色の使い方、単純に顔のアップを取らず顔の一部を何かで隠す演出、切り取られた街の風景がランダムに挿入される演出、など、これも古き良き日本映画(といってもせいぜい70年代に遡るくらい)の映像表現が見事に再現されている。そして何と言ってもいいのは音楽!実際にライムスター宇多丸氏やダースレーダー氏(まだ眼帯をしていない)が出演している『任侠秘録人間狩り』では、この時代のジャパニーズヒップホップが効果的に使われているし(70年代の日本映画でフリージャズやファンクミュージックが効果的に使われていたように)、『怪奇!! 幽霊スナック殴り込み!』では、もはやジャパニーズソウルと言っても過言ではないクレイジーケンバンドのテーマソングと劇中で使われる三味を使った小唄が見事にマッチしている。これぞ映画であり、これが映画である。

ということで、是非、二本立てでご覧ください。そして願わくば、幻の作品と言われる『チョコレート・デリンジャー』もいつの日かアマプラかどこかで見られるようになる日を待っています。


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