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日本学術会議の任命拒否問題のポイント(憲法的・法律的整理)

憲法学者の木村草太氏が、非常に理論的に任命拒否のどこに問題があるのか解説してたので補足資料と共にまとめました。

ビデオニュース11月28日公開、マル激(ゲスト木村草太氏)

動画の内容をかいつまむとこんな感じ。

下記の視点から任命拒否は違法である、と説明。

1. 憲法問題として
・学問の自由(憲法23条)の侵害
・官邸の任命権理論(憲法15条)
2. 法律問題(日本学術会議法の解釈)
・「99人任命・6人欠員」の適法性(7条)
・欠員補充の方法(3条、17条)
3. 政府解釈問題
1983年答弁との「一貫性」

その他、学問の自由とはそもそもどういうことか、などについても掘り下げている。
司会は、いつもの神保哲生氏と宮台真司氏。

木村草太氏プロフィール

東京都立大学法学部教授
1980年神奈川県生まれ。2003年東京大学法学部卒。東京大学大学院法学政治学研
究科助手、首都大学東京(現東京都立大学)准教授などを経て、16年首都大学東
京教授。著書に『憲法の急所──権利論を組み立てる』、『テレビが伝えない憲
法の話』、『自衛隊と憲法』、共著に『憲法問答』、『憲法という希望』など。


番組内では、11月5日の小西議員の質疑に注目して議論を進めているので、会議録を掲載しておきます。

小西洋之議員の主張のポイント

・11月5日、政府側の主張を根本から打ち崩す証拠が立憲民主党の小西洋之氏から提示
・首相が推薦を拒絶することもできると主張する根拠が、誤りだったことを明確に証明するもの
・政府が拠り所としてきた1969年の高辻発言について「政治介入の余地が一切残らないこと」が繰り返し確認されていたことを裏付ける証拠があった。

第203回国会 参議院予算委員会第1号令和2年11月5日会議録

○委員長(山本順三君)次に、小西洋之君の質疑を行います。小西洋之君。

○小西洋之君
立憲民主・社民の小西洋之でございます。
 菅総理に伺います。
 官房長官時代の雑誌の人生相談のコーナーにおいて、仕事においてアピール力はあくまで付随的なものだというようなお話をおっしゃっておりますが、このアピール力は仕事において付随的なものだ、このお考え、どういうお考えなのか教えていただけますでしょうか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
私の人生相談の中から御質問いただきまして、ありがとうございます。
 付随的なものだということは、やはり仕事が大事なもの、まず最優先することは間違っちゃならないという意味で申し上げたと思います。

○小西洋之君
通告しているんですが、菅総理、付随的というお言葉を菅総理はどういう言葉として認識でいらっしゃいますか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
仕事をすることが一番主のことだということと、そういう意味で書いているんだろうと思っています。

○小西洋之君
仕事が主で、アピール力は付随的なもの、つまり付き従う従属的なもの、そういう意味でしょうか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
それは人によっていろんな考え方があるんでしょうけれども、私自身はやはり仕事が第一であって、アピール力というのはそれに付いてくる、その次だというふうに思っています。

○小西洋之君
今総理がおっしゃった付随的、付随、これ実は学術会議問題の総理の任命の実は本質でございます。(資料提示)
 内閣府の官房長、私、配付している会議録一ページ、昭和五十八年五月十二日、この会議録の中で、総理の任命制が付随的な行為であると述べている箇所を読み上げていただけますか。手塚政府委員がよろしいかと思いますが。

○政府参考人(大塚幸寛君)
お答えをいたします。
 付随的というふうな箇所を読み上げよという御指摘だと理解いたしました。申し上げます。
 当時、説明員の高岡完治君が、これはむしろ先生御指摘のように、そういうところにあるのではございませんで、今回の改正法案は推薦に変える、こういうことでございますので、選挙制から推薦制に変えるというところにこの改正法案の眼目があるわけでございます。内閣総理大臣の発令行為と申しますのは、それに随伴する付随的な行為と、このように私どもは解釈をしているところでございます、ということでございます。

○小西洋之君
済みません、今、手塚政府委員の答弁をお願いしました。

○政府参考人(大塚幸寛君)
失礼いたしました。改めて申し上げさせていただきます。
 当時の手塚政府委員のお答えといたしまして、いささか長うございますので、その付随的な行為のところの周辺を読ませていただきます。
 ただ、今度のような形になりますと、それで読むことはもちろんできませんし、今参事官からも……(発言する者あり)あっ、失礼いたしました。では、申し上げます。
 国家公務員になるかどうかというのが学術会議が最初にできたとき問題になったようでございますが、そのときに、国家公務員である、しかもそれは特別職ということで人事院も判断しているところでございます。その中で、国公法の中で、就任について選挙によることを必要とする職員ということで、この場合にはそのままで言わば特別職になるということで、実際には任命行為を行っていない。ただ、今度のような形になりますと、それで読むことはもちろんできませんし、今参事官からも申しましたように、付随的な行為として形式的な任命を行わざるを得ないということでございます。
 以上でございます。

○小西洋之君
今の答弁のとおり、実は総理の任命制というのは、選挙制から推薦制に変わる、推薦制に変わった者を学術会議、国家公務員特別職の公務員にするためにしようがなくやっていることだということなんですけれども。
 内閣府に聞きますが、任命制を導入した理由、これ以外に理由はありますか。

○政府参考人(大塚幸寛君)
ちょっと今、当時のその記録を正確には承知してございませんが、やはり、的確なその学術会議の会員の推薦母体をできるだけ確保するという趣旨だったというふうに理解をしております。

○小西洋之君
今おっしゃった答弁と、先ほど読んでいただいた総理の任命が付随的なものである、付随的行為である、その論理的な整合性を説明してください。

○政府参考人(大塚幸寛君)
あくまでも推薦に基づいて任命、総理が最終的には任命をするということになったわけでございます。その任命というのは、言ってみれば、推薦された方々を必ずそのまま任命しなければならないということではないという形で、あくまでも総理に任命権が位置付けられたというふうに理解しております。

○小西洋之君
付随的な行為にすぎない任命が主たる行為である推薦を破る、推薦拒否ができるんですか、論理的に説明してください。

○政府参考人(大塚幸寛君)
委員の今のそのお言葉に限らず、当時のもう四十年も前の言葉でございますので、厳密な定義というものがある言葉によっては正直把握し難いものもございます。
 いずれにいたしましても、推薦された方々を必ずそのまま任命しなければならないということではないというのは、任命制が導入されてから一貫した考え方でございます。(発言する者あり)

○委員長(山本順三君)
そうしたら、小西君、もう一度質問をして、それに対して答えをしていただこうと思います。
 小西洋之君。

○小西洋之君
推薦が主、そして任命はしようがなく行う付随的な行為です。なぜ付随的な行為で主たる推薦を破る推薦拒否ができるのか、論理的に説明してください。

○政府参考人(大塚幸寛君)
お答えをいたします。
 法律の条文上、あくまでも推薦に基づいて任命をすることとなっております。もちろん、この任命は、推薦を尊重しつつも最終的には任命権者として総理が判断と責任を有しているということでございます。で、まさしくその任命権につきまして、先ほど来お答えしていますように、憲法第十五条一項に基づいて、推薦された方々を必ずそのまま任命しなければならないということではないという点については、法制局も含めた一貫した政府の考え方でございます。

○小西洋之君
何も答えていないので。
 次、二ページの高岡説明員のこの問題に関する答弁を読み上げてください、官房長。

○政府参考人(大塚幸寛君)
委員御配付の二ページ目を読み上げさせていただきます。
 ただいま御審議いただいております法案の第七条第二項の規定に基づきまして内閣総理大臣が形式的な任命行為を行うということになるわけでございます、しばらく略がございまして、あっ、下でございますか、(発言する者あり)失礼しました。会員は、第二十二条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣がこれを任命する、こういう表現になっておりまして、二百十人の会員が研連から推薦されてまいりまして、それをそのとおり内閣総理大臣が形式的な発令行為を行うというふうにこの条文を私どもは解釈をしているところでございます。(発言する者あり)二ページ目ではなかったでしょうか。あっ、済みません、いただいた資料の方では……(発言する者あり)あっ、失礼いたしました、申し訳ございません。

○委員長(山本順三君)
委員長の確認をしてから。

○政府参考人(大塚幸寛君)
失礼いたしました。申し訳ございません。

○委員長(山本順三君)
いいですか。じゃ、引き続いてどうぞ。

○政府参考人(大塚幸寛君)
私の間違いでございました。失礼いたしました。
 ちょっともう一度、資料を取りに帰らせていただきます。申し訳ございません

○委員長(山本順三君)
大塚幸寛大臣官房長。

○政府参考人(大塚幸寛君)
失礼いたしました。
 こちらの議事録本体の方の二ページということで読み上げさせていただきます。当時の高岡説明員の発言でございます。
 「今回の改正法案のこの制度の改正は、内閣総理大臣の任命制をとるということが目的では毛頭ございません。選挙制を推薦制に変えるというのが今回の改正法案の骨子でございます。先ほども御説明申し上げましたように、推薦制をとるがために国家公務員としての位置づけをされております日本学術会員が、その法的地位を獲得するためには何らかの入口をあけ、中に引き入れるという行為が法律的には必要になってくるわけでございまして、そういう随伴する行為として内閣総理大臣の任命というものを考えたわけでございます。したがって、申し上げるまでもなくそれは形式的任命ということでございまして、これは先ほども総理からお答えになりましたとおりでございます。」。
 以上でございます。

○小西洋之君
菅総理、総理の任命権が推薦に伴う、付き従うだけの付随的なものということを御存じでしたか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
日本学術会議法上、推薦に基づいて任命することになっており、この任命は、推薦を尊重しつつも、学術会議の役割なども踏まえ、任命権者として判断するものと解釈されます。この点、憲法第十五条一項に基づいて、推薦された方々を必ずそのまま任命しなければならないということではないという点については、内閣法制局も含めた政府の一貫した考えであります。

○小西洋之君
総理、今、推薦を尊重しつつもと言ったんですけれども、おっしゃったんですが、尊重じゃないんですよ。尊重するのは当たり前なんですよ、尊重以上なんですよ。主たる推薦に手が出せない、単なる付随的行為だって言っているんですよ。
 なぜ任命拒否が合法になるのか、論理的に説明してください。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
今私が申し上げましたように、憲法第十五条一項に基づいて、推薦された方々を必ずそのまま任命しなければならないということではないという点については、内閣法制局も含めた政府の一貫した考え方であります。(発言する者あり)

○委員長(山本順三君)
それでは、法制局。(発言する者あり)いや、私が指名します。答弁できますか。
 近藤正春内閣法制局長官。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
日本学術会議法の今、審査のときの国会議事録の話で、ちょっと当局、その細かい内容について、どういう趣旨でお答えになっているかというのを存じ上げていないので、ちょっと正確にお答えすることは無理でございます。(発言する者あり)

○委員長(山本順三君)
大塚幸寛内閣府大臣官房長。

○政府参考人(大塚幸寛君)
先ほど来、その当時の五十八年改正の答弁の、その発言の記録を基にしながらおっしゃっておられますので、先ほど、私、その四十年前のあれなので、当時のやり取りであり、必ずしも現時点では把握が難しいと申し上げました。
 例えば、そこでその形式的任命権という言葉が使われておりますが、これは同じく、その当時、昭和四十四年の高辻当時の法制局長官が、一義的に形式任命権ならもう手も足も出ないのじゃないか、実質的任命権なら何でもできるではないかというふうになりがちでございますが、そういう意味では私どもはいずれも誤りであると思っております、といったような御発言もございます。
 要すれば、形式的、形式的任命という言葉、言葉を一つ取っても、必ずしもその定義が明確ではないというふうにも思いますし、ましてや四十年たってございますので、先ほど把握が難しいと申し上げました。
 いずれにいたしましても、法制局からもこれはおっしゃっていただいておりますが、やはり相当程度、国立大学の学長の任命等の議論を通じまして、やはり推薦に基づいた者について全て任命しなければならないというわけではないということは、これは昭和五十八年の改正のときも基本的にはこれを踏襲して、その考えの下に立って立案をされたと、これは法制局からもそういう御答弁をいただいております。私どもも同様でございまして、解釈変更は一切行っていないということを繰り返し申し上げたいと思います。

○小西洋之君
法制局長官が答えられなくて一省庁の官房長が答えるという、戦後の議会の歴史で初めてなんですが。
 今、官房長、よろしいですか、あなたが御紹介した高辻法制局長官の一義的なこの形式的任命ですね、これは教特法の文科大臣の任命制度に関する形式的任命の話ですよね。学術会議法と関係ないですね。それだけ答えてください。

○政府参考人(大塚幸寛君)
元々が、この憲法十五条に基づくいわゆる国民の選定、罷免権、さらには個別法において定められている任命権の話は、元をたどればこの高辻政府委員の御答弁に端を発しているという理解をしておりまして、もちろん、その個別法の部分のところと、それからその上位概念としての共通的な考え方と両方含まれているのは事実だろうと思いますが、私どもは、ここは少なくとも、形式的任命権についての一つの説明、つまり一義的にはなかなか説明が困難であるということを申し上げた部分だというふうに理解をしております。(発言する者あり)

○委員長(山本順三君)
大塚幸寛内閣府大臣官房長。

○政府参考人(大塚幸寛君)
お答えいたします。
 私が先ほど御紹介した高辻政府委員の答弁は、元々、その大学の学長の任命の問題を発端として高辻政府委員が答弁されたものと承知をしております。

○小西洋之君
官僚がこういうめちゃくちゃな答弁、私、かつて菅総務大臣がいらっしゃったときの総務省の官僚、課長補佐をやっておりましたけれども、政治資金課、放送政策課、衛星・放送課、もうどういう部署かは御存じで分かると思いますけれども、私がいた時代には絶対あり得ないような官僚の答弁が安倍政権、菅政権の下で行われています。
 菅総理、菅総理にちゃんと伺います。
 菅総理は、総理の任命権が随伴的なもの、付随的なものだというふうにされている、そのことを御存じでしたか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
私、先ほど申し上げましたように、憲法第十五条の第一項に基づいて、推薦された方々を必ずそのまま任命しなきゃならないということではないという点については、内閣法制局も含めた政府の一貫した考え方である、この考え方に基づいて私は行いました。(発言する者あり)

○委員長(山本順三君)
菅内閣総理大臣。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
私自身はそういう過去の答弁は承知していませんでした。ただ、基本的には尊重はしたいというふうに思います。

○小西洋之君
答弁を知っているかではなくて、あなたの任命権の法的性質を、九月の二十八日に六名の学者の先生方を任命拒否した段階で、あなたの任命権は推薦を破ることができない付随的なものである、そうしたことを御存じでしたか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
私は今、度々申し上げておりますけれども、内閣法制局も含めた政府の一貫した考え方に基づいて答弁しているということです。

○小西洋之君
任命権が付随的なものであるかどうかを知っていたかどうか、九月二十八日、知って任命拒否をしたかを聞いております。四回目です。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
私は法令に基づいて任命をいたしています。

○小西洋之君
この今の高岡答弁は総理の任命権の法令解釈なんですが、なんですけれども、この高岡答弁に基づいて任命に関する行為を行ったということですか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
過去の答弁は尊重はしますけれども、私は法令に基づいて任命をいたしました。

○小西洋之君
じゃ、この過去の答弁、中曽根元総理ですね、政府が行うのは形式的任命にすぎない、総理の任命権は形式的な任命にすぎないというふうに言っています。総理もこれは同じお考えですか。

○政府参考人(大塚幸寛君)
先ほどの五十八年のときの同じ中曽根総理の答弁と承知いたしますが、これも冒頭申しましたように四十年前のことでございまして、その趣旨を今から把握するのは難しいわけでございますが、ただ、当時は選挙制を廃止して新たに各学会から推薦に基づく任命制に移行しようとしており、当時の、この国会答弁にもございますが、その新しい制度によって会員としてふさわしい者が推薦されることになるという期待があったのではないかというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、推薦された方々を必ずそのまま任命しなきゃならないということではないという点については、法制局も含めた一貫した考え方であることを繰り返し申し述べます。

○小西洋之君
官僚に守ってもらわなければ委員会に出れない菅総理の姿をテレビで国民の皆さんしっかりと御認識いただいておりますけれども、重ねて聞きます。
 中曽根元総理の、総理の任命権は形式的な任命に尽きる、それしかない、この答弁、この考えを、菅総理も同じ考えですか、維持していますか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
先ほどと同じ答えになるわけですけれども、この答弁は尊重はしますけれども、私は法令に基づいて対応したということです。

○小西洋之君
じゃ、菅総理は、この中曽根総理の答弁は任命権に関する法令解釈、法令解釈を述べた答弁ではないと考えているんですか。何を述べた答弁だと考えているんですか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
当時の法令の審議の際に中曽根総理が述べたことということは承知していますけれども、私自身は、先ほど来申し上げましたけれども、法令に基づいて任命をさせていただいたということです。

○小西洋之君
中曽根総理の答弁は法令解釈です。学術会議法の改正のときに何十回と同じ答弁をみんなしています。総理の任命権は形式的任命しかないと。
 中曽根総理のこの答弁、法令解釈だというふうにお考えですか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
私が今申し上げたとおりでありまして、内閣法制局も含めた政府の一貫した考え方に基づいて私は答弁しておりますので、是非内閣法制局長官から説明をと思います。

○小西洋之君
総理、ギブアップして法制局長官に助けを求めていましたけれども、大事なことをちゃんと聞かないといけませんので。
 中曽根総理はこれ、形式任命を法令解釈として述べているはずなんです。ところが、菅総理は別の解釈をお持ちなんですね。実質的任命ができる。
 日本国の総理大臣は、後の総理大臣、国会で作った法律と別の解釈をつくって好きなことができる、そういう国なんですか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
私はこの点を含めて先ほど来申し上げていますけれども、憲法第十五条第一項に基づいて、推薦された方々を必ずそのまま任命しなければならないということではないという、この点については内閣法制局も含めた政府の一貫の考え方でありますので、私は任命をさせていただきました。

○小西洋之君
一貫とおっしゃっていますけど、昭和五十八年当時、中曽根総理もそういう法令解釈でいたんですか。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
ただいまの任命制度についての性格についてのお答えでございますけれども、五十八年の日本学術会議法の一部改正法の審議の前でございますけれども、昭和五十八年、日本学術会議法の一部改正法の立案以前から、個別の法律において、ある行政機関における公務員の人事について、当該行政機関の職務の独立性等に鑑みて、何らかの申出や推薦に基づいて任命するものと規定しているとしても、憲法第十五条第一項の規定で明らかにされているところの公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理との調整が必要であるというふうに政府として理解してきたところでございまして、御指摘の昭和五十八年の日本学術会議法の一部改正法案についても、その日本学術会議法七条二項の規定による内閣総理大臣の会員の任命に関して、その任命について国民及び国会に対し責任を負えないという場合であっても推薦のとおりに任命し、ような場合にあっては推薦のとおりに任命しなければならないという義務があると解していたとは考えられませんので、推薦のとおりに必ず任命するという義務があるという考え方に基づいて一連の答弁がされていたとは考え難いというふうに承知しております。

○小西洋之君
今の法制局長官の答弁は、この昭和五十八年の改正以前から、この任命制においては推薦のとおり必ずしも任命する義務があるわけではない、すなわち総理には実質的任命権があるということを言っているんですけど、じゃ、なぜ中曽根総理はこの学術会議法の任命、形式的任命にすぎない、形式しかできないということを答弁しているんですか。論理的に答えてください。中曽根総理は虚偽答弁をしているんですか、法制局長官。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
中曽根総理の御真意というか、そこは必ずしも全て、先ほど内閣府の方からもありましたけれども、そういうことではございますが、私なりに理解をいたしますところによりますと、あくまでも基本は、選挙制度から推薦制に変わり、推薦制がきちっとされてくればそれに基づいて通常は単に任命をしていく、そういう形のものを形式的行為という、任命というふうにおっしゃったというふうに理解しております。通常、基本的には推薦がされればあと任命をただしていくと。それが形式的であって、どうしても国民に責任を負えないような場合までを含んでいるものではないと、一〇〇%ではないという意味での、というふうに私ども理解をしております。(発言する者あり)

○委員長(山本順三君)
小西君に申し上げます。質問者は委員長の指名によって質問をしてください。分かりました。
 じゃ、どうぞ続けて。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
そういう意味では、形式的任命というのも解釈の問題だと思いますけど、その当時の答弁のですね、私どもとしては、憲法と個々の法律に関する解釈の上にのっとって各法律ができておりますから、当時、政府としてそういう解釈をそういう任命制について持っておりましたので、それを当然踏まえた上でお答えになっていると、それを、そういったものを形式的任命と呼ばれたというふうに私どもは理解をしております。

○小西洋之君
総理は先ほどから、憲法十五条に基づいた任命制に関する論理的な考え方、それは五十八年以前の高辻法制局長官のものと言っておられますけど、それは文科大臣の任命制に関する論理ということで間違いないですね。

○政府参考人(大塚幸寛君)
お答えを申し上げます。
 今の点、昨日の予算委員会でも議論になったと記憶をしてございますが、おっしゃるとおり、四十四年の高辻長官の答弁は、これはあくまでも教育公務員特例法という規定についての解釈だということは承知をしております。
 ただ、一方で、そこから示された憲法十五条と個々の任命に関する規定との関係については、これは各法律にまたがる基本的な考え方だということが昨日法制局長官からも御答弁があったと記憶をしておりますし、まさしくその基本的な考え方が今度は個別法の日本学術会議法に落ちて、そこは総理の任命権が明定をされているということであろうと理解しておりますし、そこはあくまでも全て推薦されてきた方々を全て任命しなければならないということではないということは、これも五十八年の任命制導入から終始一貫しているということを繰り返し答弁をさせていただきます。

○小西洋之君
先ほどから、総理、法制局長官などが答弁している文科大臣の任命制には実質的な任命権があると、それが任命に関する基本的な考え方で、それはこの学術会議法も同じなんだと言っているんですが、学術会議法の制定の国会審議において、その文科大臣の任命、実質任命を持つ、その任命権を完全に排除している質疑があるんですね。
 このお配りしている会議録の一ページの上からですけれども、読み上げますが、学術会議の独立性というものが侵されないだろうか、こういう心配を持つものですから、何度も何度も念を押しているわけでございます。そうしますと、今まで行われた二度の国立大の拒否事件、今日文科省にも通告していますが、九州大学と北海道大学で当時文科大臣が任命しないということがあったんですね。二度の国立大の拒否事件が起きないという保証はこの法律の中にどこに含まれていますか。どこのところを読んだら、ああなるほど大丈夫なんだと理解できるんですか。
 続き、高岡答弁、官房長、読み上げていただけますか。

○政府参考人(大塚幸寛君)
読み上げます。
 ただいま御審議いただいております法案の第七条第二項の規定に基づきまして内閣総理大臣が形式的な任命行為を行うということになるわけでございます。こちらでよろしいでしょうか。会員は、第二十二条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣がこれを任命する、こういう表現になっておりまして、二百十人の会員が研連から推薦されてまいりまして、それをそのとおり内閣総理大臣が形式的な発令行為を行うというふうにこの条文を私どもは解釈をしているところでございます。この点につきましては、内閣法制局におきます法律案の審査のときにおきまして十分その点は詰めたところでございます。
 以上でございます。

○小西洋之君
菅総理に伺います。
 この質疑なんですけれども、総理が先ほどからおっしゃる文科大臣の任命制度、この実質的な任命権を持つ、この基本的な考え方に基づいて、そういう考え方によってこの学術会議法の世界でも任命拒否が起きないですかと、それを何度も何度も念押ししている。で、起きないという保証はこの法律のどこにあるのですかというふうに尋ねて、この高岡さんという方が、今まさに御審議している法律の第七条でありますと、この七条はこういう条文なので、総理が形式的な任命を行う、こういう条文として内閣法制局と相談をして法規範として作っているという答弁なんです。分かりますか。
 この質疑があるにもかかわらず、文科大臣の任命制を根拠に学術会議法において任命拒否がなぜできるのか、論理的に説明してください。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
先ほど来私申し上げているとおりでありまして、私どももこれを判断するには、当然法制局の、相談した上でこれを判断をするわけでありますから、私はその上で判断をしたということであります。

○小西洋之君
答えてない。
 文科大臣の任命制の基本的な論理に基づいて学術会議法の任命にも実質的な任命権がある、任命拒否ができるということを言っているんですが、文科大臣のようなことが起きないですね。なぜ起きないんですかというと、この学術会議法の法律の条文、七条二項の法律の条文でそれを排除しているというふうに答弁をしているんです。
 なぜ菅総理の任命拒否が学術会議法七条の二項において合法になるのか、論理的に説明してください。

○政府参考人(大塚幸寛君)
お答え申し上げます。
 先ほども高辻政府委員の答弁を引用いたしましたが、その形式的任命権あるいは実質的任命権というところの定義自体が必ずしも定まっていないというふうに、それは当時の法制局長官の答弁としてそういう実際答弁の記録もございます。
 そして、これは、発端は確かにおっしゃるとおり国立大学の学長の法律を発端にした議論でございますが、そこから導かれる憲法十五条の公務員の選定、罷免権、さらには個別法に基づく個々の任命権者による任命権については、これはこの当時の昭和四十四年の考え方がそのまま生きて個別法に反映されているというふうに理解をしております。(発言する者あり)

○委員長(山本順三君)
静粛に願います。

○小西洋之君
総理、三回目です。官僚の、詭弁を官僚に強いるのではなくて、総理が自らちゃんと答えてください。
 文科大臣の任命制を根拠に、学術会議法でも実質的な任命、つまり任命拒否ができるということだけを総理はおっしゃっているんです。ところが、学術会議法を作るときに、文科大臣の任命拒否のようなことが起きませんかという質問に対して、起きない根拠として、絶対起きない条文を作っています、法制局とも詰めていますという答弁をしているわけです。
 なぜ菅総理の任命拒否は合法になるのか、論理的にカメラの向こうの、テレビの向こうの国民に説明をしてください。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
先ほど来度々申し上げていますけれども、私ども、判断をするについて法制局に相談をし、法制局の了解の下に行っていることであります。

○小西洋之君
法制局の責任だということですか。自分は自分の行政行為に対して、任命拒否に対して責任を負わないということですか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
そこは、私ども判断するとき、法制局に確認をした上で判断をしています。

○小西洋之君
ちょっと官房長がどうしても答弁出たがるので、三ページ目ですね、この配付資料の三ページ目の答弁、質疑、質問と答弁を読み上げてもらえますか。

○政府参考人(大塚幸寛君)
こちらの三ページでよろしいでしょうか。はい、失礼いたしました。
 説明員高岡完治君の御答弁を読み上げます。
 そういうことではございませんで、この条文の読み方といたしまして、(発言する者あり)あっ、質問と答弁、はい、失礼いたしました。
 まず、質問の粕谷議員でございます。たった一人の国立大学の学長とは違う、セットで二百十人だから、そのうちの一人はいけませんとか、二人はいけませんというようなことはないという説明になるのですか。セットで二百十人全部を任命するということになるのですか。
 高岡完治君の答弁でございますが、そういうことではございませんで、この条文の読み方といたしまして、推薦に基づいて、ぎりぎりした法解釈論として申し上げれば、その文言を解釈をすれば、その中身が二百人であれ、あるいは一人であれ、形式的な任命行為になると、こういうことでございます。
 よろしいでしょうか。

○小西洋之君
総理、法解釈で任命拒否は絶対にできないですかと問われて、そういう条文を法制局と作りましたというふうに当時の高岡政府委員は答弁しています。
 なぜ総理の任命拒否が合法になるのか、説明してください。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
先ほども御答弁申し上げました、憲法十五条と各法律における任命権者の任命についての基本的な考え方ということを御説明いたしましたけれども、昭和三十年に内閣府の方から御相談があったときに、過去の経緯も拝見しつつ、その従来から政府が取っております基本的な考え方、国民に責任を負えない場合まで任命する必要はなく、任命を拒否することができる場合があるという考え方についてはそのときに再度確認をして、また、そういった基本的な枠組みに基づいて、今回、総理の方は個別の案件について御判断をされたということだと思います。

○小西洋之君
じゃ、法制局長官、総理を守るためにめちゃくちゃな詭弁ばっかりおっしゃっていますけれども、この会議録の資料の十五ページ目の、高辻法制局長官、先ほどからの、高辻法制局長官のこの寄稿文の下線を引いた部分を読み上げてもらえますか。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
内閣法制局の使命は、内閣が法律的な過誤を犯すことなく、その施策を円滑に遂行することができるようにするという、その一点にある。そうである以上、同局の法律上の意見の開陳は、法律的良心によりこれなりと信ずるところに従ってすべきであって、時の内閣の政策的意図に盲従し、何が政府にとって好都合であるかという利害の見地に立ってその場をしのぐというような無節操な態度ですべきではない。

○小西洋之君
先ほどからのあなたの答弁は、高辻法制局長官が絶対あってはならないと言っていた、内閣の政策的意図に盲従し、政府にとって好都合であるかという利害の見地に立った答弁ではありませんか。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
先ほども御答弁申し上げましたけれども、今回の考え方は、平成三十年に、何も世の中起こっていないところで、平時のところできちっと御相談があって、そのときにみんなで議論をし、考えた上で、ああいう結論について了解をしたわけでございまして、何もその、今回のことがあるからどうこうではなくて、元々そういう考えで整理をしていたということを申し上げておりまして、先ほどの読ませていただいた文章に別に恥じるところは全くございません。

○小西洋之君
昭和三十七年につくった解釈をこの五十八年では採用しない、文科大臣のような任命拒否が絶対に起きない、そういう条文を作った、あなたの下の法制局とその点は詰めた、そして、任命拒否が絶対に起きませんか、法解釈では大丈夫ですかという問いに対しても、法制局としっかりそこを詰めていますというふうに言っているんです。
 にもかかわらず、なぜ菅総理の任命拒否が合法になるのか。内閣法制局長官の存在に懸けて答弁してください。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
平成三十年に御相談を得たときに、かつての答弁でありますとかそういったものも含めて、資料、高辻長官時代の答弁も再度確認をしながら、当時の審査録も見ながら確認をいたしました。
 当時の審査録について、仮に高辻長官が、当時、あるいは元々、昭和三十八年に文科大臣、文部大臣が当時御発言されたりし、その後、高辻長官、昭和四十四年のときにもう一度御説明をされました、その先ほど申しました憲法第十五条第一項と個々の法律における任命権者の任命についての責任の関係についての考え方について、仮に当時変えた形で解釈をしていくということであれば、当然それについての、解釈変更についての紙が当然整理されているというふうに私どもは理解いたしましたから、それについては全く何もございません。
 また、条文の審査の中に、学術会議法の条文の審査の上に、教育公務員特例法十条というのが用例として書いてもございますし、そういうものを見ながら当然条文を作って、同じ世界の中をある程度同じような条文作っていったというふうに私どもは理解しております。

○小西洋之君
じゃ、一言。
 任命拒否ができないのか、絶対に任命拒否はありませんねという質問に対して、なぜできる場合がある、そうした答弁をしていないんですか。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
ちょっと御質問の趣旨が、当時ということでございますか。
 それは先ほども申し上げましたように、多分、選挙制から任命制に変わって、通常、きちんと推薦をされてくればそのまま任命をしていくという世界を前提に、当然、そういう通常の運用、これまでも多分、学術会議についてはそういう歴史をずっと通ってきておられると思いますけれども、その元々尊重義務があって、それを尊重しながら任命をしていく。ちゃんと学術会議側からきちっとした人が推薦されれば当然そういうことになる、そういうことを当然前提に御説明をされたんだというふうに私ども思います。

○小西洋之君
総理に、総理に伺います。よろしいですか。
 先ほどから、学術会議法の世界で総理による任命拒否は絶対に起きない、そういう法解釈で絶対に大丈夫だという質問に対して、大丈夫でございます、法制局との審査でも十分その点は詰めたという答弁を繰り返ししています。
 なぜ、この昭和五十八年当時に、いや、違いますと、文科大臣の任命制と同じく、任命拒否、実質的な任命権を総理が持っておりますという答弁をしなかったんでしょうか。

○政府参考人(大塚幸寛君)
繰り返しになる部分もございますが、まさしく、一つは、その昭和四十年、あっ、失礼、四十年前のその答弁のやり取り、あるいはその背景にあったその問題の認識なりを今正確に把握することは難しいということは、これは是非御理解をいただきたいと思います。
 ただ、その中で、その当時の選挙制から推薦制に至る中でのその制度の変更による様々な期待感、そうした中でのやり取りではないかというふうにも考えられますし、ただ一方で、いずれにいたしましても、憲法第十五条一項に基づく国民の選定権とそれに基づく個別法の任命権の考え方、これは繰り返しになりますが、当時から一貫して維持されているところでございます。(発言する者あり)

○委員長(山本順三君)
大塚幸寛内閣府大臣官房長。

○政府参考人(大塚幸寛君)
分かりやすくとございました。
 一部繰り返しは御容赦いただきたいと思いますが、まず、その御指摘の答弁が約四十年前のことであること、先ほど来申しましたその形式的任命という言葉が繰り返し出されておりますが、先ほど、その高辻長官の答弁でも、必ずしもその形式、実質というところの定義も定まっていないというふうな御答弁があったと理解しております。
 ただ、そういう中で、あくまでも推薦された方々を必ずそのまま任命しなければならないということではないということは、これは、まあ繰り返しになりますが、あくまでも、当時から法制局も含めた一貫した考え方であるということは、これはもう繰り返し述べさせていただきたいと思いますし、その意味において、全く解釈を変更していない、当時から一貫しているということをまた重ねて申し上げたいと思います。

○小西洋之君
一点、今聞きますけれども、高辻長官の答弁で、形式か実質か意味が定まっていないというのは、文科大臣の任命制についての話じゃないんですか。
 資料の十一ページにその会議録を付けていますから、説明してください。

○政府参考人(大塚幸寛君)
お答えを申し上げます。
 それから、その中身でございますが、大学の自治、これは無論言うまでもなく極めて重要な問題でありますが、ただいま御指摘になりましたように形式的な任命権あるいは実質的な任命権というような言葉で言いますと、非常に一義的に形式的任命権ならもう手も足も出ないのじゃないか、実質的任命権なら何でもできるのではないかというふうになりがちでございますが、そういう意味では私どもはいずれも誤りであると思っております。
 これでよろしいでしょうか。

○小西洋之君
これ、文科大臣の任命制の話なんですね。学術会議の任命制は形式的任命に尽きると国会で何回も何回も答弁して立法されているんですよ。
 この国会で、形式的任命権しかない、実質的任命権はない、任命拒否はできないというふうに国会で議決された法律の下で、総理、任命拒否をやることが合法なんですか。説明してください。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
私ども責任を持ってこれ行うわけでありますから、当然、法制局に確認した上で私は発言をいたしておりますから、法に基づいて行っている、こういうことであります。

○小西洋之君
これは国会の立法権の否定そのものなんですね。
 総理、じゃ、伺いますけれども、我が国の、いいですか、法令解釈は、運用の期待感を込めて行うことは許されるんですか。法制局長官はそういう答弁していますよ。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
先ほどのお尋ねで、当時の議事録の解釈をということで私なりの解釈でということを申し上げたんですけど、法律論としては、先ほど申し上げたとおり、おおよそ一〇〇%任命しなけりゃいけないのではなく、あくまでも、(発言する者あり)その形式的任命という用語が、多分、その本来の意味での法律用語ではございませんので、その高辻長官もその全部がというのは、何というんでしょうか、かなり粗い言い方で形式的任命だとか実質的任命だとか言うんですけれども、実際問題としては完全に一〇〇でどうこうということではなくて、ある程度一部今回も拒否できるところを含めて形式的任命とおっしゃっているというふうに私どもは理解しております。

○小西洋之君
この高岡答弁で、ぎりぎりとした法解釈で一人残らず形式的任命ですというふうに述べております。にもかかわらず、なぜ粗い形式的任命になるんですか、法制局長官。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
先ほども申し上げました、当時の審査録も拝見しましたけど、そこ、先ほど申しましたような資料が何も五十八年の審査録になくて、むしろ他の、類似の、(発言する者あり)私ども、法制局でございまして、審査の内容をしっかり見ておりますので、(発言する者あり)ということで、私どもは、やっぱり法制局としては審査録をしっかり基に法律解釈をいたしますので、それについて、私どもの解釈としては、まさしくそういった他の用例と類似のものとしてその条文を書いておりますので、類似の解釈がある程度適用されていくということを考えております。

○小西洋之君
全く何も答えていません。
 菅総理、よろしいですか。我が国は、法解釈は四十年たったら会議録から読み取れなくなるんですか。法律の法解釈は四十年たったら会議録から読み取れなくなる、そういう国なんですか、我が国は。

○政府参考人(大塚幸寛君)
繰り返し申し上げますが、当時使われた用語によりましては、それは法令用語であれば例えば解釈が定まっているものもございますし、ただ、やり取りの中の用語が全て法令用語で定義が確定しているものでもないと思っておりますし、少なくともその形式的云々につきましては、四十年たった現在において、当時厳密にどういう言葉で使われたのか定かではないということを申し上げております。
 なお、先ほど委員から、運用の期待を前提にしたような答弁になっているのかといったような趣旨で、なっておりましたが、ただ一方で、当時の議事録を拝見しますと、学協会は今度は責任を持って一番ふさわしいという方を出し、それを広く二百十名の構成の中で、こういう方がいいんじゃないかと、そういう話合いで出てくることを期待しているわけでございますという形で、やはり一定の期待に基づいたやり取りがされているものと、こういったやり取りからも考えた次第でございます。

○小西洋之君
今のは学術会議の中の選考の話じゃないですか。選考の後、推薦された人は総理は任命拒否できない、そういう話をしているんですね。よろしいですか。
 先ほどから、この高岡さんという方の名前が出ていますね。法制局とも十分詰めたというふうにおっしゃっていますけれども、内閣府、この高岡さんってどういう方ですか。

○政府参考人(大塚幸寛君)
お答えをいたします。
 高岡完治、当時のこの法案の担当説明員でございますが、当時、内閣総理大臣官房参事官の職にございまして、その後、日本学術会議の事務局長、あるいは国立公文書館長等を歴任された方であると承知しております。

○小西洋之君
先ほどから菅総理が言っている、自分の任命拒否は合法である、これ実は天動説なんですよ。菅総理の任命拒否は違法である、これが地動説なんですよ。天動説対地動説の闘いなんです。ただ、これは科学をもって立証しないとしようがないので、今からそれを立証させていただきたいと思います。次のパネルをよろしいですか。
 この高岡さんが法制局と詰めたという証拠が国立公文書館に残っています。この二冊の黒い本、この二冊、これは、当時、学術会議法を内閣法制局の参事官、課長が審査して長官まで上げているわけですけれども、その審査記録が残っています。
 次のフリップを出してください。
 次のフリップなんですけれども、法制局の審査ですから、法律の条文を持ち込んで審査をするわけでございます。高岡さんのこの名前が載っていますね。国会で答弁している高岡さんは、内閣法制局でまさに法案審査を法制局の担当参事官から受けた人そのものなわけでございます。
 じゃ、この高岡さんがどういう条文案を内閣法制局の審査で持ち込んだのか。持ち込んだ日付が、これ三月の二十五日と書いてあります。高岡さんとほか一名でいらっしゃいましたという当時の法制局参事官のメモがあります。
 じゃ、高岡さんがこの条文審査が始まった三月の二十五日に持ち込んだ条文ですけれども、御覧いただけますか。次のフリップですね。総理の任命に関する条文ですけど、今は七条ですけれども、審査は第十九条にその任命制度を入れることを初め意図いたしました。赤い線を引いているところだけ御覧ください。
 内閣総理大臣は、会員推薦管理会、これは学術会議がつくる組織ですけれども、内閣総理大臣は、会員推薦管理会が選出した者を会員に任命する。後に推薦という言葉に変わるんですけれども、内閣総理大臣は、Aという団体ですね、会員推薦管理会が選出した者を会員に任命する。で、横は足りない人が出たときの条文ですけれども、内閣総理大臣は、前項の規定による選出の際にあらかじめ決定された者を会員に任命する。
 つまり、義務教育を受けた日本国民の皆さんだったら誰でも、この条文、選出した者を任命するという条文ですので、もうつまり一〇〇%のこれ形式的任命、つまり任命拒否は絶対できないという条文で審査が始まっているわけでございます。
 次のフリップ、よろしいですか。
 こうした条文なんですけれども、内閣法制局、調べてもらっているので答弁してもらえますか。こうした構造の条文、そして今の現条文、そしてこの条文が両方出されている審査の日付を答弁してください。

○政府参考人(木村陽一君)
当時の法律案の審議録からお尋ねのその正確な日付を確定するというのはなかなか困難なところはございますが、その審議録の資料中に記されたメモ書きも含めて見てみますと、お尋ねの条文構造、選出あるいは推薦でございますが、した者を会員に任命するという形のものが審査資料として提出されましたのは昭和五十八年三月二十五日ではないかと。で、現在の条文に至る案、推薦に基づいて内閣総理大臣がこれを任命するというものが提出されましたのは昭和五十八年の四月九日ではないか。ただ、それよりも少し前から別案として考えていた形跡もあるようでございます。
 そのように推察をしたところでございます。

○小西洋之君
推薦した者を任命するという一〇〇%の形式的任命しか日本語として読めない、そういう条文案が出された日にちを全部述べてもらえますか。三月二十五に始まって、次は何ですか、その次は。

○政府参考人(木村陽一君)
推薦した者を任命するという形で日付が読み取れますのは、三月二十五日、それから、済みません、完全に網羅的に申し上げるのが難しゅうございますが、四月の五日、それから、これは済みません、日付が、済みません、分かりません。四月五日、四月五日がございます。それから、四月六日、四月七日の十時でございますかね。それから、これは、最後、済みません、ちょっと網羅的に、網羅的に説明せよという、済みません、趣旨で受け止めておりませんでしたので、申し訳ございませんが、最終的に現在の案につながるものが出たのが四月九日ということかと思います。

○小西洋之君
与野党の理事にも確認いただきましたが、きちんと通告しております。
 私の調査ですけれども、推薦した者を任命するという一〇〇%形式任命しか読めない条文ですけれども、三月二十五日、四月の四日、四月の五日に出されております。
 ただ、その後、今の条文が出てくるんですね。両案を審査していくわけでございます。で、両案が四月の七日、四月の八日に出されて、そして、法制局が言ったように四月の九日に今の案になったわけでございます。
 ここでこのフリップを御覧いただきたいんですが、四月九日、最終、今の案になる前の条文案、基づき任命するになる前の四月八日の法制局審査に出された資料でございます。
 テレビの皆様から御覧いただいて右側、内閣総理大臣は、会員推薦管理会が推薦した者を会員に任命する、一〇〇%の形式任命の条文でございます。これと全く同じ別案としてですね、七条、十九条の別案として、今の七条ですね、会員は、第十九条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する、今の案が作られているわけでございます。
 菅総理に伺います。
 内閣法制局において、同じ日の同じ審査において別案として二つの条文が出されています。一つは、日本語として一〇〇%形式任命しか読めない、推薦した者を任命するという条文です。そしてもう一つは、今の推薦に基づいて任命するという条文でございます。
 であるならば、今の推薦に基づいて任命するという条文は、一〇〇%の形式的任命の条文としか法的に読めない、そういうふうになるわけではございませんか。

○政府参考人(大塚幸寛君)
お答えをいたします。
 今委員から、るるその昭和五十八の改正当時のその審査の過程についての御説明があったと理解しておりますが、それは一般論で申し上げても、いろいろ法案を検討する過程では様々な案が検討されるというのは、それはあり得るんだろうと思っております。
 ただ、間違いないのは、そうしたいろんな検討を経ましても、最終的には推薦に基づく任命制というものが制定されたわけでございまして、その任命権は総理にあり、その任命権につきましては、これも繰り返しになりますが、あくまでもその推薦のとおりに任命しなければならないというわけではないという考え方に最終的に至ったということを重ねて申し上げたいと思います。あくまでも結論は今申し上げたところが結論でございます。(発言する者あり)

○政府特別補佐人(近藤正春君)
今、審査録の途中に持ち込まれる、内閣府から持ち込まれたいろんな案の経緯について先生から御紹介ありましたけれども、そういう意味では、内閣府の方はどうしてこういうものを提出してきたのかということについて御承知だと思いますので、内閣府の方からお答えをさせていただきたいと思います。

○政府参考人(大塚幸寛君)
まさしく、その法律の改正の検討の過程で様々な御議論があったことの一つのそのうかがわせる材料なんだろうというふうに考えております。
 ただ、あくまでも、結果としては任命制が導入をされ、ただ、推薦に基づく任命権が総理に付与されたということでございます。

○小西洋之君
じゃ、内閣府の官房長は、このパネルですけれども、内閣法制局に内閣府の高岡参事官が、実質的な任命権を持つ制度、その条文と、形式的任命一〇〇%の制度、その条文を両方持ち込んで審査を受けているというふうにお考えなんですか。

○政府参考人(大塚幸寛君)
例えば、その推薦された者を任命するということも厳密なその意味合いというものが正直分かりかねるところもございます。
 いずれにいたしましても、四十年以上前の、四十年ぐらい前のかなり古い資料でございますので、いかにせよ、その今お示しいただいた文言だけからどうしてもうかがい知るしかないわけでございますが、ただ、間違いなく、いろいろな当時議論、検討がされたのであろうということはそれは間違いないんだろうと思っております。

○小西洋之君
内閣法制局長官、内閣法制局が審査する、当時の参事官が後世に残す、法解釈をきちんと残すために作っている文書ですけれども、推薦した者を任命する、私は一〇〇%の形式的任命しか読めないと思いますが、そういう条文を同じ意味として、推薦に基づいて任命する、こういう条文で書くこともできるんじゃないのか。一〇〇%の形式的任命の条文の作る、その審査であるという理解でよろしいですか。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
正直に申し上げれば、なぜそういう案が持ち込まれたり、どういう背景でということは必ずしもよく分かりません。
 ただ、今先生がおっしゃったように、一〇〇%だというと法制的にはあり得ない条文でして、だから例がないんでございまして、その、を任命するということは、もう任命する行為が一切ないわけですから、それはあくまでも儀礼的なものしかないんで、その場合には、決定し、届けると書くんです、法制的にはですね。それは、許可が要らないのにわざわざ、許可制度で全部許可ではなくて、そのときは届出と私ども書きますので、法制的には、全く権限のない規定を書くというのはあり得ないので、そういう意味では用例がないのは当たり前でして、当然、基づいてというのが当時のこういう推薦を前提とした規定の書き方であり、当然、任命権というものをきちっと立たさせて条文を書く、これが法制的に正しいので、正しいところに最後落ち着いたというふうに私ども理解しております。

○小西洋之君
法制局長官は、この二つの条文案が実質的任命権を有する、実質的任命権を法的に許容する条文案だとお考えですか。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
実質的任命権というのは、ちょっと私どもどういう意味でお使いか分かりませんけれども、いわゆる普通の任命というのは、自由な裁量の中で適材適所にいろんな方を任命していくというのは通常言う実質的な任命でございまして、ここの場合にはかなり制限をされておりまして、それが、基づいての推薦によってかなり制約をされて、およそ自由にはできないけれども、限られた中で裁定的拒否ができる形によって任命権というものを完遂していくという形の書き方がこのまさしく基づいて系の条文でございまして、まさしくそういう意味においてはほとんどそのとおり任命をしていくわけですけれども……(発言する者あり)二つの条文ですか。
 二つの条文については、ちょっと分かりませんが、をについての方については用例もなく、私ども書くような条文でないので、普通ですね、分かりませんが、に基づいてというのは、まさしくそういうことがある程度確立された書き方の条文でございますので、まさしくそこに、最終的な審査として適正なところには落ち着いたというふうに私ども思っております。

○小西洋之君
法制局長官の答弁は、半分正しくて半分でたらめなんですね。
 この推薦した者を会員に任命する、一〇〇%もうこの形式任命、任命拒否なんか絶対できないという条文と、この推薦に基づいて任命するという条文、これは同じ意味、同じときに別案として審査されているわけですから同じ意味であるに決まっているわけですが、最終的になぜ基づいて任命するという条文になったか、ちゃんと記録が残っています。次のパネルをお願いいたします。
 この同じ日の、あっ、翌日ですね、最終的に今の案になったときの四月九日の審査記録でございますけれども、先ほどから法制局長官も言っていましたけれども、法制局参事官の字で「を任命」の例なし。推薦した者を任命するという条文が我が国にないんですね。だけど、法制局、私も官僚なんで経験あるんですけど、そういうのを嫌うんですね。だったら、基づいて任命するでいいじゃないかということになったわけです。
 で、その証拠がちゃんと国会の会議録に残っております。高岡さんの上司の何度も答弁している手塚さんですけれども、私どもは全くの形式的任命というふうに考えており、法令上もしたがってこれは形式的ですよというような規定、さっきの、を任命するという条文ですけれども、そういう条文というのはほかに例がないんだけれども、もうそういう条文を書く必要がないと、推薦した者を任命するという条文は書く必要がないというふうに判断して、法制局のそういう審査を受けて現在の法案になっているわけでございますということを言っているわけでございます。
 先ほど、法制局長官が教特法という、文科大臣の任命制度の条文を、記録があるというのは、まさに小さな四角で囲ってあるところですけれども、これほかに裁判所法などの条文の名前が書いているんですけれども、これは、出してきた者を任命するといった条文の例、それなんかを一緒に眺めていて、ただ、いずれにしても、初めから、推薦した者を任命する、任命拒否は絶対的に、絶対できない、そういう条文を作ろうという審査をやっていたわけでございます。
 菅総理、もう法制局長官に頼るんじゃなくて、これだけの確実な、明らかな記録が残っていて、今なお、あなたが任命拒否を行ったその学術会議法の七条、これは任命拒否ができる条文だというふうにお考えでしょうか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
これ、度々申し上げていますけれども、私ども、判断するときは法制局長官と相談をして決め、確認をして決めます。それはそのとおりで私どもは行ってきています。

○小西洋之君
法制局長官の責任にするんじゃなくて、自分の政治家としての判断を述べてください。自分の判断を述べてください。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
私は、現行法の中で物事を判断をしていきたいと思っていますので、必ず確認した上で判断をしています。

○小西洋之君
現行法の解釈を証明する、実質的任命権はゼロである、形式的任命しかない、そういう権利しか総理の任命権にはないというこの法案、条文を作る過程のこの資料を見てもなお、自分は学術会議会員の任命拒否が合法である、そういうふうにお考えですか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
私は、これを判断するについて、内閣府なり法制局なりにそういう説明を受けた中で判断をしています。

○小西洋之君
天動説を一生懸命主張しているんですけど。
 では、なぜこういう条文が、形式的任命しかできない条文が持ち込まれたのか、審査の中で。実はその立法経緯がきちんと記録で残っております。
 内閣府、この五十八年当時、当時の学術会議会長が国会で答弁をされているんですけれども、この任命権についてですね、どういう答弁されていますか。

○政府参考人(福井仁史君)
参考人で当時の学術会議会長、久保亮五がこのように発言しております。(発言する者あり)はい、昭和五十八年の五月十日でございます。
 「学術会議の会員が総理大臣任命になって、これが審議会のようなものになるであろうという御発言でございましたが、それに対してお答えすべきかどうかはよくわかりませんけれども、総理大臣が任命されることは、そういう法案でございます。しかしながら、これはここにあるような選出制度によって選出された会員が形式的に総理大臣によって任命されるということで、実質的任命制を意味しないものだと私は理解しております。その意味において、これは総理大臣の実質的任命ではない。」。
 ここまででよろしいでしょうか。

○小西洋之君
総理、当時、法改正のとき、学術会議の会長が参考人で国会に来ているんですね。学術会議の会長は、七条の任命制度について形式的任命であると、実質的な任命権はないという答弁をしているんですよ。
 総理が一貫しておっしゃっている任命拒否ができるという解釈、実質的任命があるという解釈は五十八年以前からあったというお考えは、日本学術会議の会長、日本学術会議をだましている、そういうお考えでないですか。

○政府参考人(大塚幸寛君)
お答えを申し上げます。
 やはり、四十年前のことですので、一部、ではないかという部分がございますが、当時、やはりその形式、実質ということが、その定義が必ずしもきちんと定まらないままそういったやり取りがされていた、それは先ほどの高辻長官の御発言でもそこは明らかなんだろうと思っております。
 そういう中で、ただ、一つ間違いなく申し上げられますのは、憲法の第十五条に基づく公務員の選定権、そこによって立つところの学術会議法七条の推薦に基づく任命権、これは確たるものとして間違いなく当時の改正法案の中に存在し、それを前提に成立をしたということだろうというふうに理解をしております。

○小西洋之君
菅総理、昭和五十八年、法律を作ったときに学術会議会長が形式的任命制度だというふうに、国会で、理解していると答弁している。それを今になって実質的な任命だといって会員を任命拒否するのは、学術会議会長、学術会議、そして国会をだます行為じゃないですか。

○内閣総理大臣(菅義偉君)
全くそんなことではないと思います。
 私どもは、先ほど来度々申し上げていますけれども、内閣法制局に確認の上で判断をいたしています。

○小西洋之君
じゃ、学術会議会長がなぜこういう答弁をしているのか。この会議録の八ページですね、官房長、答弁大好きな官房長、読み上げていただけますか、八ページ。

○委員長(山本順三君)
ちょっと、理事、集まってください。
 それでは、大塚幸寛内閣府大臣官房長。

○政府参考人(大塚幸寛君)
議事録の八ページ、手塚政府委員の御答弁の部分かと理解いたしました。下線部の部分を読み上げます。
 今度の改正法案を考えるに当たって、私ども全く空から出発しておるわけじゃありません。自主改革要綱、これも随分やはり年数を掛けて検討されたものでございまして、選出方法以外の点はほとんど取り入れているわけでございます。それから選出方法についても、こちらの総務長官試案を検討していただきたいのに対して、かなり分析した報告書を出していただいて、言わばこの範囲内で私ども積み上げていったわけでございます。
 以上でございます。

○小西洋之君
実は、総理府と学術会議は、当時、相談しながら条文を作って内閣法制局に出していたんですね。
 官房長、今おっしゃっていただいた会議録の中の自主改革要綱、総務長官試案、そして分析した報告書、それぞれについて、総理の任命権についてどういう記述があるかを答弁してください。

○政府参考人(大塚幸寛君)
お答えを申し上げます。
 自主改革要綱、これは日本学術会議改革要綱を指しておられると理解いたしました。昭和五十七年十二月の学術会議による成果文書でございますが、会員の選出制度は有権者の直接選挙によることを原則とする、ただし、定数のおよそ三分の一について推薦制を採用するとされております。
 取りあえず以上で……(発言する者あり)任命について、はい。それから、こちらは総務庁長官試案の方では……(発言する者あり)要綱、はい。
 それから、その学術会議に関する懇談会でのその言わば学術会議の改革についての中で、その選出制度について、その学者の代表機関としては選挙制を維持しながらも推薦制を加味して選挙制の欠陥を改善する案、全面的に推薦制とする案、学会単位で推薦又は選挙された候補者の中から適切な方法で選出する案が示されているということでございます。
 そして、さらに、その同月の総務長官試案では、会員の選出方法として、科学者が自主的に会員を選出することを基本とし、学会を基礎に選出した者を会員として推薦し、その者を会員とすることが適当と考えるとされているところでございます。
 以上でございます。

○小西洋之君
分析した報告書が抜けています。

○委員長(山本順三君)
これ、小西君に申し上げますけれども、これ、どこを読んでいいか分からない場面が多々あります。御自身で読むのならいいけれども、これで質問にするというのはいかがなものと思いますので、質問を続けてください。

○小西洋之君
答弁の中の分析した報告書の中の任命に関する記述を読み上げてください。

○政府参考人(福井仁史君)
済みません、恐らくこのことかと思います。
 「総務長官試案」にもとづく学・協会推薦制の検討結果についてということで、日本学術会議の方で整理したものだと思いますが、その報告の七ページの方で、学協会推薦制が科学者の自主的選出の一つの形態である以上、会員選出の過程において、自主的に選出された科学者以外の意見や判断が入り込まないような制度的配慮が必要である。選挙の場合には、立候補制であるから任命を必要としないが、学協会推薦制の場合には任命行為が必要となる。本会議が政府から独立した国の機関として存続する以上は、この任命が政府によって実質的に左右されることがあってはならないから、国立大学における教員や学長の任命におけるごとく、任命権をあくまで形式的任命権にとどめておかなくてはならない。もし学協会推薦制に基づいて新しい法令を作るとするならば、実質的任命権にならない、ならないような法令上の根拠を明確にしておくことが不可欠である。これが可能かどうかの検討も極めて重要な問題である。
 この記述でございましょうか。

○小西洋之君
今読み上げのとおり、学術会議と総理府が合意しながら形式的任命の制度を作るというふうに法案を作っていたわけでございます。
 法制局長官、法令解釈のルールを述べて、こうした立案の背景などを当てはめて、なぜ任命拒否は合法になるのか、説明してください。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
先ほど審査録のところで御答弁いたしましたが、最終的な条文としては、やはり審査録でどういう条文を書いたかというところに決まりますので、過程はあるかもしれませんけれども、最終的にその条文にしたということは、その条文に対しての解釈が生じるということだと私は思います。
 したがって、仮にその過程とずれているのであれば、違う条文が……(発言する者あり)

○委員長(山本順三君)
委員長の指名をもって質問してください。これも何度も申し上げております。あなたは私の指名をもって質問するんです。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
済みません、法令解釈の考え方でございますか。済みません、ちょっと勘違いをいたしました。(発言する者あり)

○委員長(山本順三君)
ルールは守りましょうね。ルールはね。ちゃんと指名してからです。
 ちょっと待ってください。
 内閣法制局長官近藤正春君。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
歴代政府が答弁をしております法令の解釈の考え方についてでございますけれども、一般論として、これまで法令の解釈については、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるものであり、政府による法令の解釈は、このような考え方に基づき、それぞれ論理的な追求の結果として示されたものであって、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、このような考え方を離れて政府が自由に法令の解釈を変更することができるという性質のものでないと考えてきている。
 もっとも、このようなことを前提に検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないと考えてきている。(発言する者あり)

○委員長(山本順三君)
同じようなパターンを脱却してください。

○小西洋之君
答弁漏れですが、先ほどのような立案の背景などの要素を当てはめてなぜ任命拒否が合法になるのか、法制局長官、説明してください、法令解釈のルールに照らして。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
内閣総理大臣に日本学術会議法第十七条の推薦のとおりに必ず任命する義務があるとまでは言えないという同法第七条二項の解釈についてでございますけれども、同項、まず、同項の文言からしても内閣総理大臣が推薦のとおりに任命しないことが許されないとは言えないことを踏まえるとともに、昭和五十八年の日本学術会議法の一部改正法案の審議以前からの基本となる考え方、すなわち、申出や推薦等に基づく公務員の任命であっても、憲法第十五条第一項の規定で明らかにされているところの公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理からすれば、国民に対して責任を負えない場合には任命権者は任命を拒否できるという考え方を維持した上で行っているものであり、法令の解釈に関する政府の考え方にものっとったものであるというふうに考えております。

○小西洋之君
今の答弁の中で、立案者の意図、立案の背景、具体的な根拠をもって教えてください。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
立案者の意図、立案の背景となる、まさしく先ほど、選挙制から任命制という形で、選挙制がいろいろ問題が生じていて、それを変えるために新しい任命制度に変えていく、いろんな部会による推薦に基づいてそういうことをしていくというのがまさしく立法の意図でございまして、それに基づいて個々の条文が全体として書かれたということでございますので、この条文、個々の、七条二項についてはもうかなり明確な条文でございますので、その条文限りである程度解釈は先ほど申し上げたような論理によってできるというふうに私どもは考えております。

○小西洋之君
立案者の意図や立案の背景というのは、今回のような政治介入がこの学術会議の任命制度で起きないように、そういうことを学術会議も総理府も、そして法制局も、みんな考えて作った条文です。
 菅総理の任命拒否は違法でないですか。

○政府特別補佐人(近藤正春君)
この条文はまさしくその基づいてという方式で、基本的には任命、推薦する側に主体があって、そのとおりにやっていくというのがまさしく政治的介入を防ぐという、今の制度の中における最も自主性を重んじた書き方の用例でございまして、先ほどの拒否をできる場合というのは、やっぱり憲法との関係でどうしてもそこは、任命権の実態を少し持つというところは、それはもう今の法制上どうしてもある話でございまして、そういう意味では、それをなくすものであれば任命制をやめるしかないというふうに思います。

○小西洋之君
答弁拒否の嵐で、国民の皆さん御理解いただいていると思います。
 終わります。

○委員長(山本順三君)
以上で小西洋之君の質疑は終了いたしました。(拍手)

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