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連載小説『キミの世界線にうつりこむ君』第二十四話 五月雨祭

 いよいよ、五月雨祭がやってきた。天気は五月雨祭という名前とはうって変わって晴天だ。

「いよいよですね!星崎先輩、滝川先輩!」

朝からテンションが高い花森。

「そうね、今日は生徒会の仕事たっくさんあるから協力して頑張っていきましょう!」

今日のスケジュール表を片手に明るい声で話す生徒会長の星崎。

「そろそろ開会式の時間よ、早く行きなさい」

同じようにスケジュール表を確認する宮野先生。

「あれ、関谷先輩は?」

見当たらない人物をキョロキョロと探す花森。

「ああ、颯は午後イチでバスケ部のエキシビションがあるから朝から練習でいないよ。エキシビションが終わってから合流する予定」

バスケ部の企画を指差して説明する。それに、なるほどというように滝川が手を軽くポンと相槌する。

「行きましょうか、体育館に」

滝川がそう合図して全員で体育館に向かう。

体育館に入ると生徒や保護者、一般客であふれている。それを横目に見ながら体育館ステージに上がってそれぞれ散らばる。

「あーあー」

ちゃんと作動するか確認する滝川。星崎は、上手側の幕に立って深呼吸する。花森は音響室で機材セッティング中だ。確認を済ませると

「皆さん、おはようございます。これより第十回 五月雨祭、開幕です!」

一際大きな開幕宣言で周りはイェーイといわんばかりに盛り上がる。順調に進み、生徒会長の挨拶になる。

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「いよいよ、今年も五月雨祭がやってきました。梅雨の季節にやるから雨が降るかと思いきや、晴れてしまいましたが・・・」

その内容に会場ではドッと笑いが起きる。

「ですが、この五月雨祭は我が校の二大行事のうち一つです。運動部が主役となるものですが、全校生徒が様々な努力を重ねてきました。どうか、皆さんで楽しんで盛り上げていきましょう!」

立派に星崎が挨拶を述べ、礼をする。顔を上げた瞬間、関谷と目が合う。でも、それはすぐ逸らされる。どこか寂しさをおぼえながらも上手側に戻る星崎。

そこからは怒涛のスケジュールで生徒会メンバーはそれぞれの仕事へ奔走していた。

「滝川先輩、次の野球部の試合の実況、あと十分後ですよ!」

「わかってる!」

花森と滝川がサッカー部の実況を終えて、走りながら次の実況予定の野球部のグラウンドにダダダっと向かっている。

「おいおい、廊下走るなよ〜」

文化部の屋台で売っているたこ焼きを頬張る青野先生が注意するが、聞いているはずもない二人。

「全く、あれじゃあどこかで怪我するぞ」

頭をぽりぽりかきながら眉をひそめる青野先生。

長い廊下を走り切った二人はその足で靴を履き替えてグラウンドへ向かう。さっきまでの晴天に少し雲がかかって日差しが見えなくなってきている。

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会場にはすでに、バレー部の実況を終えた星崎が待っていた。

「準備はできてるよ」

すでに出来上がっている実況席を指さす。そのまま座って試合開始とともに実況を始める滝川たち。相手と拮抗した展開のなか

「滝川先輩、メモ落ちましたよ」

拾おうとする花森に

「ああ、ごめん」

そう言って滝川も拾おうとして手が重なる。

「あっ」

ちょっとドギマギする花森に

「ありがとう」

顔色ひとつ変えず、拾って礼を言う。

(ちょっとくらい気にしてくれてもよかったのに)

拗ねた表情で花森が見つめるが、気づく様子は全くない滝川。そうこうしているうちに試合は引き分けに終わったようだ。

「さあ、昼休みにして次はいよいよ颯の男子バスケ部よ」

テキパキと片付けをしながら呼びかける星崎。

「片付け、手伝おうか?」

成井先生が実況席に下りてくる。

「ありがとうございます」

三人は口々に礼を言いながら一緒に片付け始める。


 「ふう・・・」

体育館の端で精神統一している関谷。試合が始まる前には必ずこれをしている。

「お兄ちゃん!」

琴が試合前に一目見ようと会いに来る。その隣には両親も来ている。

「琴!来たんだな。どうだ?楽しいか?」

「うん!色んなお店で食べたり遊んだりしたよ。チョコバナナが一番美味しかった!」

嬉しそうに話しだす。

「颯、今日の試合楽しみにしてるからな」

「私も、颯のバスケ姿を見るのは久しぶりだから応援してるわ」

両親からの応援の一言を噛み締めて

「うん、絶対活躍するから」

はっきりと頷く。

「琴も応援してるから頑張ってね!」

何回もジャンプして応援する。

「おう、カッコいい兄ちゃんの姿見せてやるからな」

わしゃわしゃと頭を撫でる颯。

「それじゃあ、私たちは観客席で見てるから」

琴の手をつないで移動していく両親。


「ちょいちょい」

二年バスケ部員の一人が手招きする。

「ん?どうした」

「関谷先輩。噂、聞きました?」

耳うちし始める。

「誰の噂だよ」

「佐渡先輩のですよ!佐渡先輩、青藍高校にスカウトされてるみたいで、今日その監督が来てるみたいです」

観客席にいる青藍高校の松永監督を指差す。

「まじか」

(佐渡、一言もそんなこと言わなかったじゃねえか)

パスの練習をしている佐渡に目をやる。

「関谷先輩、知らなかったんですね・・・。なんか、すみません」

顔色を伺いながらこっちを見つめる。それに愛想笑いで返す関谷。

「関谷、相手が来たみたいだぞ」

パス練習を終えた佐渡が体育館入り口に目をやる。その先には対戦相手の青藍中学男子バスケ部が勢揃い。その姿にゴクリと唾を飲みこむ。

「ぶちかますか」

佐渡と目線を合わせて肩を組む関谷。観客席は続々と埋まっていき、星崎たちも準備を進めていく。

「成井先生、こっちこっち!」

青野先生が手招きする。教員や保護者、一般客も試合を一目見ようと集まり、あっという間に満員だ。その中には百合の姿もあった。

「これでいい・・・・」

ただ、関谷を見つめながら微かに呟く。


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