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スーパーバイザーの逡巡

                              羽地朝和


ワークショップ フェスティバルは、この瞬間が永遠に続くといいなと感じる3日間でした。20代の頃に米国でプレイバック・シアターのトレーニングに参加している時に感じた新たな高みにのぞむ高揚感と緊張感が蘇りました。「今、ここ」の場に向き合う集中、わきおこるひらめき、そして仲間との連携。僕自身がワークショップを担当する訳ではないのに、ファシリテーターの姿勢や態度からそんな懐かしい感覚が蘇ってきました。そして3日間で行われた6つのワークショップの最中は、ひとりの参加者としてただただ心ゆくまで楽しみました!それぞれのワークショップについてはゆりさんの記事で説明していますのでここでは書きませんが、どのワークショップもファシリテーターが丹精込めて生みだし、誠実に取り組んだ至極の作品でした。


一方で、僕は各ファシリテーターがワークショップを企画して準備をする、そして実施をサポートし、終わった後に振り返るスーパーバイザーでした。スーパーバイズとは何か、ファシリテーターとどうかかわるかを考える機会でもありました。


●ワークショップ フェスティバルのプロセス

ワークショップ フェスティバル(フェス)は次のプロセスで行いました。

1. ファシリテーターとしてエントリーした人がワークショップを企画し準備する

2. ファシリテーター同士の関係づくり

3. ワークショップの実施

4. ワークショップの振り返り

5. ワークショップ フェスティバル全体の振り返り


フェスでは、ワークショップを担当するファシリテーターをアーツ・ベースド ・ファシリテーター養成講座、アプライドドラマ研究会プラクティショナー養成講座、プレイバック・シアター実践リーダー養成プロジェクトの3つのトレーニングコースの卒業生の中から募りました。トレーニングコースを卒業した人に実践の場を提供する、トレーニング生からプロへの橋渡しをする、という主旨で企画しました。岩橋由梨、オーハシヨースケ、羽地の3名がスーパーバイザー、五味麗が運営マネジメントを担いました。


●スーパーバイザーの逡巡

ワークショップを企画するうえで、ファシリテーターは様々な思惑の間を行ったり来たりします。

・ファシリテーターがやりたいこと

・ファシリテーターができること

・参加者が参加したいと思うこと

・参加者が求めていることに応えること

等々・・・

ファシリテーターはこれらのことを考え、無限の可能性の中でプログラムを構築します。何をやってもいい、でも時間や人数、場所の制限はある。プログラムの準備を入念に行いながら、その時になったらその場に応じた展開をする。連続のワークショップだったらその1回で全てをやる必要はないのですが、1回限りだからできることを全てやりたい、でも限られた条件の中では全てをやることはできない。そしてまだ顔が見えない参加者は何をのぞんでいるのだろう。そのようなことを思い巡らせファシリテーターはワークショップを企画して準備をします。その傍にスーパーバイザーはどういるのか、ファシリテーター本人の自主性を大切にしながらどこを介入するか、teachingとcoachingのはざまで僕も逡巡しました。
岩橋、オーハシ、羽地はこの点においては三人三様で、ワークショップの振り返りも三人それぞれのやり方で行いました。スーパーバイズと振り返りは様々なやり方があります。それはトレーニングコースをどのように行うのかにも通じます。

ファシリテーターの皆さんはフェスを通して鮮やかな飛躍をしました。僕も自分のワークショップを行ううえでたくさんの刺激を得て、そしてファシリテーターを育てるとはどういうことかを考える機会になりました。見守ることと教えること、自分のファシリテーションの信条をどこまで伝え、その人にまかせるか。もっとこうしたら良いと思うこと、ここは気をつけないといけないと思うことはあっても僕のこだわりを押しつけたくない。経験して自ら気づいて手にするしかない、スーパーバイザーとして逡巡しました。

どう考えようと僕はプレイバック・シアターに帰り着きます。スーパーバイズもプレイバック・シアターのコンダクティングに根ざしてやるのが僕の流儀。プレイバック・シアターのコンダクティングでは、ストーリーを聴いて「見てみましょう」とアクターに委ねたら、その場に共にいて見守るだけ。アクターが演じること、語り手が感じることが全て。最後に語り手の感想をきいてそれを受けとめるのみ。ワークショップにおいてもその場で何が起きようと担当したファシリテーターのもの。そこに共にいるしかない。それだったらワークショップが始まったらもうその場を楽しむのみ。


来年は年明け早々からアーツ・ベースド ・ファシリテーター養成講座4期が始まります。そしてプレイバック・シアター実践リーダー養成プロジェクトも再開します。ワークショップ フェスティバル2024もやりたいと思います。共に進む仲間と学べることが楽しみでしかたありません。


30年以上参加し続けてくださりありがとうございます。でもあと20年は参加してくださいね!


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