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2024.4.21 プレイバック・シアター1Day(研究生日誌/ゆきの)

暑くも寒くもない、心地いい朝だった。目黒川の桜は葉桜になり、1週間前に比べて人通りはかなり少なくなっていた。最寄の中目黒駅から会場までは徒歩で十数分だが、早歩きをしても汗ばむこともなく開始の15分前には到着した。今回のワークショップを主催するアーツ ベースド ラボ の研究生という立場ではあるが、一参加者として申し込みをした。平日の仕事での精神的・肉体的な疲れは残りつつ、気持ち的には存分に楽しむつもりで足取りは軽かった。

プレイバック・シアター:観客や参加者が自分の体験したできごとを語り、それをその場ですぐに即興劇として演じる独創的な即興演劇です。

ウィキペディア

今日のプレイバック・シアター1Dayは、参加者11名。
十数年ぶりという方や地元でプレイバック・シアター参加はしているけれど羽地さんのコンダクターを受けるのは初めてという方、インプロ(即興劇)経験者、元役者さん、心理劇経験者、最近ほぼ毎回参加の方など。比較的演劇/演技経験がある方が多い印象だけれど、プレイバック・シアターとの関りは様々だった。

ただ、人を介して知り合い同士だったり、ほかのイベントでもいっしょだったりなど、思わぬところで関係が繋がっていることがわかった方もいらした。不思議だが、実はラボのワークショップではそれはあまり珍しいことではない。

目黒川の桜並木

午前のワーク

  1. チェックイン(自己紹介)

  2. 誕生日ライン⇒誕生の頃のストーリー⇒演劇表現(3人1組)

  3. プレイバック・シアター(ストーリー:2つ)

簡単に今日呼ばれたい名前と「最近あったこと」で自己紹介したあと、誕生日順に並び近い人同士で3人組になった。その3人でそれぞれ自分の誕生の頃の覚えていること・親から聞いたことをシェアし、そのうちひとつの短い場面を選び配役を決めて発表した。出産シーンを演じたグループもあった。

そして羽地さんコンダクターによるプレバック・シアター。前の”誕生”のワークからの繋がりか、最初のプレイバックは子供の頃の日常での一場面だった。そしてもうひとつストーリーは、全員が雑踏の中の通行人を演じたり、即興で飛び入りし役を演じたりなど、みんなで作り上げるプレイバックとなった。この2つのプレイバック・シアターで午前の部は終わった。

午前中からいきなりウォーミングアップや準備ワークなしに、演じることから始まったことに実はちょっと驚いていたが、全体に無理があったような雰囲気はなく、むしろスムーズにプレイバック・シアターへと流れていた。
私は、参加者も多いし午後はこのままプレイバック・シアター三昧になるのかなと、なんとなく思いながら1時間のお昼休みを過ごした。

🌸お菓子は桜満開🌸

午後のワーク

  1. 午後のチェックイン

  2. 言葉でしりとり⇒身体表現でしりとり

  3. ゆっくりした動きで身体ほぐし(4人1組)

  4. 動く彫刻

  5. プレイバック・シアター(ストーリー:2つ)

そして午後、
ひとりずつ午後に向けてのひとことのあとは、私の予想とは違い「しりとり」から始まった。言葉のしりとりのあと、身体表現でのしりとり。その場で答えを言わずに進めるので、ひとつわからなくなるとどんどん混乱してくる。自分が混乱しているとみんなの動き方がやけに滑稽に見えてきて面白くてたまらない。わかっている人とわかっていない人の反応の違いも面白くなってくる。場に楽しい凸凹や皺ができていく。なのにそれとは反対に参加者による凸凹が少なくなり平らになっていった感覚があった。さらにゆっくりとした動きでの身体ほぐしで、楽しい気分はこれからのワークへの期待に変化しながら、場全体の心拍数は緩やかになっていった。

次に、いっしょに身体ほぐしをした4人で1組のアクターになり「動く彫刻」。ゆっくりとした動きで呼吸を合わせた4人なので、ひとつの表現をすることにもあまり無理がなかった。演じる方にとっても観ている方にとっても安心感があったように思う。ほぼ全員がテラーにもなり、様々な感情をみんなで分かち合った。

動く彫刻:ある場面での瞬間の感情を、3人程度のアクターが短い繰り返しの身体の動きで表現する技法

午前中にも全員がアクターになるワークはあったが、全員のストーリーができたわけではなかった。この「動く彫刻」で自分の心に残っている一場面とその時の感情を語り、それをみんなに演じてもらい分かち合う経験を、ひとりずつ全員がしていく。そこには個人の内面への向かう何か(何であるかはわからない)とみんなで関り共有したという全体に作用するような…そんな言葉にできない何かがあった。

そして、いよいよプレイバック・シアター。
自分のストーリーを今この場で語りたいという方を募る。

こういう時、準備をしてきたわけでもないのにふと手を挙げてしまう瞬間がある。頭で考えているより挙げてしまう手の方が、「今ここだ!」ということを知っているかのようだ。

そして、結果的にはお二人の方のある場面を「動く彫刻」も入れながらプレイバックで観ることとなった。羽地さんのコンダクティングで、その方の大切な物語やその中にあったたくさんの複雑な感情は紐解かれていく。でも羽地さんは少し紐を緩めるだけ。緩めるだけだけれど、その加減や緩め方が絶妙。この職人技は、羽地さんのプレイバック・シアターという手法への絶対的な信頼とたくさんの経験からくるものであり、言い換えれば理論と感覚的センスなのだなぁと私は思っている。

みんなもその物語の中にいっしょにに引き込まれていき、アクターは羽地さんからのメッセージを受け取って、今の自分のできる限りの誠意を込めて即興で演じる。ひとつの物語をもう一度その場に紡いでいく。終わった後の感想を聞きながら、個人の一場面がみんなのものになりさらに自分の物語になっていく。

毎日の家族との暮らしの中、仕事の場面、または大切な人との出逢いや別れに遭遇し、誰しも自分では消化しきれない感情を抱いたまま、また日々を生きている。本当に不思議なのだが、そんな大切でかなり個人的なことを今日はじめましての方もいる中で語り、さらにその個人的なことがそこにいる人たちと分かち合え大切にしてもらえたと思える経験。それは明日からの自分がほんのちょっとだけ違う自分になっているような感覚。そして語らなかったとしても、演じられた物語が自分のこととして突き刺さったり、深いところで腑に落ちたり、あるいはまた日常に帰ってからふとした時に「これだ!」と繋がったり。私にとってはそんなことが起きる場だ。


これからの「羽地朝和プレイバック・シアター1Day」
日程・詳細情報・お申し込みフォームです。


そして、プレイバック・シアターのコンダクターを養成する講座が
8月から始まります。今回で第8期になります。


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