全ての要素がある大人の漫画
漫画に”まんがグリム童話 金瓶梅”という作品があって、覚えている限りでは15年くらい前から連載されているような。コミックが発刊されてすぐに読み始めたわけではなかったので、もしかすると、もっともっと前から連載が続いているのかも知れない。
【金瓶梅の】原作は中国の小説で、”笑笑生”と名乗る作家が描いたといわれている。その作者の正体や、いつからいつまで生きてのかも不明という謎の小説家らしい。
さらには今日の中国でも「笑笑生は誰か?誰なのか?」という論争が続いているらしい。
それだけ話題になった小説を描いた人だからだろう。
『水滸伝』という小説と同様に北宋末を舞台していて(金瓶梅という作品は、水滸伝のスピンオフらしい。)綿密かつ巧みに描写されている富裕な商人の風俗や生活には、中国の明代後期の爛熟した社会風俗が反映している。
金瓶梅は、幾人もの漫画家さんによって漫画にされたり、映画としても何本も出ているらしいが、私が気が付いたら長いこと読み続けていた漫画 金瓶梅は、竹崎真実先生の作品だけで、他は知らない。
知らないのだけど、おそらくは、エロティックなことをメインに描かれていたのではないかと想像する。ええ、この漫画自体がエロいから。話題になったのも、そこが発端だろうと思う。
ところが、それだけではない。大抵の要約に”6人の妻が一人の旦那を奪い合う物語”というようなタイトルが添えられているが、冗談じゃない。そんなことだけでは語れない。
竹崎先生の描き方だから、こうなるのだろうけど、エロくて残酷だというだけでは終わらないのだ。
気がついたら噴き出して笑ってしまうシーンがあったり、この物語に登場するキャラのほとんどの人に親しみを感じたりもしてしまう。
「うわあ、こういう女、よく居るよなあ。」と思うのが6番目の妻、瓶二なのだが、こいつだけには多くの読者が共感できないという現象があって、何故だかほっとしてしまう。
一方で、主役と言って良いのだろう、5番目の妻、金連は、やはり非常に残酷で、読み始めの頃はドン引きする。(まあ、皆残酷なんだけどね。)
ただ、言い訳しないし、本人は認めないだろうが、情にもろいところが多分にある。
そして、次々と悪者が出て来て、なんだってまあ、こんなにドロドロしてるの?と、やはり引きはするものの、色んな悪人の策略の上を行く金連の頭脳や先読み加減にスカッとさせられる。
私は、残酷な女であり目的のために手段は択ばない。自分の手を汚す、そして地獄に行く。旦那様を得るためなら悪人で良い!という態度に清々しさすら感じてしまう。
しばらくこの漫画の存在を忘れていたのだが、1年ほど前、ウエブ漫画で見つけてから、Kちゃん共々また最初から読んでいるのだが、相変わらず息もつけないほど面白くて読み漁ってしまうのだが・・・。
が、あまりにドロドロし過ぎていて時々疲れてしまう。そんな折、Yahooの広告かなんかに出ていた他の漫画をクリックした。
絵が上手いからクリックしたというのもある。(絵が荒いと読んでて疲れるので、ある程度上手な人が好き。)
それが”ゴット オブ ブラックフィールド”という作品だった。
私のような、これまで全く違う漫画を読んでいたような通りすがりの人間が読みふけってしまうくらいだから、やはり人気が高いらしい。
これまた残酷な描写は沢山出てくる。そりゃもう、乱暴で。
しかし、それは男性による力と力の闘いが主であるため、金瓶梅ほどの恐怖はない。
どちらも生き残りと勝敗をかけての物語であるのにも関わらず、女同士の闘いと策略が繰り広げられる金瓶梅は、怖いよ。恐怖だよ。後味が悪い部分があるのもリアルさを醸し出しているのかも知れない。
けれども、どうしたことなのか。ドロドロで策略めいていて、美醜、醜悪、絶世、喜怒哀楽、阿鼻叫喚、喜劇と悲劇。全てがある。「これは、決して楽しい話ではないですよ」と言わんばかりの作品を、まためくってしまうのは、やはり、そこに愛があるからなのだろう。
愛のために本気で戦う姿がある作品が、歳月を超えて、末永く残っているように思える。
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