猫めくり歳めくり
夏に我が施設に入所して下さったお婆ちゃんは前に居た老人保健施設をいたく気に入っていらした。
なので、実調へ出向いたとき「嫌だ。ずっとここに置いてよ!ここの人たちが好きなのよ!」と嘆いていらした。せつない。
老保は長く滞在できない施設なのだ。
難聴だけど補聴器をつけるのを嫌がり、いつも小さなホワイトボードで筆談をしている。
毎日そこに職員が「今日は◎月◎日です。」と日付を書くのが日課だ。
もう一つはとても猫好きなのだが、何と、2021年のカレンダーを大事に持っていらっしゃる。
「え?2023年?毎日日付は教えてくれるのに。まさか世の中と2年も違っていたなんて。」と衝撃を受けていらした。教えなきゃよかったな。
それで、これを買ったのだ。
もう、クリスマスあたりから早くプレゼントしたくてソワソワしている。
先んじて見ようかな?とも思ったが、紙の帯を切るのは、やはり本人の前が良い。
それで年の瀬を今か今かと待っていたのだ。
明日はもう30日。
さすがにもう差し上げても大丈夫だろう。ウキウキする。
毎日着替えてロッカーから出来る度に、両手をバスケの3ポイントのカタチにして手を振ってくれる。
うちの施設でそんなに可愛い笑顔になってくれて凄く嬉しい。
人は自分の意図せぬうちに、もしかしたら望まないところへ移動してしまうことがあるかも知れない。
でも、前の老健のように、うちを気に入ってくれて、私は本当に嬉しい。
私はというと、今年2月にこの施設へやって来た。そしてまだ当分ここで悪戦苦闘するらしい。
一秒一秒、来年の扉へと向かっている。
でも、このひと時を、この29日の夜をKちゃんと楽しく過ごしている。全てを大切に。一歩一歩。
などと言って、今夜、手が滑って筑前煮を作ってしまった。正月用の煮物のつもりだったのに。気が流行っているらしい。でも、美味しかったのでよしとしよう。
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