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お婆ちゃんとの散歩日和(夢の介護の街)

新しく施設に入居して来た方がいらした。
その翌日、その方を提携病院へお連れすることになる。

老人保健施設から入所なさる方は、3日分しか薬を持参させてくれない。
次の往診の先生が来るまでには当然足りないので、初対面の先生に処方して貰わなければならない。

それはほんとに不便なシステムだなと毎回イラ立つのだが、ある瞬間心が和らいだ。

久しぶりに外に出たそのお婆ちゃんが『わあ!良い天気!気持ち良い!』と喜ばれたからだ。

その方は比較的健康で健脚。
でも、認知症の方が健脚だとご家族様にとっては困ることでもある。何せ、ちょっと目を離した隙に居なくなってしまうのだから。それでうちのショートステイを以前から利用されていたのだが、最近は来ないと思ったら老健に入っていらしたらしい。

とにかく久しぶりの外出となったのが、今回の受診だった。

そんなふうに喜ばれると好きなだけ歩いて貰いたいと思うもので。ちょっとだけ施設の周りを散歩したりもした。

本当はどこまでもどこまでも歩いていただきたいものなのだが。

噂によると、村、あるいは、街全体が介護施設という場所があるらしい。確か外国だったと思うが、認知症を持っていても住人はバス停でバスを待ったり、遠くへ行きすぎても、知らない家の住人が見つけて泊めてくれるという。
何せバスの運転手さんも全ての家の住民も介護職員だから。

しかし、その話を聴いて一瞬『それ、良いねー。』と言ったあと、現実を知る私は『でもな。』とすぐ我に返ったのを覚えている。
街全体が介護職員や看護師ともなると、それだけ多くの人々が24時間体制で働いているということになるから。

少なくとも日本では現実的ではないものの、ちょっとその自由のエッセンスを取り入れても良いのかも知れない。

短くとも気持ちの良い散歩だった。


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