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元旦という名の日常
元旦に出勤する際、正面玄関の前に、例の車が停まっていた。お迎えの車だ。
頑張って頑張って、そして永眠なさったのだなということが分かる。この時刻なら、旅立ちはおそらく朝方だったのだろう。
車の横に夜勤だった介護職の女性が立っていたので真正面の角度で見つめ合う。自転車で通り過ぎるほんの5秒程度の間に見つめ合い、互いに理解したかのように。
深々と互いにお辞儀をした。黙って。
大変な夜勤だったらしい。皆へとへとだろう。
が、皆さんが「あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。」と挨拶をして下さる。
そんな挨拶をするなんて意外と思われるような方も、廊下で出くわして一秒「あ!」と言った後に「あけましておめでとうございます!」とお辞儀。
いつぞや、タトゥーの話をしてくれたのが、先ほど玄関先に立っていた女性なのだが、同じく挨拶をして下さる。
人が亡くなった年には、おめでとうございますを言ってはいけないという習わしがある。でも、病院時代も介護施設時代も私たちは言う。きちんと言う。
今朝方、永眠したHちゃんにも「お疲れさまでした。」の後に「Hちゃん、あけましておめでとうございます。良い旅でしたか?新しい旅立ちですね。あけまして、おめでとうございます。」と言う。
この世の私たちがおいおい泣いて送り出した後、あちらの世界では逆に大喜びで「おかえり!おかえりなさい!」と口々に言って迎えられるのだと言う。「どんな旅だった?お疲れさま。よく帰って来たね!」と。
泣いて泣いて泣いて、笑って、笑って、笑って。
生きとし生けるものは、皆祝福されているのだと思う。
旅立って行く人々も祝福されているのだと思う。
今ここに在るのは、決してあたりまえのことじゃない。
他にも色々なことが起こり、慌ただしい元旦でもあったが、祝日出勤であるのにも関わらず、施設の職員は一日ワイワイガヤガヤと元気に仕事をしていた。
良い施設だなと、改めて感じて、1月2日、今年初めての休日を迎える。