永遠のベストセラー完成までに繰り広げられる内輪の戦い
類は友を呼ぶというのか、ふと気づけば親しい人には本好き読書好きという人が多い。
でも、それはプライベートの話であって、職場の方々は皆さん読んだり聴いたりするよりも断然喋ることの方が好きらしい。
以前オンライン会議が立て込んでいるときの悩みというか愚痴をこのnoteで聴いていただいたのだけど、まあ皆さん人が何かに集中したい時に限ってよく話しかけて下さる。
しかし、そんな方々の間で圧倒的な人気を誇っているベストセラー&ロングセラーの作品がある。毎月刷り上がるや否や、どんなお喋りな人でも沈黙して四六時中食らいつくように読み続けている。何度読んでも飽きないようだ。
その紙面のタイトルは勤務表。
皆その1枚の紙きれを睨みつけながら色んなことを考えているらしい。
①「連続勤務はないか?」
②「ちゃんと休みの希望は叶っているか?」
③「嫌いな人と組まされている日はないか?」
その食い入るように見ている頭から数々の聞こえない心の吹き出し💭がいくつも立ち昇っている。
忙しい最中その方々をじっと見ているわけではないのだけど、その濃いオーラにいちいち心の中で応えてしまう自分がいる。
①ないよ、ないない。3日以上の連勤は嫌だっつうから可能な限りそうしてるよ。
②叶ってるよ。叶ってる。全員の休み希望は必ず叶えている。
③嫌いっちゅう人とはついてないよ。この少ない人数で「あの人とは働けない」って言われても困るからダメだ!それは我儘だろ!とキッパリ言いたいんだけど、やってみるとたまたま可能だったから叶えてるよ。困ったなー。
その他、たった1枚の紙きれを見つめるそれぞれの背景にプライベートなドラマが繰り広げられているようだけど、それらにはあえて触れない。
で、それほどまでに待ち望まれている勤務表だから毎月なるべく早く作りたい。
ところが、先述のように人が一般業務を離れてPCの前に座っていると、いちいち近くで「わあ、どうしよう、どうしようかな?これ?」とか、「これって誰が書いたのかなあ?どういう意味なんだろ?」と大声で話す”どうしたんですか?”待ちの人が次々とやって来る。
放置しておくとドンドン凄いことになるので、どうしたんですか?と訊くと「ああ、すみません。忙しいのに。それがあ~、いや~、私もこんなことは言いたくないんですけど~。」と語尾を伸ばして話し始められた暁には、今すぐ地下の厨房に駆け下りて行って、力一杯うどんでもこねたくなる。
しかし、うどんは生まれてこの方1度もこねたことがないので我慢してその人の話を聴いて、やっと気がすんで去ってくれたのに、今度は比較的親しい人が傍に来て
「なんか、福祉関係の車って同じデザインのやつが多いよね?」
!!! ざ、雑談?!
「そんでさー。なんで、ああいうさ、”訪問看護 スマイル”とか”デイサービス ハートフル”とか”何とかかんとか 笑顔”似たような名前が多いんだろうね?面白くないよね?」
そりゃ”訪問看護 蹂躙”とか”デイサービス 世界征服”とか、”何とかかんとか 不敵な笑い”だったら暗いし怖いからだよ!←切れている。
しかし
「”訪問介護 優しい手”ってのもあったよ。」←全然振り切って喋り倒そうとして来る。
だから!”訪問介護 濡れた手”とかだったら気持ち悪いでしょ?!
「いや、斬新だね。そういうのあっても良いよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ちょっと私、他にも急ぎのものが沢山あるから、代わりに、ほら、これ。勤務表作ってて。
そう言ってほとんど力づくで両肩を押し椅子に座らせた後、他の仕事へと逃げ出した。
一般業務に戻ってぴゅんぴゅん走っていると、つくづく私はこっちの方が向いていると思う。可愛い高齢者の方々とニャハハハハハー!と笑いながら身体を動かす仕事をしていた。
しかし、夕方になって「できたよ。」と見せられた勤務表を見てみると、自分が10連勤にされていた。
お願い。返して。
そして いまだ 来月分が出来ていない。