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アンドレア・ボッコ、ジャンフランコ・カヴァリア 編訳:多木陽介 『石造りのように柔軟な 北イタリア山村地帯の建築技術と生活の戦略』 (鹿島出版会、2015)
古い集落では、土地に根ざした営みがあり、それが建物や町並みのかたちまで表出しています。いまの普段の暮らしとのその差に、かつてあったものへの郷愁にかられるでしょう。しかし、単に懐かしむだけのことなのでしょうか。自然に呼応した生活をする者にとって、建設者と農民とを区別する意味はありません。作物を育てることと、建物をつくり維持することは、生きるうえでどちらもなくてはならないことでした。生きるために変化することが必要だとすれば、いまは亡き暮らしから得る技術は、新しい生活様式へのきっか
ピョートル・ワイリ、アレクサンドル・ゲニス 訳:沼野充義、北川和美、守屋愛 『亡命ロシア料理』 (未知谷、2014新装版)
旅や仕事で異国の地に長く滞在していると、現地の食事に慣れてくるとともに、故郷の味が恋しくなることがあります。たとえ海外まで行かなくても、数日の間、外食がつづくと、何だか具合が悪くなるひともいると思います。繰り返し作っているいつもの料理は、たしかに平凡なものかもしれません。しかし、毎日同じ料理でも、きっとそのときの気分や体調、天候などに合わせて、気まぐれとも思える微妙な調整をしているはずです。馴染みの味があるから、他の味、異国の味を享受できるのでしょう。そこで、素直な食欲に再会